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しおりを挟む王宮に向かう馬車の中、嫌な沈黙が続いていた。いつものリイナなら他愛ない話題を挙げたり、ロナルドに噛みついたりしていた筈だ。だがリイナは出掛ける前のロナルドの言葉がどうしても引っかかっていた。
「……どうした?」
王宮に到着する直前、ロナルドが口を開いた。
「いえ。」
「……もう着く。」
馬車が止まり、ドアが開けられる。先に降りたロナルドがリイナの手を取る姿は、凛々しい魔術協会の会長の姿だった。
◇◇◇◇
王城のホールに着くと、大勢の貴族たちで埋め尽くされていた。社交デビューする前に子爵家を追い出されたリイナにとっては気後れしてしまう場所だ。ロナルドとリイナが足を進めると、あっという間に貴族たちに囲まれた。
「ロナルド様、本日はおめでとうございます。」
「第二王子殿下の治療に尽力されたとか。」
「流石ロナルド様ですね。」
多くのお祝いの言葉にロナルドは動じることなく「私ではなく、魔術協会に贈られる褒賞ですから。」と冷静に答えている。周りの美しい令嬢たちもロナルドに見惚れている。
(私、だって。いつもは俺って言ってるのに。)
リイナをエスコートしているのは憎まれ口を叩く意地悪なロナルドではない。リイナの心は沈んでいった。
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