ご飯を食べて異世界に行こう

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第一章 開店

秋キャン△

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あー、とりあえず、まぁなんだ。
僕が玉に近寄ったら、野うさぎたちが一斉にね。

こんにちはこんにちはこんにちは
はじめましてはじめましてはじめまして
お世話になりにきました
これからよろしくおねがいします
ごはん美味しいです

と、僕にわらわら集って来たので、玉は解放された。わらわら。
玉は、ね。わらわらわらわら。
迫り来る野うさぎ部隊に、慌ててぽん子が僕の胸から飛び降りた。この裏切り者ぉ。

「きゅー。」

はい、うさぎ塗れました。

「わぁ殿ぉ。しっかりしてくださぁい。」
「本当になんなんですかね。このひとは。」

両手を腰に当てて、やれやれと首を振る青木さんに、手を掴まれて何とか助けて貰ったよ。
あのう、逃げられたぽん子にまで、やれやれと言われているんだけど。

こう言う時、身体の小さな玉は、オロオロしてるだけなんだよね。
全身でオロオロするから、たぬちゃんみたいで可愛い。(つまりぽん子はオロオロしない。僕は今それを味わって居る最中だ…)

可愛いは正義!何でも許す!

とは、佳奈姐さんのお言葉。
割と共感出来るな。玉は小ちゃ可愛いからな。

とりあえず、鶉やらうさぎやらの新しい仲間の分の水と餌とおやつを補給。
って言っても、ぽん子用に育てていた野菜や果物が熟し始めていたので、勝手に食えと。どれも美味いぞ。

やったあ
チモシーも食べ放題だよね
このとうもろこしも食べられる?
少し乾かしたほうが僕らには美味しいよ

よう喋るうさぎ達が来たなぁ。

★  ★  ★

「キャンプ?」
「そ。玉ちゃんがやってみたい事なぁに?って聞いたら、一番最初に出て来たの。」
「キャンプねぇ…。」
浅葱の畑に、昨日青木さんが買って来た種を蒔いて、水をあげ終わったら、早々に聖域へ僕らは移動する。

水晶の中は時間経過しないとはいえ、僕ら自身には時間も経つし、体力も消耗する。
時間経過という面が青木さんには怖いみたい。

「だってそれは、ここにいつまでも居ると、外の時間は止まっていても歳を取るって事でしょ?」 
僕らだって、水晶玉の中に居るのは、2ヶ所合わせても1日1時間ってとこだよ?
「殿は女心をもっと理解すべきです。」「ねぇ。」
僕ば何故2人に怒られているんだろう。

その玉は、柿の木の下で、たぬきちが落とす柿をエプロンで受け止めてます。

「わんわん」
「きゃあきゃあ。柿も熟れ熟れですよ。」
うちのマスコットみたいなコンビの賑やかな事。

僕は畑でさつまいもを収穫してます。
適当に収穫しないと、増え続けてしまうので。
このお芋さんで何作ろうかなぁ。
荼枳尼天にも献上品を作らないとね。
乾燥芋とかに挑戦してみるかな。
あれ、レンジでチンすると、お茶受けに良いんだよね。

フクロウ君が高み(崖の上)から、見張って居るのは、ネズミやモグラの駆除目的。
「ひぅ」
うむ。ご苦労。
ていうか、崖に囲まれて密閉されたこの聖域に、羽根も無い連中がどうやって侵入して来るんだろう。
「ひぅ」
そうですか。何やら動物界にも色々あるらしい。
君用に、背が高くてウロが開く木を植えないとね。何の木がいいかな。

「何でもね。貴方が時々見ている動画を見て、興味を持ったんだって。」

畑の外でしゃがんで、腿に頬杖付くのは女の子っぽくていいけど、いくらキュロットとはいえスカート履いた女子がしていい格好じゃないぞ。

多分、怒られるから言わないけど。

「ん?見せパンだから、見えても平気だよ。」 
「だから何で、僕の考えている事がわかるんだよ。あと何故見せパンなんか履いてるんだ?」
「私も一応女子ですので。例え見せる相手が貴方しかいなくとも、お洒落の一つもして来るのです。そういえば、私の御御足は私がJKの時の制服スカート以来見せて無いなぁと思ったので。タイトスカート履いて来た時も、ストッキングをガンガン履いてたし。」

そういやそうか。あと、女性がJK言うな。

あと、うちに来るって事は、結構動くし汗かくし汚れるし、生足素足は推奨しませんが。玉だって、最初は割烹着で庭仕事してたな。汚して落ち込んでたぞ。
おかげ様で、お高い洗剤や漂白剤遠買わされたのは、まだ記憶に新しい。

それはさておき。

「一応、僕を男として見てくれたんだ。ありがとう。」 
「ど、どどどどどういたしまして。」 
何故吃る?


★  ★  ★

「ほら、玉ちゃんに菊地さんと同じとこのタブレットを買ってあげたでしょ。玉ちゃんの方が画面が大きくて最新式の。」 
そりゃ僕はプライムビデオを見たいだけで買ったけど、結構長いこと使い込んでるからなぁ。

「僕が登録してるサイトでキャンプに関係あるのって''ヒ◯シです“、と“内◯ま“、でカンニング◯山あたりがたまにやるキャンプ回くらいだなぁ。」
「貴方と同じものを見たいからって、貴方がお気に入りに入れてる番組は全部登録してるんだって。」
「………思い出してみたけど、玉の教育に悪い番組は登録してないかったな。良かった良かった。」 
「◯野誠のお化け番組がちっとも怖くないって、お冠だったよ。ホラー系がお気に入りみたいだから探してあげて。」

お化けどころか、神様がそこら辺を闊歩している僕らだもんなぁ。
でも、玉はいつ見てるんだ?あれだけ毎日、くるくる動き回っているのに。

さて、さつまいもはこのくらいで。
「たぬきちには、明日また蒸し芋にして持って来るからな。」
「!!わんわん!」
こらこら、木の上ではしゃぐと落ちるぞ。

「で、何処でキャンプするんだ?ここか?」
「ここだと、日が暮れないでしょ。夕闇の中で、3人で焚き火して、3人でごはん作って3人一緒に寝たいんだって。」  
「一応言っとくが、玉はちゃんと性について理解認識してるぞ。」 
「だからぁ。」 
君が顔を赤くしてどうする。

★  ★  ★

天気が良い日は、畑仕事もあるから、大家さんもうちで朝ご飯を食べていく。

と言うわけで、今日のごはん。

1.トーストに辛子バターを塗って、軽く炙っておく。
2.筍とアスパラガスを一口大に切り分け、味醂で煮る。この時、固さを残す事
3.卵に辛子マヨネーズで混ぜてスクランブルエッグにする。この時、トーストを辛子バターが塗ってある事を考えて、ほんのりと薄味にすること。
4.筍・アスパラ・スクランブルエッグを層にして挟み、ホットサンドメーカーで2分。

筍とアスパラのホットサンドので完成です。
夕べのクリームシチューが残っているので、人参とベーコンを追加。
お茶・ミルクは冷熱を準備したので、どちらもお好きな方を。

★  ★  ★

「お姉さんは本当に越して来てくれるのかしら。」
「ちょうど年末が更新時期らしくて。今の部屋、知り合いから敷金をそのまま引き継いで入ったんです。だから、引っ越すにはいいタイミングですから、かなり本気で考えてますよ。玉ちゃんにも誘われてますし。」
「まぁまぁ。玉ちゃん、お庭が広くなりますよ。」
「あはは、私は観葉植物は育てますけど、ガーデニングにまで手は出さないので、お好きにどうぞ。」

おいおい。青木さんの入居が既成事実化され始めてるぞ。いいの?

「それにしても、筍のサンドイッチですか。よく今時分に筍なんて手に入りましたね。これ、水煮じゃ無いですよね。お父さん?」
「ちょっと伝手がありましてね。春先と比べると若干、味は落ちますけど、こうやって食べるぶんには問題ないかと。」
「これ、辛子バターもいいけど、ピザソースでも面白いかも知れませんね。筍とピザ、アスパラとピザ。チリソースも良いかも。」
「そうですね。ソースを買って来ましょう。」
「楽しみですね。お父さん!」

基本的に大家さんは食べる一方なのだけど、人一倍元気に喋って、人一倍沢山食べるので、僕らも彼女と一緒に食べる朝ご飯は大好きなのです。
だから、こうやって、何も起こらない朝ご飯の様子を描写したくなるんです。

★  ★  ★

朝食を終えて、大家さんを送ると、玉と青木さんは後片付け。
僕は駐車場から車を取ってくる。

「で、どこのキャンプ場に行くのかな?」
この3人の時は、運転席に僕。
後部座席に玉と青木さんでフォーメーションは決まり。

「わくわく。」
玉はワクワクしながらワクワク言いながら、地図を鞄から取り出す。いつものお出かけルーティンの準備。

「とりあえず、南へ。高速乗りましょう。今日は私が案内します。」
「キャンプ用品はどうすんだ?」
「途中で買えるし、向こうでレンタルも出来るよ。」

ふむ。

「なら、買うか。」
「これ!また無駄遣いをして!」
「調理器具は浅葱の力が使えるから、寝袋とテントくらいだよ。あと、ランタンか。これは水晶の中で使えるだろう。」
「あぁまぁ。それもそうか。」

何だか、ガチャガチャした朝だけど。
とりあえず、浅葱の屋敷から始まった朝は、意外と充実している朝だったな。

では、出発。
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