暴食の冒険者〜あ、もう少し魔力濃いめで〜

赤井水

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孤児から冒険者へ

6話夢中と集中は似て非なるもの

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 俺は、ガイと言うオッサンに言われた通りに木剣を振っていたが。
やはりかなり体を引っ張られている。

仕方ないので止め跳ねの瞬間魔力循環の速度を上げて体を強化して振っていたが
ちょくちょくオッサンが石を投げてくるので結構集中を欠いていた。

「こんなもんで動揺するな!意識を乱されるな。心を常に落ち着かせ集中っ!」

目の色が変わったかの様に指導を始めやがった。

それから1時間程だったが、このおっさんはババアと同じ化け物だと言う事を嫌という程理解させられたよ。

後ろから石が飛んで来たと弾いた瞬間また後ろから石が飛んで来るって……
本人はそれ以上に速く動いてるんだよね?

『剣術2・気配察知を獲得しました』

おい、これ絶対初日にやる訓練じゃねぇだろ……
最低でも気配察知があれば冒険者の初期なら動けるって聞いたぞ?

それから10分もしないうちに体力切れでぶっ倒れて目の前が真っ暗になった。

「こんのバカジジイがぁぁぁ」

俺はババアの酒焼けしたハスキーボイスの怒鳴り声で目を覚ました。

俺の周りにはララとモアちゃんが居て心配そうにララは俺の頭を抱えて覗き込んでいた、他の子供達、10人位が木槍や木剣や棍棒を振っていた。

「いや、思ったよりヴィンが動きよるからな、途中でスキルまで獲得と来たもんだ。嬉しくなってついついやっちまった」

とオッサンは気まずそうに頬をポリポリとかいている。
よく見ると頭に瘤が出来ていた……ババアのゲンコツはやはり凶器らしい。

「死ぬかと思った。あのオッサンやべえだろ」

「あ、ヴィン君」「ヴィン大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫だよ!」

俺は立ち上がると既に腕や肩が筋肉痛になっていた。
ピキっと痛みが走る度にカクカクプルプルとロボットの様な動きや産まれたての子鹿の様な動きになる。

周りの子供達はそれを見て大爆笑してやがる。
いつかやり返そうと心に決めた。

「おっ?ヴィン大丈夫か?ガハハやり過ぎちまったわ」

オッサンはそう言うと俺の背中をバンバンと叩いた瞬間

「うごぉぉぉぉ」

俺は痛みで蹲った。

「はぁ、ヴィンまた筋肉痛かい?モア連れてって上げな」

「「はーい!」」

ララとモアちゃんに部屋に連れていかれるのであった。

モアちゃんに濡れ布巾で体を拭いて貰った後お昼寝した。



ふと、何気なく目を覚ますと物凄い悪寒に襲われる。
周りに居る精霊達も何かアワアワしている。

俺が庭の方へとフラフラ歩いて行くのを他の子供達は不思議そうに見てもこの間まで意識無き人形だった為気にされなかった。

庭に向かえば向かう程体中の警鐘がガンガンと耳の横で鳴ってる気がした。

庭の中心に出た時であった。
空を見た時唖然としたのであった。

そこにあったのは直径10m位の火の玉であった……

「死ぬのか……?」

目の前が真っ暗になった。
これは気絶じゃない、前世で経験がある。
死ぬ可能性がある時に起こる極限状態の情報の切り捨てで一時的に視覚情報が落ちただけだ。

周りに光の玉が見える、それにフォーカスを当てグングン近付くと精霊達であった。
俺に何かを伝えようとして光の玉を俺に吸収させている。

「ん?吸収?なぁ。出来ると思うか?」

青と緑の精霊達が俺の周りに飛び赤の精霊達は俺の目の前に黄色や茶色の精霊達は俺の背後に移動した。

周りを見渡すと、皆覚悟を決めた顔をしてやがる。

「ははっ!俺も諦めねぇよ。お前らも諦めんなよ?ここにはララやモアが居る。次は守るさ。ん?次は?何だっけ?まぁ良いや殺ろうぜ」


『暴食の王』グラトニー

俺は昨日聞いた天の声に従い火の玉が落ちてくる瞬間に手を向けると
物凄い勢いで火の玉の魔力を吸収し始めた。

周りに被害が出ない様に青と緑が必死に耐える。
俺が吹き飛ばされない様に黄色と茶色が壁や俺を地面に繋ぎ止める。

そして俺が熱量に焦がされない様に赤の精霊達が必死に守る。

「がぁぁぁぁぁ」

体内を焼き尽くす様な熱が駆け巡る

『痛覚耐性4を獲得しました』

「くぷっ。ヤバいもしかして満腹なのか?暴食の癖にひ弱過ぎるだろっ!?」

魔力を吸収し始めた時に目の前に魔法陣が出現していたがそれも吸収限界が来てから徐々に押されている。罅も入り始めた。

そんな時だった、背中にトンっと体当たりされる感覚があった。
後ろを振り返ると目に涙を浮かべているララだった。

「ヴィン君……魔力頂戴」

それだけ言うとララは俺に口付けするのであった。

「!!!?!!?」

俺は軽くパニックになったが吸収限界から3分の1程魔力がララに入ったと思ったらララはその魔力を使い今度は精霊達に魔力を与え始めた。

『精霊様……皆をヴィン君を護る力を貸して下さい』

それは念話だったのかもしれないが確かにその祈り、願いは精霊達に力を渡していたのであった。

俺は急にララから魔力を空まで引っ張られた事により火の玉を吸収する事が出来たと同時にお馴染みの地べたにキスするのであった。

庭には芝生が俺達を中心に円状に軽く焦げてしまったが青の精霊達が消火してくれた為余り燃え広がったり建物に被害が行く事は無かった。

ララは今、顔を真っ赤にしつつも俺に膝枕をして看病してくれてる。

「ありがとララ。ララが居なかったら死んでた」

顔を赤くしつつもフルフル首を横に振ったララ。
「ヴィン君が居なかったら気付けないまま死んでた。だから護れて良かったね」

その笑顔は、前世10年ちょっとと異世界に来て2つの人生合わせても1番の輝きだった。

それにしても頭がガンガンする。
吸収限界まで来たのにも関わらず吸ったもんだから破裂しかけているのだろうなぁ。

さっきから赤の精霊達が俺の体にピッタリくっついて何か調整していやがる。
そして頭や手足は青と緑の精霊。

外敵がまだ居るかの警戒が黄色と茶色の精霊達が担っている。

「ヴィン君精霊様達から凄く好かれてるね?」

ララは精霊達を見てそんな事を言う。

「まぁ、でも俺が好かれてるならララは俺を守ったって事はララも好かれてるさ。いつもララが俺の横で寝ている時は精霊達もララにくっついてるぞ?」

そう言うとポカポカ俺を叩き、顔を真っ赤にしてしまった。

「むぅぅぅ。寝顔見られたー」

俺達2人はその後、口裏合わせをして誰か気付いてくれるまで待つのであった。
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