Blue〜歪んだ愛と本当の愛〜

樺純

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20話

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テラside

部屋を出るとあまりにも広い廊下に思わず呆気に取られた私は立ち止まり、廊下を見渡すとケイトはクスッと笑った。

T「ほんと…お城みたい…」

K「建物はお城みたいでも…残念ながらこのお城にはお姫様がいないんです……良かったらテラさんがそのお姫様になりますか?」

ケイトは笑いながら私を揶揄うような顔をしてそう言った。

T「はぁ!?もう私アラサーだよ!!」

K「ふふふwそんな事知ってますってw」

そんな話をしながら歩いていると、一つの部屋の中からププさんが出てきて思わず私の足は止まり、ケイトの緩んだ顔は一瞬にしてピリッとした顔になる。

私はそんなケイトの表情の変化を見て、ケイトは私にとったら優しくて可愛いくて食いしん坊なヤツでも、この人たちにとっては強くて恐れられる存在である若頭なんだなと思った。

P「若頭!お嬢の服ですが言われた通り若頭の服を用意したのですが少しサイズが大きいと思うのですが…ハウさんのサイズの方がお嬢には……」

K「黙れ。明日にでも新しいのを買いに行け。だから今は俺のでいい。」

P「か…かしこまりました!!」

T「あ…あの!!ププさん!!」

P「どうかププとお呼びくださいお嬢……」

T「あ…えっと…ププ?あ…あの…わ…私…もうアラサーなんで…そのお嬢というのは…」

P「では……姐さんとお呼びすれば良いですか?」

K「ぷッw姐さんってw」

T「いやあのそうじゃなくて!」

P「しかし、若頭からは将来を考える大切なお方だとお聞きしましたので私どもはお嬢と…お嬢がお気に召さないようでしたら姐さんと呼ばせて頂きます。」

T「将来を考える…大切な人…?」

ツインテールで厳つい顔をしたププは私に頭を下げ、私はその言葉を聞いてポカーンとしているとケイトが横で笑っている。

K「将来とか重いですよねwすいません。とりあえず、部屋に入りましょう?」

T「え…ぁうん…」

K「ププ。お前は部屋の前で見張ってろ。あと…姐さんはまだ気が早い…今はお嬢と呼べ。分かったな。」

P「かしこまりました!!」

ケイトがそうププに指示を出し、私たちは部屋の中に入って行く。

ケイトはそっと私をベッドに寝かせると優しく布団を掛けて椅子に座った。

T「私、もう三十前なのにお嬢なんてやだ…恥ずかしい…」

K「んふふふw珍しくあいつらが外部の人間を素直に受け入れたんですよ?特にあの変わり者のププがあそこまで誰かに懐くなんて珍しい。素直にその気持ち受け止めてやってください。」

T「うーーーん。」

半分布団に顔を隠しながらさっきププが言っていた「将来を考える大切な人」という言葉が頭の中をぐるぐると回り、ケイトに聞こうか聞かまいか悩んでいると、ケイトは優しく微笑みながら私の顔を隠してる布団を少し下ろし話し始めた。

K「あの…………さっき、ププが俺より先に言っちゃいましたけど……俺…カジノでテラさんにあんな風に言いましたけどテラさんのこと真剣ですからね…だからキスもしました……軽い気持ちなんかじゃなく…腹決めたんですよこれでも…」

T「…………。」

K「でも俺、こういう世界の人間だし…もしテラさんが嫌だと言うなら諦めます。まだ俺たち付き合ってないですし。テラさんがくれた好きと言う言葉は若頭としての俺を知る前にくれた言葉ですから……」

T「ケイト……」

K「いきなりこんな世界の男にこんなこと言われたら引きますよね…勝手に考えただけですから気にしないでください。こんな世界にいるからどんなにテラさんの事を好きでも俺の口からは告白は出来ないんですよ…巻き込んでしまうから…」

ケイトはそう言いながら切ない顔で気まずそうに笑い目を細めると、そっと私の頬を遠慮気味に撫でた。

私はケイトが週に一度、店に来るのを楽しみにしていて、話をする時間が長くなればなるほどもっと、ケイトを知りたいそう思う気持ちが強くなっていった。

だけど…もし…

私がケイトを受け入れケイトと付き合うことになったとムネオリの耳に入ってしまったら…

ムネオリはきっと黙ってはいないだろう。

それでなくても、ムネオリは部下を使って私を連れ去ろうとした。

おまけにケイトは天龍組の若頭で…

ムネオリは覇道組の若頭となれば…

これは「好き」や「惚れた」という色恋だけの問題ではなく組同士の問題となってしまうのかもしれない。

そして私はまだ、ケイトに私とムネオリの本当の関係を伝えられずにいる。

ケイトは私とムネオリの関係を知った時…

宿敵であるムネオリのセフレとして生きてきた私を…愛してくれるのだろうか…?

そんなことを考えながら私は微かに震える唇を動かす。

T「……あ…あのね………」

K「…はい…」

T「わ…私……じ…実は…」

K「テラさん?」

T「実はムネオリと…!!」

トントン!!

私がそこまで言いかけると扉をノックする音が聞こえて思わず私は口を閉ざす。

K「誰だ?」

ケイトが私の手を握ったままそう扉の向こうに側に問いかけるとジニさんの声が聞こえた。

J「ケイトごめん…離れの集会場でもうみんな集まってるから…時間も時間だし…」

K「分かりました。すぐ行きます。」

ケイトはジニさんにそう答えるとまた、私に視線を戻し優しい笑顔を見せた。

K「今日はもうゆっくり休んでください。何かあれば部屋の前にいるププに言ってすぐに俺を呼んでください。」

T「うん……」

ケイトは優しく微笑むとケイトは私のこめかみにチュウとキスを落とし、私の髪を優しく撫でて部屋を出て行った。

言えなかった…

言おうと思ったけど…言えなかった。

私はケイトにムネオリとの関係を言えなかった。

ケイトに隠し事をしてしまった後ろめたさから布団に潜ると体に激痛が走り、私はケイトが持ってきてくれた痛み止めを飲むとそっと瞳を閉じた。

つづく
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