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光の湖畔編

第66話 空の青さもシャンプーも

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「ブレンド豆にはね、最初イメージが通らなかったの。多分2種類あるから。
そのあと、宿舎コーヒーの……エタンごめん。ズバッといっちゃうね。美味しくないやつ飲んで。
そんでピカらせたじゃん?
次ブレンド豆やるときは、宿舎コーヒーの味だけ追うように集中したの。そしたらできた。
そんでさ。出来たブレンドコーヒー豆で淹れたやつ、魔力流しても思ったよりイマイチだったでしょ?」

「ああ、わかるぜ。そのままのクレールのコーヒーと、魔力を通したもののグレードの落ちる仕上がりだった魔力宿舎コーヒー。
この二つの掛け合わせだったからだろ?」

「うん、そうだと思う。
目の前にある変えたい対象の味。
そんでそれをどう変えたいのか、自分の思い描く理想の味。
これをかっきり明確に捉えることが重要なの。
1種だと理想だけ思い描けばいいから、難易度がそう高くないんだけど」

 そう……複数は難しかった。

「素材が2種以上混ざってるのものはね。他の味やイメージを排除して、とにかく集中して。
1種だけを相当明確に思い描く。
さっき言った、対象と理想。
この両方を頭と舌に浮かべて結びつけなきゃ魔力が流れないみたい」

「ってことは……。虹の方様の浸透影響がもたらした力だとしても。
コニー個人の研ぎ澄まされた味覚や、地球で培った美味しいものの記憶を呼び起こさなければ成功しないんだね?」

「うん。そうだと思う。
単体じゃないなら、私ももっと訓練しないとダメって感じだよ」
クレールの問いかけに答える。

「歴代のおヌル様たちも、自分の好きなこと、自分の得意な分野を活かした、特殊な魔力が使えるんだよ。
『おヌル様の夢を叶える能力』
まるで虹の方様がもたらした贈り物みたいでしょう?
実際、おヌル様本人、そして研究者も国民もそんなふうに捉えているんだ」

「それもまあ、全てが公表されている訳ではないぜ。その辺はおヌルの自由だからな。
目立つような能力や、デカい恩恵を生ずる能力は隠しずらいから。
複数の能力があって、おそらく隠しているのもあるだろうな。
幾つも公表しているおヌル様がいるから、複数力を持ってる場合があることは分かってるんだ」

 ぐるぐるしてきた……
 まだあるんかい? 不思議な力が?……
 私、人間から遠のいたような……
 ねえ、虹の方様はこの世界の神様なの…
 なんで私を呼んだの……

「コニー。こっち見て。
ゆっくりだよ、ゆっくり。この世界のことも。君自身のことも。おヌル様に詳しい僕らでさえ謎だらけだと感じてる。
不安で怖いね、コニー。
ゆっくりね、一緒にゆっくり知っていこう?」

 クレールが私の手をぎゅっと握った。

「そうだぞ。こっちへ来て、地球にいた頃とはだいぶ変わっちまったと思うがな。
コニーはコニーだ。そうだろ?
きっとなんも変わってねえんだ。
俺らもゆっくりコニーを知って行くから。
この世界のことよりも、俺らのことを最初に知ってくれ。絶対的な味方だから、大丈夫だ」

 頭の上にエタンが手を載せた。
 クレールを見つめていた私を、優しく自分のほうへ振り向かせる。
 今度はエタンを見つめる。

 私はうなづいて、目を伏せ。
 そして、目を瞑ったまま正面を向いて深呼吸を一つ。

 うん、ゆっくりだ。
 目の前のことをからちょっとずつ。

『アイドルになりました』
『宇宙に移住しました』
そんなんと同じだ。

『おヌル様なりました』
『リンゼル等に引越しました』
たいしたことだけど、たいしたことじゃない。

 地球に神様だっていっぱいいるし。
 でも私、見たことないもの。

 霊感があったり、超能力あったり、不思議なこと体験してる人だって地球にいっぱいいるんでしょう?
 未だ解明されない摩訶不思議が。
 私の知らないびっくりが。
 地球に、世界中に散らばってる。

 空が青いのも海が青いのも、ちゃんと理由があるけど、私聞いてもすぐ忘れてちゃう。
 なんでだろう~とは凄く思う反面、そんな真実の科学解説、聞いたってちゃんと理解できないし、そもそも興味ないし。

 上下水道、ガス電気、テレビも電話もパソコンも、仕組みなんて全く分かってないから。
 便利なものありがとう、って単純に感謝してる。
 使えたらそんで十分。

 親友の恵理奈が連れてってくれて、初めて参加した合コン。
 彼女とその隣に座った男の子との、会話を思い出す。
「キミ、シャンプーなに使ってんの?」
「ねえ、あなたそれ聞いて知って、どーすんの?」
って言ったまさにアレだわね。

 ふふ、恵理奈。
 そうね、そうよね!
 知ったところで、私どーもしないわ。
 知らないから、気になっただけ。
 そもそも理由や理屈なんて、聞いたって、右から左。

 私ってば昔から、ぶっちゃけそういうのはどーでもいい思ってる、アホの子でしょう?

 そういうものを
 あるがままに享受する。
 なんだかよく分からないけど、良いねえ~って。

 どこに居たって、相変わらず私は私だ。
 真面目なわりに、いい加減で良い加減。

 ふふ、私ったら、そんな人間でした。
 ね、恵理奈。
 そうなのよ、エタンセル、クレール。

 
「2人の言う通りだね。ゆっくり、ゆっくり。
私たち、頑張らないを頑張るトリオだった。
ありがとう。おかげで落ち着くことができたよ。
それにしてもさぁ、絶対の味方って……。
ものすっごい安心安全で、守られてる感が半端ないよ。
ふふ、私、なんだかとっても嬉しい気分。
まるで、お父さんとお母さんがこっちの世界にできたみたい」

 ね? って左右を見やる。

「嬉しくてなによりだよ……」
項垂れるクレール。

「そうきたか、マジか……」
片手で顔を押さえて上を向くエタン。

 はりゃ?、お母さん発言が嫌だった?
どっちがどうって訳じゃないから、なんならお父さん2人って言い換えるよ? ごめんごめん、と慌てて言い添えた。





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【次回予告 第67話 ダブル掛け挑戦】

コニー……「蜂蜜通信 号外! 『舌先三寸に覚えあり』にて。蜂蜜ひみつが次回R1◯にチャレンジします!」ってこれどう思う?

エタン……「ウッソ! マジか?!」

クレール…「そそっかしいあの人のことだよ。作品記入ミスじゃないの?」

コニー…「うん、そうだね。まあどっちにしても、私たちは関係無いと思うよ」

エタン…「そうだな……」
(急な展開過ぎるぜ。あ、風呂か?! ベタなラッキーすけべか? 歓迎だが)

クレール…「そうだね……」
(手は繋いだし、ぎゅっともしたし。次は……ああ、心の準備が……。落ち着け、しっかりしろ! 僕ちょっと嬉しくて……)

三者三様の対応でありました(*´◒`*)はてさて実際はどうでしょうかね?



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