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 セラが出て行った後、夫候補だけになった部屋は物々しい空気が漂った。それもその筈。夫になれるのは一人だけなのだから。
「君たち、今から辞退することも出来るけど……流石にしないよね」
 クリスタスはにこやかに言葉を発する。その声色は先程と違い、威圧感があった。
「殿下には申し訳ありませんが、その気は一切ございません。私も選ばれた以上、最後まで残らせていただきます」
「俺もです。殿下たちよりも身分は低いですが、アイツを好きな気持ちに嘘はありませんから」
 アンディの言葉に、クリスタスは目を細めた。
「アイツ……? そんな呼び方、失礼じゃないのかい」
「セラとは幼馴染です。今更呼び方を変えるのは余所余所しくなるだけなので」
「そうか……羨ましいよ」
 溜息を吐くクリスタスに、ユーゴスは言葉をかける。
「殿下こそ、婚約者様はよろしいのですか? 夫候補になられたということは、白紙にされてもおかしくはないでしょう」
「まあね。でも、小さい頃に会った時から一目惚れなんだ。その事は彼女も知っている。だから、夫選びの間も婚約者のままでいさせて欲しいと言われたよ。こんな薄情な僕に、そう言ってくれたんだ」
「失礼を承知で言います。もし選ばれなかったらどうなさるおつもりで?」
「その時は潔く彼女と婚姻をするよ。それまで彼女には待ってもらうことになるけどね」
 そう話すクリスタスの目は真剣そのもので、アンディは何も言わなかった。
「失礼な発言をしましたこと、お許しください」
「ううん、ユーゴスのお陰ではっきり出来た。ありがとう」
 微笑み、ユーゴスに礼を述べるクリスタス。そんな会話の後、アンディは言葉を発した。
「で、プレゼントは皆で一斉に渡すって話ですが、最初は何を渡しますか?」
「そうだね……」
「ふむ……」
 悩む三人。そんな三人にも、友情が芽生える日は来るのだろうか。
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