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53話
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ケイトside
母が死んだのは俺が5歳の頃。
早く大人になりたくて親父である組長に憧れていたあの頃。
親父にどんなに厳しく冷たくされても親父は俺のヒーローだった。
強くてカッコよくて…
早く親父のようになりたいとそう思っていた。
幼すぎるせいで殆どの記憶は曖昧なのにその日の記憶だけは鮮明に覚えている。
その頃、ウチの組と覇道組の抗争が頻発に起こっていた。
そのため、親父は家を開けることが多く屋敷も常に慌ただしかった。
そんな日々が子供心にただ事ではなないと分かっていたし、いつも強気な母ちゃんが親父が屋敷を留守にする度に神棚に手を合わせていた。
そんなある日、俺は夜中に目覚めると薄明かりの中に部下達を引き連れて屋敷を出て行く親父を見つけた。
俺は夢中で走ってその背中を追いかけ裸足のまま屋敷を出て行くと、親父の乗り込んだ車を夢中で追いかけた。
しかし、当然ながら追いつける訳などなく屋敷に戻ろうとした時、幼い俺は見慣れない道にいて迷子になってしまった。
暗闇の中、裸足で歩いても歩いても屋敷にたどり着けず、ただ俺は泣くことしか出来なかった。
すると、突然…
彷徨っていた俺の周りで銃声が鳴り響き、あまりの恐怖でその場にしゃがみ込んで母ちゃんと親父の事を呼び続けた。
慌ただしいサイレンの音や男たちの怒鳴り声が響き、沢山の足音が俺の鼓膜を突き破りそうになった瞬間…
優しい香りが俺を包み込み、そっと柔らかい手で俺の耳を塞いだ。
ゆっくりと見上げるとそこにいたのは母ちゃんで…ほっとした俺は母ちゃんにギュッと強く抱きついた。
すると、俺の手には生暖かい何かが伝ってきて、不思議に思った俺が自分の手を見るとその手は真っ赤に染まっていた。
K「母ちゃん…?」
幼い俺がそう母ちゃんを呼ぶと母ちゃんは優しく微笑み、小さな声で俺の名を呼びそのまま地面に倒れ込んで…そのまま息を引き取った。
母ちゃんは俺を探している時に覇道組が撃った流れ弾に当たっていた。
それでも、母ちゃんは大量の血を流しながら俺のことを探し続け…母ちゃんは死んだ。
母ちゃんが死んだのは…俺のせい。
あの日の俺の名を呼んだ母ちゃんの声は一生俺は忘れない。
憧れの親父は母ちゃんが死んでから浴びるように酒を飲み、人が変わってしまったように感じた。
元々厳しく冷たい人だったがさらにそれに拍車をかけるかのように厳しく…冷たく冷酷になり…俺は大人になった今も後悔を繰り返しながら生きるようになってしまった。
K「だから、親父は俺を恨んでるんだよ。」
全てをテラに話し終えるとテラの目からは涙が溢れていて、こんな話を聞かせてしまった事を後悔し申し訳なく思った。
K「ごめんね。こんな話聞かせて…」
T「ううん…話してくれてありがとう…」
K「テラ…」
T「でもその話聞いて尚更…私はやる気が出てきた!絶対に組長に認めてもらうしケイトの気持ちも組長に分かってもらう!」
テラは泣いていたかと思ったら今度は拳を天高く突き上げて気合いいっぱいに張り切っている。
K「そのさっきから言ってる決まりだね!とかやる気が出てきた!とか一体、何の話?」
T「私と天龍組、組長との戦い!!」
K「え…それってまさか…親父に宣戦布告するってこと?」
T「うん。組長…いや、お父様に絶対、私たちの交際!認めさせてやる。負けられない戦いがここにある!!」
鼻の穴を広げて気合い満々でそう言ったテラの顔は……
俺が幼かった頃
親父と夫婦喧嘩した母ちゃんが絶対に親父の方から頭を下げて謝らせてやる!そう言ったあの時の顔にそっくりだった。
つづく
母が死んだのは俺が5歳の頃。
早く大人になりたくて親父である組長に憧れていたあの頃。
親父にどんなに厳しく冷たくされても親父は俺のヒーローだった。
強くてカッコよくて…
早く親父のようになりたいとそう思っていた。
幼すぎるせいで殆どの記憶は曖昧なのにその日の記憶だけは鮮明に覚えている。
その頃、ウチの組と覇道組の抗争が頻発に起こっていた。
そのため、親父は家を開けることが多く屋敷も常に慌ただしかった。
そんな日々が子供心にただ事ではなないと分かっていたし、いつも強気な母ちゃんが親父が屋敷を留守にする度に神棚に手を合わせていた。
そんなある日、俺は夜中に目覚めると薄明かりの中に部下達を引き連れて屋敷を出て行く親父を見つけた。
俺は夢中で走ってその背中を追いかけ裸足のまま屋敷を出て行くと、親父の乗り込んだ車を夢中で追いかけた。
しかし、当然ながら追いつける訳などなく屋敷に戻ろうとした時、幼い俺は見慣れない道にいて迷子になってしまった。
暗闇の中、裸足で歩いても歩いても屋敷にたどり着けず、ただ俺は泣くことしか出来なかった。
すると、突然…
彷徨っていた俺の周りで銃声が鳴り響き、あまりの恐怖でその場にしゃがみ込んで母ちゃんと親父の事を呼び続けた。
慌ただしいサイレンの音や男たちの怒鳴り声が響き、沢山の足音が俺の鼓膜を突き破りそうになった瞬間…
優しい香りが俺を包み込み、そっと柔らかい手で俺の耳を塞いだ。
ゆっくりと見上げるとそこにいたのは母ちゃんで…ほっとした俺は母ちゃんにギュッと強く抱きついた。
すると、俺の手には生暖かい何かが伝ってきて、不思議に思った俺が自分の手を見るとその手は真っ赤に染まっていた。
K「母ちゃん…?」
幼い俺がそう母ちゃんを呼ぶと母ちゃんは優しく微笑み、小さな声で俺の名を呼びそのまま地面に倒れ込んで…そのまま息を引き取った。
母ちゃんは俺を探している時に覇道組が撃った流れ弾に当たっていた。
それでも、母ちゃんは大量の血を流しながら俺のことを探し続け…母ちゃんは死んだ。
母ちゃんが死んだのは…俺のせい。
あの日の俺の名を呼んだ母ちゃんの声は一生俺は忘れない。
憧れの親父は母ちゃんが死んでから浴びるように酒を飲み、人が変わってしまったように感じた。
元々厳しく冷たい人だったがさらにそれに拍車をかけるかのように厳しく…冷たく冷酷になり…俺は大人になった今も後悔を繰り返しながら生きるようになってしまった。
K「だから、親父は俺を恨んでるんだよ。」
全てをテラに話し終えるとテラの目からは涙が溢れていて、こんな話を聞かせてしまった事を後悔し申し訳なく思った。
K「ごめんね。こんな話聞かせて…」
T「ううん…話してくれてありがとう…」
K「テラ…」
T「でもその話聞いて尚更…私はやる気が出てきた!絶対に組長に認めてもらうしケイトの気持ちも組長に分かってもらう!」
テラは泣いていたかと思ったら今度は拳を天高く突き上げて気合いいっぱいに張り切っている。
K「そのさっきから言ってる決まりだね!とかやる気が出てきた!とか一体、何の話?」
T「私と天龍組、組長との戦い!!」
K「え…それってまさか…親父に宣戦布告するってこと?」
T「うん。組長…いや、お父様に絶対、私たちの交際!認めさせてやる。負けられない戦いがここにある!!」
鼻の穴を広げて気合い満々でそう言ったテラの顔は……
俺が幼かった頃
親父と夫婦喧嘩した母ちゃんが絶対に親父の方から頭を下げて謝らせてやる!そう言ったあの時の顔にそっくりだった。
つづく
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