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63話
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ケイトside
数日後
テラが突然、熱を出した。
咳や鼻水の症状はないことから、日頃の疲れが溜まった疲労からくるものだろと、今ではウチの組で医療の知識を部下たちに教えているヨナに言われた。
K「今日、定休日で良かった。」
T「でも…園にケーキ持っていく予定だったのに…」
K「ププが持って行くから大丈夫だよ。」
T「ププ1人だと余計に心配。みんなに会いたかったな…あの子…元気かな…」
K「新しい入った子?名前は?」
T「名前も知らないあの子……仲良くなりたかったのに…」
K「まるで恋だね?」
T「妬いた?」
K「くだらないこと言ってないで早く寝なさい!」
T「はーい⤵︎⤵︎」
そうしてテラはその日一日、ゆっくりと屋敷で過ごした。
そのおかげで次の日の朝には熱も下がり、俺はホッとひと安心した。
K「熱下がったけど、今日も念のため休んだらよかったのに。」
T「ダメだよ…ケーキの予約はいってるもん。でも、お店は早めにクローズする!」
K「おっけ。俺、夜は屋敷で集会あるから迎えに行けないけどププに行かせるから。終わりそうになったらププに電話してね。」
T「うん。じゃ行って来ます!」
K「行ってらっしゃい!」
そうして早朝テラをお店まで送り、屋敷まで車を走らせていると通りかかった園の前で先生たちが只ならぬ様子で集まっていた。
K「おはようございます。こんな早朝からなにかあったんですか?」
「それが…朝ご飯の支度をしようとしたら子供が1人がいなくて今、先生たちでこの周辺を探してるんです。」
K「えぇ!?名前は?」
「ケントくんです…。」
俺はその名前を聞いて息をのんだ。
K「ウチの人間にも捜索させるんでケントくんの写真をコピーしておいてください。」
「はい…」
俺は慌てて屋敷に帰りまだ、寝ている部下たちを叩き起こした。
K「起きろ!!任務だ!!」
俺の声が響き渡ると飛び起き準備をする部下たち。
そんな様子に気づいたジニさんも目を擦りながら起きて来た。
J「こんな朝早くからどうした?テラを店まで送って来たんじゃないのか?」
K「園にいる子どもが1人いなくなったみたいで今、先生たちが探してるんです。」
J「えぇ!!!?」
K「なので、俺たちも捜索を手伝わないと。」
J「そうだな…。」
そうして、俺たちは手分けして近所を走り回りケントを探した。
しかし、ケントらしき子どもは見当たらず手掛かりすら見つからない。
先生の話では朝5時ごろ他の子供がトイレに行く時にはケントは布団で寝ていたことが確認され、朝6時に先生が朝食の準備をしようと起きた時にはケントはいなかったと…
時計を見ればもうすぐ7時を指そうとしていた。
子供の足ではそんな遠くに行ってないはずなのに…
K「園長先生、なにか連絡はありましたか?」
俺の問いかけに先生は不安そうな顔のまま首を横に振る。
K「あと1時間探して見つからなかったら警察に届けましょう。」
そう園長先生と話をしてまた、俺は走りだしケントを探す。
街中で部下達に出会すたびに聞いてみるが手掛かりは全くない。
どこ行ったんだよ………
焦りと苛立ちを感じていると、俺の前から楽しそうに歌をうたい手を繋ぎながら歩いてくるテラとケントの姿があった。
驚いた俺は慌てて2人の元に駆け寄る。
K「何やってんだよ!!」
つい、心配からそう声を荒げてしまうとケントはテラの足にしがみ付きテラの後ろに隠れた。
そのケントの姿は親父に厳しく叱りつけられた時の俺にそっくりで俺は思わずハッとした。
T「ちょ…ケイト!待って!なにそんな怒ってんの……」
俺はテラの言葉に返事をせず、ケントの目線にまでしゃがみ込むとケントの腕を引いて自分の前に立たせた。
K「なんで先生に黙って1人で園を出たんだ?」
「…………。」
ケントは下を向き口を尖らせたまま返事をしようとしない。
K「お前のことを心配して沢山の人がお前のこと必死で探し回ってるんだぞ?」
俺がそう言うとケントの顔は次第に歪み始め涙をポロポロと流しはじめる。
K「ケント…泣いてちゃ分かんないだろ?」
俺がケントの頬に流れる涙を親指で拭うと、ケントは声を上げて泣き始め…
俺が聞いたケントの声はそれがはじめてだった。
「ゔぅ…ご…ごめんなしゃい……」
そう泣きじゃくるケントをテラが抱きしめるとケントもテラの首に手を巻きつけてギュッと抱きついた。
T「ケイト違うの…私のせい…」
K「え?」
T「昨日、熱で園に行けなかったでしょ?だから、ケンちゃんは私を心配して私の店に来てくれたんだよ……四つ葉のクローバーを見つけたからって。早く良くなってねって。」
ケントのポケットからはクシャクシャになったお店のカードが少し見えていて、その地図を頼りに1人でテラの店にまで行ったことが想像出来た。
T「こんな朝早くからおかしいとは思ったけど…何も言わずに出て来てたなんて…」
テラがケントを抱きしめながらそう言うと、ケントはテラの肩から顔を上げて涙でぐしゃぐしゃのまま言った。
「ごめんなしゃい…おれのこと…キライになる?」
その言葉を聞いたテラの目にはジワッと涙が滲み、俺の胸をギュッと締め付けられる。
T「キライなんてならないよ。私の事が心配で来てくれたんでしょ?ケンちゃんの事もーっと好きになった!」
テラがそう言うと泣き顔のままケントは笑った。
それがはじめて見たケントの笑顔だった。
つづく
数日後
テラが突然、熱を出した。
咳や鼻水の症状はないことから、日頃の疲れが溜まった疲労からくるものだろと、今ではウチの組で医療の知識を部下たちに教えているヨナに言われた。
K「今日、定休日で良かった。」
T「でも…園にケーキ持っていく予定だったのに…」
K「ププが持って行くから大丈夫だよ。」
T「ププ1人だと余計に心配。みんなに会いたかったな…あの子…元気かな…」
K「新しい入った子?名前は?」
T「名前も知らないあの子……仲良くなりたかったのに…」
K「まるで恋だね?」
T「妬いた?」
K「くだらないこと言ってないで早く寝なさい!」
T「はーい⤵︎⤵︎」
そうしてテラはその日一日、ゆっくりと屋敷で過ごした。
そのおかげで次の日の朝には熱も下がり、俺はホッとひと安心した。
K「熱下がったけど、今日も念のため休んだらよかったのに。」
T「ダメだよ…ケーキの予約はいってるもん。でも、お店は早めにクローズする!」
K「おっけ。俺、夜は屋敷で集会あるから迎えに行けないけどププに行かせるから。終わりそうになったらププに電話してね。」
T「うん。じゃ行って来ます!」
K「行ってらっしゃい!」
そうして早朝テラをお店まで送り、屋敷まで車を走らせていると通りかかった園の前で先生たちが只ならぬ様子で集まっていた。
K「おはようございます。こんな早朝からなにかあったんですか?」
「それが…朝ご飯の支度をしようとしたら子供が1人がいなくて今、先生たちでこの周辺を探してるんです。」
K「えぇ!?名前は?」
「ケントくんです…。」
俺はその名前を聞いて息をのんだ。
K「ウチの人間にも捜索させるんでケントくんの写真をコピーしておいてください。」
「はい…」
俺は慌てて屋敷に帰りまだ、寝ている部下たちを叩き起こした。
K「起きろ!!任務だ!!」
俺の声が響き渡ると飛び起き準備をする部下たち。
そんな様子に気づいたジニさんも目を擦りながら起きて来た。
J「こんな朝早くからどうした?テラを店まで送って来たんじゃないのか?」
K「園にいる子どもが1人いなくなったみたいで今、先生たちが探してるんです。」
J「えぇ!!!?」
K「なので、俺たちも捜索を手伝わないと。」
J「そうだな…。」
そうして、俺たちは手分けして近所を走り回りケントを探した。
しかし、ケントらしき子どもは見当たらず手掛かりすら見つからない。
先生の話では朝5時ごろ他の子供がトイレに行く時にはケントは布団で寝ていたことが確認され、朝6時に先生が朝食の準備をしようと起きた時にはケントはいなかったと…
時計を見ればもうすぐ7時を指そうとしていた。
子供の足ではそんな遠くに行ってないはずなのに…
K「園長先生、なにか連絡はありましたか?」
俺の問いかけに先生は不安そうな顔のまま首を横に振る。
K「あと1時間探して見つからなかったら警察に届けましょう。」
そう園長先生と話をしてまた、俺は走りだしケントを探す。
街中で部下達に出会すたびに聞いてみるが手掛かりは全くない。
どこ行ったんだよ………
焦りと苛立ちを感じていると、俺の前から楽しそうに歌をうたい手を繋ぎながら歩いてくるテラとケントの姿があった。
驚いた俺は慌てて2人の元に駆け寄る。
K「何やってんだよ!!」
つい、心配からそう声を荒げてしまうとケントはテラの足にしがみ付きテラの後ろに隠れた。
そのケントの姿は親父に厳しく叱りつけられた時の俺にそっくりで俺は思わずハッとした。
T「ちょ…ケイト!待って!なにそんな怒ってんの……」
俺はテラの言葉に返事をせず、ケントの目線にまでしゃがみ込むとケントの腕を引いて自分の前に立たせた。
K「なんで先生に黙って1人で園を出たんだ?」
「…………。」
ケントは下を向き口を尖らせたまま返事をしようとしない。
K「お前のことを心配して沢山の人がお前のこと必死で探し回ってるんだぞ?」
俺がそう言うとケントの顔は次第に歪み始め涙をポロポロと流しはじめる。
K「ケント…泣いてちゃ分かんないだろ?」
俺がケントの頬に流れる涙を親指で拭うと、ケントは声を上げて泣き始め…
俺が聞いたケントの声はそれがはじめてだった。
「ゔぅ…ご…ごめんなしゃい……」
そう泣きじゃくるケントをテラが抱きしめるとケントもテラの首に手を巻きつけてギュッと抱きついた。
T「ケイト違うの…私のせい…」
K「え?」
T「昨日、熱で園に行けなかったでしょ?だから、ケンちゃんは私を心配して私の店に来てくれたんだよ……四つ葉のクローバーを見つけたからって。早く良くなってねって。」
ケントのポケットからはクシャクシャになったお店のカードが少し見えていて、その地図を頼りに1人でテラの店にまで行ったことが想像出来た。
T「こんな朝早くからおかしいとは思ったけど…何も言わずに出て来てたなんて…」
テラがケントを抱きしめながらそう言うと、ケントはテラの肩から顔を上げて涙でぐしゃぐしゃのまま言った。
「ごめんなしゃい…おれのこと…キライになる?」
その言葉を聞いたテラの目にはジワッと涙が滲み、俺の胸をギュッと締め付けられる。
T「キライなんてならないよ。私の事が心配で来てくれたんでしょ?ケンちゃんの事もーっと好きになった!」
テラがそう言うと泣き顔のままケントは笑った。
それがはじめて見たケントの笑顔だった。
つづく
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