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 今日は遂に、最後の一人であるアンディとのお茶会だ。セラは未だリディスの恋が終わった時のことを考えてはドキドキしてしまっていたが、それでも今日は絶対参加のお茶会。抜け出す訳にはいかないと登城した。
「よ、先に着いちまったから座ってたぜ」
 お茶会の席には、既にアンディが座っていた。立ちあがり、私の座る席の椅子を引いてくれる。紳士的な対応も出来たことに、昔のアンディなら考えられなかったなあと思ってしまった。
「ありがと」
「どういたしまして、ってな」
 にっと笑顔を向けるアンディに、やはり幼馴染と言うのもあり他の二人とは違って安心感というか、気楽にいられるなと思った。だがアンディも夫候補だ。自身に好意を持っていることには変わりない。
「なあ」
「なに?」
 何を話そうかと思っていた矢先に訊ねられ、セラは首を傾げる。何か私に聞きたいことでもあるのだろうか?
「前の二人とはさ、どんな話したんだ?」
「ユーゴスさんと殿下? そうね……どうして立候補したのかは聞いたわ」
「そっか」
 それを聞いたっきり、アンディはだんまりだ。セラは何か話さなければと頭をフル回転させた。
「そ、そういえばね。ティールに彼氏が出来たの!」
「ティールに?」
「ええ。リディスっていう王宮仕えの魔導士よ」
 私の、好きだった人……。それはアンディに言えなかったが、表情から察してしまったらしく、険しい表情になった。
「セラ……お前はそれでいいのか?」
「うん。もう吹っ切れたから」
 そう。確かにあの時は悲しかったし、今も思いだせば少し悲しい。でも、アンディが側で受け止めてくれたからか、もう後悔はない。そういう意味では、アンディのお陰だ。
「ありがとうね」
「ん? おう」
 何のことを言われているのかわかっていないようで、アンディは取り敢えずと言った風に頷いた。変な所で気遣って、変な所でわかってないのは昔から変わっていないようだった。
「セラはさ、他の二人とはどうだったよ? 夫にしたいとかもう決まったのか?」
「全然。まだお茶会だって一回目だよ? 決まるもんですか」
「そうだよな……」
 紅茶に手を伸ばしながら、アンディは頷く。数口飲み、セラに視線を向けた。
「仮の話だけどよ、俺以外を選んでも祝福はするからな。勿論、選んで欲しいって欲はあるけど、セラの幸せが一番だしな」
「アンディ……」
 そうだ。選ぶということは、今の関係を壊すことにも繋がりかねないんだ。仮にアンディを夫に選んでも、幼馴染から夫に関係が変わり、選ばなかったら、今のように楽しくやり取りも出来るかどうかなんだ。それはユーゴス達にも言えることだが、久方ぶりに再会した幼馴染と関係が悪化するのは嫌だな……。
「あ。お前、今この関係が壊れたらどうしようとか考えただろ」
「う……」
 図星を突かれて、言葉に詰まる。どうして昔から、こうも勘は良いのだろうか。
「心配すんなよ。仮に選ばれなくても、俺とお前は幼馴染だし変らずこうして会話も出来るさ。勿論、さっきも言ったが選んで欲しい欲は捨ててないぜ?」
「……ありがと」
 アンディの優しさに甘えている気がするが、そう言って貰えてよかった。そう思いながら礼を述べると、アンディはにかッと笑顔を向けた。
 今の所、一番の候補は誰か、なんて聞かれたら、誰が出るだろう。他人事のように思いながら、セラはアンディとのお茶会を楽しんだ。
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