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※あの一夜
しおりを挟む親友の婚約が嬉しくて嬉しくてお酒を飲みすぎて、ふわふわした心地で誰かに抱き上げられた。
初めての感覚だった、私はずっとモテない人生を送ってきたから。
逞しい腕に抱き上げられる日が来るなんて思わなくて、堪能したくてついついその人に擦り寄ってしまう。
翌日には酔っていたからと言い訳ができるしと、擦り寄ると「うぐっ」とうめき声が聞こえてきた。
なんだろう?と顔を上げると目の前にはチカチカするほどの美しい男性、というか、私の推しにそっくりさんがいた。
アルベイン様に似てる人がこの世にいるなんて、凄い凄い!ってケラケラ笑う私に呆れたような表情をするアルベイン様のそっくりさん。
そのそっくりさんに馬車に乗せられ、そのまま彼の邸宅に連れてこられても私は酔っていて気づかなかった。
そっくりさんではなく、本物であることに。
彼の寝室に連れてこられても私はなんの警戒心も抱かず、そのままベッドに横にされた。
おろされたベッドは上質なものなのか、私の体を受け止めて、ふわりと沈む。
その肌触りといい、ふわふわした柔らかさといい、心地が良くて酔っているから私は船を漕ぎ始めたのだけれど、そっくりさんが私に覆いかぶさってきて唇を重ねてきた。
それを受け入れる、私は正常な判断ができなかったのだ。
伯爵令嬢として殿方と一夜を共にするなど、はしたない行為をしたらどうなるかなんて。
ましてや、それをネタに翌日結婚を迫られるなんて予想だにしてなくて触れ合う唇が心地よくて、何度も角度を変え啄むような口付けを交わして息があがり、はっ…と吐息をもらすと唇の隙間から舌が入り込んできて口内を肉厚で長い舌が蹂躙する。
彼の唾液は甘くて流し込まれる唾液を夢中になって飲み込むと、ふっと彼が笑った気がした。
細められた目と目があって、その優しい表情にときめく。
見れば見るほど推しに似ている彼、アルベイン様に似てる人がいるのになぜ有名じゃないのだろう?と心の中で思う。
彼の手が幾重にも重なるドレスのスカートをかき分けて、下着ごしに割れ目もなぞられると甘い痺れのような快楽が与えられ、ぞくぞくと背筋粟立つ。
下着ごしに指が何度も上下に動いて、擦られるたびにもどかしいような痺れる快楽が体を駆け巡って、体の熱が上がっていくようだ。
「あっ…ぁ、ん…はぁ…、やぁ…」
「ルーナ、私を見て?」
「え?」
彼の問いの意味がわからなく、彼を見つめると欲を孕んだ瞳と目が合った。
彼はたしかに私に欲情してるのだ、今まで異性にそういった感情を向けられたことがなかったのに。
それに推しに似てるからか、心臓がうるさいくらい騒がしい。
とにかく彼はカッコイイ、見目麗しいのだ。
直視するなんて恥ずかしくてお酒のせいだけじゃなく、頬に赤みがさす。
潤んだ瞳で彼のほうにちらちらと視線を送れば、彼は私を見て優しく微笑んでくれる。
それだけでも胸がいっぱいで苦しい、推しに似てる人、私の生きる活力で彼さえいれば家のために好きでもない人に嫁ぐことになっても大丈夫だと自分に言い聞かせ続けてきた。
異性から全くモテない私は恋愛結婚は望めないし、若い人との結婚も望めないと思う。
だからこそ今だけはこの人と一夜を過ごしてもいいと思ってしまったんだ。
こんなかっこいい人が初めての相手なんて幸せだから。
震える手で彼の頬に触れて「口付け……したいです」と強請る。
名前も知らない人にこんなことを強請るなんて、なんてはしたないのか、そう頭ではわかっていても言葉にした。
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