スパダリ様は、抱き潰されたい

きど

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はじまりは、あの日

21.恋人じゃないけど

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「それは、体の繋がりだけじゃ嫌なんで。俺、川奈さんに本気だって分かって欲しいんです。」

握る手に力を込めて、川奈さんの目を真っ直ぐ見て言う。
でも川奈さんはフィッと視線を背けると

「あー、うん、ごめん、冗談のつもりだったんだ。」
俺の言葉を、気持ちを、また流そうとする。

「…またそうやって流すんですね。俺、川奈さんのセフレの中の一人になりたい訳じゃないんです。」

気持ちを受け止めてすらもらえないことに苛立ちと悔しさが湧き上がる。

この話をしたのが車で良かった。
部屋に上がってからだったら、きっと川奈さんに酷い触れ方をしただろう。
思わず、歯を噛み締める。

「あのね、田浦君…。一つだけ言わせて。」
と川奈さんが握る俺の手に手を重ね

「俺さ、セフレなんて居ないよ。」
とはっきり言う。

「え?でも、川奈さん前にワンナイトなんて普通って言ってませんでした?だから、もしかして、そういう相手が他にもいるのかもって思ってて。」

「そういう事が多いって話で、俺がそうって訳じゃないよ。第一、なんの感情も沸かない人に抱かれたいとは思わないし。」

川奈さんは、なんとも思っていない人とはしないってこと?

それを聞いて渦巻いていた苛立ちとか悔しさが、嬉しさに変わっていく。

「えっと、それって…」
途中まで言って、待てよ、前にもこんな流れがあったと気づき口をつぐむ。

話の流れでは、俺に何らかの感情を抱いているらしい。
それが恋愛感情であって欲しいが、今までの様子からそれを確認すると確実にかわされる気がする。

だとすると
「あの、川奈さん。俺たちはどういう関係なんですかね?」
と別角度から質問をしてみる。

「……。」

珍しく川奈さんが沈黙してしまう。
また目を逸らされたが、すぐにはぐらかさないことに期待と不安を抱えつつ返答を待つ。

車のエンジン音だけが響く静けさを破る様に川奈さんが徐に口を開く。

「俺たちの関係は…セフレでもなければ、恋人でもない。」

期待していた分、頭を鈍器で殴られた様な感覚に陥る。
前みたいに、はぐらかされた訳じゃないから、尚更心を抉られる。

「そっかぁ」

一度物理的離れようと手を離そうとするも、川奈さんが離してくれない。

「川奈さん?」

「…田浦くんは、恋人じゃないけど、特別な人だと思ってる。」
耳まで真っ赤にした川奈さんが俺を見つめ言う。
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