エルダーストリア-手垢まみれの魔勇譚―

秋山静夜

文字の大きさ
75 / 129
第二譚:灼銀無双の魔法譚

設定解説①

しおりを挟む

 今回の話での戦闘関連、エミルとイリアやアゼルとのの違いについて解説していきます。


 作中においてエミルは封印の解除されたイリアやアゼルに対しても圧倒的な戦闘能力を見せつけていましたが、何故エミルとイリアたちでそこまでの差がついたのか解説します。

 まずエミルのレベルや基礎能力ですが、イリアと同じレベル99であり、基礎ステータスも大きく変わりはありません(速さや力は若干エミルが上)。但しイリアのような魔族に対するアドバンテージはない為、対魔族・魔獣戦ではイリアの方が殲滅力で勝っています。

 エミルの特徴としては魔法による自己バフをほぼノータイムで掛けられることであり、これにより本来の基礎ステータスを大幅に強化した力で戦闘を行なうことができます。

 しかし、これでは対人間戦の苦手なイリアに有利は取れても圧倒的な回復力と物量を誇るアゼルには敵わないはずでした。

 では何故エミルが終始圧倒していたのか。

 メタ的な話になりますが、エミルとイリアたちでは戦闘において見えていた「世界」に大きな隔たりがあったのです。

 イリアやアゼルの戦闘イメージは基本的にターン制です。

 自分が攻撃したらそこで判定が起こり、次に相手の攻撃がやってくる。そのサイクルが終われば再び自身が攻撃の権利を得る、といった感じです。

 分かりやすい例えだと、まさにドラクエですね。


 対するエミルの戦闘イメージは格ゲー(格闘ゲーム)です。

 相手との間合いを測りながら、自身の被ダメージをできるだけ少なく、相手へのダメージをできるだけ多く与えることを目指し、最終的に相手のライフを削り切る、といったイメージですね。

 2Dの格闘ゲーム、ストリートファイターやキングオブファイターズなどが良い例でしょうか。


 もちろんイリアたちがターン制のプロレスのような戦い方を行なっているという意味ではなく、エミルとイリアたちとの間にある戦闘感覚、戦闘スキルにはそれだけの隔たりがあるということです。

 言ってしまえばイリアたちは格ゲーにおいてスペックの高いキャラを選んだだけのエンジョイ勢。エミルはスペックの高さに加えて操作スキルも極めつくしたガチ勢なのです。

 これらの組み合わせが戦えば、ガチ勢のエミルがイリアたちを完全に圧倒したことにも頷いてもらえると思います。

 イリアたちの戦闘観においては彼らはほとんど鍛えようのないところまで鍛え上げられています。
 何しろこれ以上レベルが上がらないのですから。(本来のアゼルは別)
 
 しかしエミルの格ゲー的な戦闘観から言えばイリアたちの戦いは素人丸出しであり、「いやいや、性能が良いのは分かったから操作スキルを磨きなよ。」と言いたくなるわけです。


 何故ここまで戦闘の認識の差が生まれたかと言えば、イリアやアゼルの戦いの経験の中に本質的な苦戦が存在しなかったことが影響しています。彼らにとっての苦戦とは「倒すまでの手順に時間がかかる。」であり、「負けるかもしれない。」という感覚がありませんでした。
 
 対するエミルは天才ではありながらも幼少期から戦いに明け暮れており、常に「負けるかもしれない。」苦戦の連続でした。これにより間合いや駆け引き、工夫や直感などの熟練した戦闘観が育ったのです。


 現時点ではエミルに大きく間を空けられてているイリアたちですが、翻せば今後は苦戦を重ねる中で成長の余地が残されているということでもあります。

 強敵と出会うことで少しずつ学んでいく、彼らの今後の変化にご期待ください。

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...