孤独の魔女と独りの少女

徒然ナルモ

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七章 閃光の魔女プロキオン

185.孤独の魔女と移り変わり始めた刻

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エリス達 クリストキントが遊楽街ギャレットにてコーモディア楽劇団の前座を務めてから 早1ヶ月の時が経ちました

早いものですね、この街に来た時は 1日1日が長く感じたものですが、最近では光陰矢の如しに日々が目紛しく巡って行きます

丁度落ち着いてきた機会なので ここらで一つ、纏めておきますね?


コーモディア楽劇団から報酬を頂き パンチさん もといプルチネッラさんからお褒めの言葉を頂いたクリストキントの名は 名も知れぬ三流旅劇団から 何やら噂の面白い旅劇団に格上げされたようです

リーシャさんが己の魂を賭けて作り上げたノクチュルヌの響く光はとても好評であり、ギャレットでの公演も非常に良いものでした、その内容があちこちで広まり名前が売れたようで 次の街に移動するなり

『あんたらが噂の劇団かい?、ちょいと面白そうだから うちの劇場で劇をしてみてくれよ』

とあっさり仕事が見つかりました、しかも一つの街で三件四件も、1日に何度も公演を行うのは初めてではっきり言って疲れましたが、手応えもありました 公演をする都度確実にクリストキントの評価が上がっていくのを感じたからです

もう一つ次の街に向かえばもっと仕事が増えて 次の街に行けば更に仕事が、もう劇団員全員で仕事を取ってきたら とてもじゃないが回らない程に仕事がまいこむようになったんです

ブーム とでもいいましょうか、上演する都度 内容が無限に変わるノクチュルヌは大ウケで 何度も見にくるお客も確保出来てクリストキントは一躍 一端の劇団の仲間入りというわけです

それに街から街へ転々とするお陰で クリストキントを見てみたいと言う人達は尽きることなく 仕事もまた尽きません、そりゃイオフィエル大劇団みたいな凄い人気 ってわけじゃありませんが

場末の酒場の公演を一つとってくるのに精一杯って頃に比べれば かなりいいものであることは間違いありませんよね

仕事を探す時間が無くなった分 忙しくもなりましたが、同時に自由に動ける時間も確保できました、なので ルナアールにまつわる情報の収集にも 集中できるようになったのが一番の収穫ですかね

まぁ、収穫はそこまでで 肝心のルナアールについての情報はどこの街に行っても手に入らなかったのです、伊達に怪盗やってませんねアイツ 情報が全然ありません


さて 統括するとですね、クリストキントの活動はノクチュルヌの響光で安定し、エリスはルナアールの情報を手に入れられないまま 1ヶ月と言う時が過ぎたことになります

でも着実にナリアさんの夢やクリストキントの……




「ふむ…」

そこまで書いて エリスの手は止まる、デティに出す手紙を書いていたつもりだが 気がついたらただの現状説明になってしまった、デティからしてみれば 知らな人や知らない劇団の話なんかされても面白くないですかね

「はぁー、手紙を書くのは一旦やめにしますか」

先程まで書いていた手紙をグシャリと潰して、エリスは馬橇の中簡易的に作った机の前で伸びをする

ほっ と一息、馬橇の外を見る、今エリス達はエトワールの中継街オドリスクに駐屯し この街での仕事を終え明日 この街を発つ為一日かけて旅の支度をしている最中なのです

まぁ、そんな準備の中 クンラートさんから

『最近エリスちゃんは働き詰めだし、偶には休んで羽を伸ばしてくれ、ただでさえこっちから返せる物が無いんだから』

と、お休みを頂き 旅の支度を免除され 今日は一日フリーになったのだ、だから久しぶりにデティに手紙でも描こうかと思ったのだが 最近色々ありすぎて、まるで報告書のような内容になってしまったのだ

まぁ、無理に送る必要はないか、この間まで一緒に居たし、送るのは王都について もう少し息を置けるようになってからにしよう、と ペンを置き魔術筒を鞄にしまう

そういえばこの魔術筒も帝国製だったな 最近帝国製の製品と縁が…いや、今はいいか

「しかし、何をしたものですかね…」

宿代わりの馬橇のゴロンと寝転がる、一日フリーということは言い換えれば一日暇という事、修行なら朝のうちに体を動かしてしまったし…本当なら師匠と模擬戦でもしたいが

「レグちゃん!お人形遊びしよう!」

「またか!?毎日毎日飽きないのかお前は!

くるりと寝転がったまま外に視線を向ければリリアちゃんに付き纏われ鬱陶しそうにしている小さな師匠が見える、師匠があの調子じゃ 模擬戦は無理だな

まぁ、模擬戦をしなきゃ体が鈍るってわけじゃない、勘が鈍りはするが この国はアマルトさんの言った通り 平和極まりない、少しくらい勘が鈍るのもいいだろう、あんまりピリピリしててもあれだし

しかしそうなるとやる事がない

「エリス…本当に趣味がないですね、修行と旅だけで生きてきた弊害でしょうか」

なら演劇の練習でもするか?…うーん、でも休めって言われてるし

仕方ない、暇つぶしがてら このオドリスクの街を歩いてみるかな…

「よっと…」

反動で体を起こし立ち上がり、乱れた髪を手櫛で整えながら馬橇から外へと飛び出る、うう  相変わらず寒いな…

「ん?、あれ?エリスさんどっか行くの?」

ふと、馬橇の中からナリアさんの声が聞こえる、彼はいつものように空いた時間で小道具に使う魔術陣を書いているようだ、こうして行動を共にして分かったが ナリアさんはほぼ毎日 空いた時間で魔術陣を書いている

エリスが毎日魔力球を操る訓練をしていたように、毎日だ…

「ええ、流石にみんなが仕事してる中 暇そうに昼寝は出来ないので、ちょっと街を歩いてきます」

「そんな遠慮なんかしなくてもいいのに…、あ 待って?暖房陣書くよ」

「ああ、ありがとうございます」

そういうと彼はペンを片手にトテトテとこちらにやってきて エリスの裾の裏に暖房陣をさらさら書き込んでいく

凄まじい早業だ…他の人のスピードを見た事ないが、やはり師匠の言う通り ナリアさんの魔術陣の製作速度は異常です

「はい、完成 どう?」

「あーあ…あったかいー…、ポカポカします」

まるで上着がお湯でも吸ったようにポカポカと熱気を放ち始める、やっぱりこれ 凄いよ…エリスもこれ使いたいぃ…

「それは良かった、でもインクで描いてるから、あんまり長持ちしないよ?」

「それまでには戻って来ますよ、それじゃ 師匠お願いしますね」

軽く手を挙げポカポカな陽気を背負って雪を踏みして街へ向かう、本当は師匠も連れて行きたいが、今はお人形遊びで忙しいみたいですしね ここはエリス一人で向かうとしましょう

「ほはぁ…」

白息を燻らせながら歩む…、劇団のみんなは今撤収作業で大忙しみたいで、あちこちで劇団員メンバーを見かける

「団長!もう次の街から公演の予約が入ってます!」

「マジか!、いやまさかここまで勢いに乗るとは…」

「俺達も一流の旅劇団の仲間入りですかね!」

「いやぁどうだろうな…、所詮この流行りは一過性だし、こうやってたくさん舞台に上げてもらえる内に 流行りに乗らなくてもやっていける実力をつけておきたいな…」

ふと、クンラートさん達の嬉しい悲鳴が聞こえてくる、どうやらクリストキントはすっかりブームとなっているようだ、有名な旅劇団とは街に来る前から公演の依頼が来たりする

クリストキントにもそう言う事が起こり始めて団員内にはあからさまに調子に乗る面々もいる、俺達もイオフィエル大劇団やザフキエル王劇団に並ぶ存在になれるかもともうお祭り騒ぎだ

まぁ、そんな中クンラートさんや一部の団員は冷静で居てくれるのが有難い、クンラートさんが調子に乗らず団員達を諌めてくれている間は大丈夫だろう

「ともあれ金銭面に余裕が出来たのは事実だ、今のうちに古くなった道具を買い換えるのもアリだな、もうすぐ王都だ そこで用具を整理しよう」

「団長は真面目ですねぇ、でも 団長が言うなら俺達付いてきます」

一気に有名になったもののクリストキントは健全に運用されていると言える、この分なら 変に暴走することはないだろう…なんて、上から目線で内心語ってみたり

「…………」

チラリと視線を移して見るのは別の馬橇、その中で執筆に勤しむリーシャさんだ、彼女はノクチュルヌの大ヒットを受けて泡食ってたが、直ぐに台本の執筆や新作の製作に取り掛かっている

まぁ、新作の製作には苦慮しているようだが…エリスが気にするべきはそこではない

(…リーシャさん、最近何処に消えてるんでしょうか)

最近、リーシャさんはフラッと消える事が多くなった、コーモディア楽劇団の公演の時も 全く姿を見せなかったし、それからも時たまに消える事がある…何処に行っていたか聞いても トイレだの何だのと誤魔化される

元々ナリアさん達も彼女の行動を掴みきれていない部分があるとはいえ、最近はこう言う行動が多いらしい…、クンラートさんはネタ探しに奔走しているんだろうと言ってはいるが

エリスの勘がざわつくのだ…、まぁ リーシャさんはエリスの友人だ、あんまり疑うような真似はしたくないから、考えないようにはしている、何かをしている証拠があるわけじゃないしね

「ん…お前」

「へ?、あら ヴェンデルさん、こんにちわ」

ふと、余所見をして歩いていると 目の前から声をかけられる、木剣片手に汗で濡れたヴェンデルさんだ、相変わらずエリスの顔を見ると口をへの字に曲げるが…

最近はずっーと一緒に劇に出ずっぱりですからね、嫌いとかなんとか言ってる暇はないんでしょう

「木剣持って 剣の稽古ですか?」

「ああ、次の公演は 絶対オレが勝つからな、覚悟してろよ」

とだけ言うと彼はまた剣を振るいに何処かへと歩き去っていく、最近 ヴェンデルさんは劇の稽古よりも剣の稽古を優先しているように見える

クリストキントの公演は基本 ノクチュルヌの響光だけだ、色々と稽古する必要はない…代わりに毎回エリスとの迫力がの剣撃シーンがある為 剣の稽古は必須なのだが

彼のあれは、エリスに対する対抗心だろうな、今のところ彼がエリスに勝ったことは一度もない、剣は門外漢のエリスですが 今の今まで修羅場に身を置いてきましたからね、得意ではない剣を使い魔術抜きで戦っても 素人にゃ負けません

だからだろうか、負け続け負け続け その都度鍛錬を積んで、最近ヴェンデルさん…剣の腕をメキメキ上達させているように見えます、実戦ではあんまり通用しないでしょうが、流石伸び代ある若者ですね、このままじゃいつか本当に舞台上でエリスが負けることもあるかもしれませんね、エリスもウカウカしてられません 

なんて、ウカウカ休暇を楽しんでいる身では言えませんか

「さて…と」

そんな馬橇の群れの喧騒に背を向け、ポッケに深く手を突っ込み首を縮めてオドリスクの街へを目指す、さてこの街には何があるか、何をしようかなぁ

……………………………………………

中継街オドリスク、名前を見てわかる通り この国の商業的ラインの中継地点に位置する街だ、港から運んだ物を王都へ運ぶ道 或いはその逆にしても 必ず使われる

決められた道以外通り道がないと言われるこのエトワールの路は国の中に蜘蛛の巣が張ったような構造をしている、そしてこの街はその蜘蛛の巣の中央と外側を結ぶ唯一の道に建っている街なのだ

故にこそ、発展している 何処もかしこも美術品ばかり売っているが、ここは違う 普通に品揃えがいい、と言っても結局画材とかのが多いんですけれどね

だから、そう だからエリスがショッピングと称してそこらの店に冷やかしに入っても、面白いものは特にないのだ

「なーんか、無為に時間を過ごしてる気がして 逆に気持ちが疲れますね」

何もせず 何もなく、要件もない そんな虚無に等しい時間をオドリスクの街中を歩く、何にもしない時間とはかくも長いものか…

こう 街を見てみるとやはりこの街も煉瓦のお家に雪が降り積もったスタイル、この国に来た当初は新鮮だったが もう慣れた、いや…違うな

エリス今から悪いこと言いますよ?、もう見飽きた…何処言っても雪ばかりなんですもん、風景としては地味だ

いや、もしかしたらこんな国だから美術が流行ったのかな、せめもの彩をと…いや分からんが

「何かないですかねぇ」

店先に売られている絵筆を適当に手に取り毛先をボーッと眺める、ルナアールの情報を集めるか?、けどなあ どうせないだろうしなぁ、情報さぁ…

「おいあんた、店の売り物で遊ぶなら帰ってくれ」

「ああすみません…」

ふと、絵筆を手にとっているところを店員に見られ怒られる、ジトーッとした客払いの目 いやそもそもエリスは客じゃないですしね、これは悪いことをしてしまった

「すみませんでした、ボーッと」

「まぁいいけど、買わないなら帰ってくれ」

「はい…」

追い払われるように筆を店に戻し、さぁてどこに行ったものか…と踵を返すと

「ん?…これ」

何やら雪の中光る物を見つけ足を止める、何か落ちているなと屈んで雪を払って見ると…これ、ブレスレットだ 金の細工の、綺麗なブレスレットだな、もしかしてさっきの店の商品かな

「あの、この金のブレスレットってこの店の商品ですか?」

店の入り口から店主に声をかけるが、店主は一瞥もすることなく…

「ウチは絵筆しか扱ってないよ」

なんてニッチな店だ…、いや この国なら普通なんだろうな…

いやだとするとこのブレスレット、誰かの落し物か?…と言うかこれ よく見たら金じゃなくて金メッキだ、金にしては異様に軽いし よくよく観察するとちょっとメッキが剥げてる、安物…だろうな

「ん?、あれ?これ…どこかで見たことありますね」

違和感を感じて金メッキのブレスレットを拾い上げる、これ見たことあるぞ …のデザイン、何処かで一瞬見たことがある…どこだ

「あれ?、店主さん 何処かに行かれんですか?」

記憶の中の映像からブレスレットの情報を引き出していると、何やら先程の店主が店終いの支度をしているんだ、この日盛りのど真ん中に店を閉めるなんて…外出だろうか

「んん?、今日は客が来ないし 冷やかしも来るしで日が悪いからねぇ、丁度 昨日、イオフィエル大劇団にコルネリアが来たみたいだし、劇でも見に行こうかとね」

冷やかしですみませんでしたね、しかしそうか この街の劇場にコルネリアさんも来てたのか、旅劇団でもないのにあちこちで劇をしてるらしいし、本当に忙しい人…

…ん?、あれ?

「あ、もしかしてこのブレスレット…」

確か、同じデザインの物をコルネリアさんもつけていた筈だ、もしかしたらこれ コルネリアさんのものか?、だとしたら届けてあげないと…

あんな大スターが純金ではなく金メッキのブレスレットなんかをつけている理由は分からないが、もしかしたら探してるかもしれないしね、落し物を見つけたなら届けてあげるのが義理だ

「すみません店主さん」

「まだ何かあるのか…」

「ええ、イオフィエル大劇団の劇場の場所…教えてもらえますか?」

「ああ、それなら…」

やることが見つかった とエリスのいやな部分がちょっとだけ、喜んだ

…………………………………………………………

オドリスクの街の中心近くに陣取るどデカイ劇場、そこがこの街のイオフィエル大劇団の劇場だ、こうやってこの街を旅するようになって分かった事だが イオフィエル大劇団はこの国の街の殆どに劇場を持っている

もう征服する勢いだ、流石今一番ノリに乗ってる劇団だな…、しかし凄いな エトワール国内だけとはいえ 世界屈指の大国の街と街に自分の劇場を建てるなんて…

いくら酒造で一財産築いてるからってこれは行き過ぎじゃないか?、劇場を建設しそれを運用するなんて 劇場の収益と酒造の収益で賄えるものなのか?

どっからそんな莫大な金が来てるんだ、まさか裏で怪しいことやってるんじゃ無かろうな

なんせ、マルフレッドはナリアさんを手に入れる為チンピラを雇い入れるような奴だ、裏で犯罪組織と繋がっててもおかしくない…、と思ってしまうのは考えすぎか

「さて、ここですか…、相変わらず派手派手な劇場ですね」

ほぇー と見上げる目の前には巨きく聳えるのは派手な劇場 イオフィエル大劇場だ、なんというか 自己主張が強すぎるな

下品とは言わないが…ちょっと派手だ、だって外壁が金だし、下卑た成金みたいな趣味だな、まぁ そんなキンキラキンのフォルムだからか 非常に目を惹く

「しかし…、来たはいいものの、これどうしましょう…劇団の人に渡せばいいんでしょうか、でももし違ったらあれですしねぇ」

金メッキのブレスレット片手に劇場の前でウロウロする、これがコルネリアさんの物だとするなら 手渡し出来るのが一番だけど、けどさ あっちは大スターだよ?

ブレスレットが落ちてたよー?なんて言って近づける相手じゃない、舞台裏にこっそり忍び込むくらいなら訳ないが、それでコルネリアさんから不審者扱いを受けたら終わりだ

出来れば法に触れないでおきたい、しかしそうなると…ううむ、存外に面倒だぞ

「どうしたものか…、ん?」

ふと、足を止め 目を劇場の脇に向ける、周りの人集りは気がつく様子はないが、エリスの耳は確かにそれを捉えた、人混みの喧騒の奥で言い争う声を…

これは、劇場の裏からか?、誰かが喧嘩でもしてるんだろうか、なんて特に考えもせず劇場に殺到する人達の海を抜けて劇場の脇へと入り込み 裏手に回る

『ーーーっ!っっーー!!』

うん、誰かが言い争っている これは男の女だ、それが結構な剣幕で言い争ってるな…、と 劇場の脇に隠れて様子を伺う、別に止めに入りわけじゃないが…やっぱ気になるし

『何を考えてるんだ!コルネリア!もう公演が目の前なんだぞ!』

…ん?コルネリア?というか、この声 マルフレッドか!

『お願い、マルフレッドさん…その手を離して!』

『そうは行くか!商品が勝手に持ち場を離れるな!!』

こっそり 劇場の脇から顔を出して 裏手で言い争うその姿を確認すると、やはり イオフィエル大劇団の支配人マルフレッドと大スターのコルネリアさんが言い争っている

何処かへ行こうとするコルネリアさんをマルフレッドが止めている という図か?

『まだ公演まで一時間はある、ほんの数分抜けるだけだから…、それに 本当ならもう今日は公演はないはずでしょう!、話が違うわ!』

『金がいるんだ!まだまだ!、それにな!お前が勝手に街に出ればそれだけでお前の希少価値が下がるんだよ!、お前はうちの商品だ!勝手に価値を下げるな!』

凄い暴論だな、雇用主故に雇っている役者のスターとしての価値を守る為 なんて建前があるにせよ、言い過ぎだ 、おまけにあんな強く手を握って、コルネリアさんの手に痣が出来たらどうするつもりだあのデブちんが

止めに入るか…?、いや完全に部外者のエリスが割って入っても問題が一つ増えるだけか?

『私には…、自由に外出する権利もないの?、もう休みなしで何ヶ月も公演ばかり、それも予定にない物や連携のとれない劇団とばかり、もう…私だけじゃ誤魔化せないわ』

『馬鹿を言うな!、今お前に稼いでもわらねば困るのだ!、もう期日も迫ってる…彼の方を怒らせたら、私もお前も終わりだぞ!』

ん?、彼の方?誰だしかしこの国随一の商人である彼が恐れる相手なんて、いるのか?…

『そんなところから返すアテも無いのに借りる方が悪いでしょ!』

『そのアテを作るのがお前の仕事だと言っているんだ!、それにな…いいのか?コルネリア…、ユリアがどうなっても』

『ッ…!?、あの子は関係ないでしょう!』

『いいや?、あの小娘の命を握っているのが誰か もう一度考えるんだな、それでも行きたいと言うなら …ハッ!好きにするがいいわ!』

そう言いながらマルフレッドはコルネリアの手を乱雑に引き倒し手を離す、なんて乱暴な奴だ、それに…今なんと言った?ユリア?小娘?、命を握るなんて 穏やかじゃない話だ

まるで、人質のような言い方だが…

『あの貧乏劇団からお前を買い取った時点でお前の身は私の物になったのだ、勝手を言うな!』

『うっ…うう、ユリア…』

さめざめと泣くコルネリアさんを置いて、乱暴な足取りで戻っていくマルフレッド…、劇団の花形に対する態度じゃないなあれは、いや そもそも婦女子に対する行いじゃない、あんな傍若無人な…

しかし、どうしよう…声かける?なんて?、立ち去る?泣いてるあの人を置いて?、どうしよう…

「っ…」

『はっ!?誰っ!?誰か見てるの!?』

やべっ…、逡巡するエリスの足が無意識に雪を踏みして 湧き出た物音に反応してコルネリアさんが涙で晴れた目をこちらに向ける

バレた…どうする、盗み聞きしてましたって言う?…あ!、いやそうだ!ブレスレット!

「あ…あのぉう…」

金メッキのブレスレットを握りしめおずおずと物陰からゆっくりと顔を出せば、コルネリアさんは一瞬 『誰?』と言う顔をするも、直ぐに思い出したのかはたと明るい顔を…するわけなく、『よりによってお前か…』と言う嫌そうな顔に変わる

「貴方、クリストキントの…、敵情視察に劇場の裏側まで見に来たの?、随分仕事熱心ね」

「いえいえ、別に視察とかに来たわけじゃありませんよ、そもそもコルネリアさんは敵じゃありませんし」
 
「はぁ?、ハッ!最近人気出てるものね!、私なんか敵じゃないって?」

「そう言う意味じゃありませんよ、同じ役者に敵味方もないって意味で…」
 
「どうだか…!」

この人こんな人の話聞かない人だったか?、前会った時はもっと余裕ある人だと思ったけれど、いやまぁそうか

人に優しくするには自分に余裕がないといけない、どんな優しい人も余裕がない時にまで他人に優しくは出来ない、それが出来るのは限られた聖人だけだ…そんな聖人然とした態度を他の人に一方的に求めてはいけない

彼女も今は余裕がないんだ、涙で赤く腫れた目それを物語っている

「クリストキントのサトゥルナリアとエリス、最近随分人気みたいね…」

「いやまぁおかげさまで…」

「お陰でマルフレッドはいつもカリカリよ、利益が奪われたってね、その皺寄せが来る側にもなってほしいわ」

そりゃ悪いことした、けどこっちだって必死なんだ、他の劇団の事まで慮れる程良い身分ではない、まぁ だからと言ってそんな言い訳 コルネリアさん達には出来ないわけですが

「で…、盗み見は楽しかったかしら?」  

「すみません…、でも本当に盗み見するつもりはなかったんですよ」

「じゃあ何しに来たのよ」

「えっと、そのぉ さっき街を歩いていたら、これが落ちてるの見かけまして」

と取り出すのは金メッキのブレスレットだ、チラリとコルネリアさんの腕を見れば、確かに以前つけてきたブレスレットがない とするとやはりこれは

「このブレスレット、以前コルネリアさんがつけられていたのと同じデザインですよね、もしかしたらコルネリアさんが落としたのかと思いまして届けに…」

「それ!私の…!、ああ 拾ってくれたの!?」

するとブレスレットを見るなりガバッと!エリスの手に食らいつくように掴みかかり、ブレスレットを手に取る、よかった やはりコルネリアさんのものだったか…

にしても、よほど大切なものなのかな…、コルネリアさんは受け取ったブレスレットを愛おしそうに抱きしめている

「よかった…見つかって、これが無いと私…」

「やはりコルネリアさんのものだったんですね」
 
「ええ、そうよ…これを探しに行かせて欲しいとマルフレッドに頼み込んでいたところだったの、結局許可されなかったけど…、嗚呼 よかった拾ってくれて」

ああ、今の言い合い このブレスレットを巡る言い争いだったんだ、マルフレッドだってこのブレスレットが大切な事くらい把握しているだろうに 無碍にする事ないだろう

少なくとも、自分の劇団で活躍するコルネリアさんの精神状態のケアも彼の仕事の一つだ

コルネリアさんを商品だと声高に言うなら その商品の手入れは商人の仕事だ、それを無視して蔑ろにして 目先の利益にばかり釣られる、良い商人とは言えまい

「拾えて良かったですよ、本当に」

「ええ、ありがとう…、私の宝物を拾ってくれたのに冷たい態度取ってごめんなさい…」

いやあれはエリスも良くなかったですし…

「それ、宝物なんですか?」

「…そうよ、妹がくれたものなの」

「妹?…」

「さっきの話聞いてたらわかるでしょ、私の妹 ユリアが私のためにってくれたの」

ああ、さっき言ってた…、ユリアって妹さんだったのか、余程大切にしてるんだろうな ブレスレット同様、いやそれ以上に 妹さんを

「あの、そのユリアさんって…」

「勘違いしないで 形見じゃない 生きてるわ、多分ね」

「多分?、妹なのに?生死が分からないんですか?」

「うん、…まぁ ブレスレットを拾ってくれた恩もあるし 身の上話でよければ聞かせるけれど…」

「お願いします」

まぁ生きてるのは知ってた、だって死んでたら命を握ってるなんて言わないしね、けど そんな大切な妹の命がマルフレッドに握られ、剰え生死さえ分からないなんてのは異常だ、よければお話を聞きたいと頷けば コルネリアさんはブレスレットを手に嵌めて

「私とユリアは幼くして両親を亡くしてね、私が劇団員として働いてなんとかあの子を育ててたんだけど…、私の働いてた劇団は貧乏で とても大きくなるあの子を育て切れる気配がなかったの、そこを 大金で私を買い取ってくれるって言い出したのがマルフレッドなの」

「あら、いい人っぽいですけど…マルフレッドさん そんな慈善家みたいなことしてるんですか?」

「そんなまさか、私の実力を金で買っただけよ ユリアの事を知ったのはその後、そして ユリアの事を知るなりアイツはユリアの面倒を見ると言い出し私から引き離し…、今じゃ 私に命令するときはいつだってこう言うわ 『ユリアの命を握ってるのは私だ』なんてね」

それじゃ…人質みたいじゃなくまるっきり人質じゃないか、コルネリアというスターを馬車馬のように働かせる為 大切な家族を引き離し、それ使って無理矢理コルネリアさんに言うこと聞かせてるなんて

許される話じゃない…、でも コルネリアさんにはどうすることもできないから 休みなしで何ヶ月も連続で劇をさせたり あちこちに飛ばされたり、普通じゃ考えられないような扱いを受けてるんだ

「ユリアを助けてくれたことは恩に感じてる、けれど…一目会いたいわ、無理だろうけどね」

「そんなの…、許される話じゃありませんよ!、そんなに大切にしてるのに!」

「いいのよ、…今の状況には確かに不満があるけれど、私が我慢すればそれで済む話だし、何より 私が我慢し続ける限り ユリアはいい暮らしが出来るはずなの、少なくとも 両親のいない 隙間風の入る小屋で二人身を寄せ合い寒さに耐える生活よりも…いい生活がね」

だから同情も助けもいらないわ といつものようにクールな風格を取り戻すコルネリアさんだが、…けど 分からないんですか?そんな無茶な我慢を続けてたら コルネリアさんの方が潰れてしまう

マルフレッドにはコルネリアさんの状態など慮る心などない、コルネリアさんが潰れたら そのユリアちゃんだって用済みとばかりに雪原に放り出しますよ…

「じゃあ、もう外に出る用事もなくなったし 私は劇場に戻るわ」

「でも…」

「確かに、マルフレッドはいい人間じゃない…けどね、私はユリアを幸せにするためだったら 何処でだって なんだってするわ、そしてユリアのために働くなら これ以上の場所はない、だからこれでいいのよ」

「……そうですか」

「そう…そうなのよ、じゃあね ブレスレット拾ってくれてありがとう、このお礼はいつかするけど」

けど というとコルネリアさんは踵を返し劇場に向かいながら、こう続ける

「役者として 劇団としては、手を抜かないつもりよ?クリストキントのヒーローさん?、ウカウカしてたら 叩き潰しちゃうかもしれないから、頑張りなさい」

ね?と目だけをこちらに向けるコルネリアさんの眼光は、まさしく舞台の頂点に立つスターのものだ、なるほど…そうですか、それはそれこれはこれですか 望むところですよ

「はい、クリストキントもいつかイオフィエル大劇団のような凄い劇団になりますので、その時は また見に来てください」

「フッ…貴方は本当に…」

そして、コルネリアさんはやや困ったように笑いながら劇場へと消えていった

確かに、マルフレッドの下で働くというのは 不満や不安が多いだろう、けど それに折れるコルネリアさんではないのだ、折れないから スターなのだ

けど…、一人 劇場の裏に取り残されたエリスは思う

けどねコルネリアさん、スターだって人間です、折れない人間はいないんです…、エリスは役者の端くれとして貴方を尊敬しています、だから 何かあったら その時は

「はぁ、そろそろ暖房陣も消えかかってきてますね、戻りますか」

白く息を吐きながら肩を竦める、何にせよ 今エリスが出来ることはない、出来ることがあるとしたら コルネリアさんが困った時、また手を伸ばすくらいのことそれは今ではないのだ

パンパンっと上着を叩き、再びポッケに手を突っ込んでエリスは街を後にするべくその場を立ち去る

…コルネリアさんやイオフィエルにも事情が色々あるんだな、けれど マルフレッドはどうしてあんなにも金を求めるんだ、どうしてナリアさんの身を何が何でも手に入れようとするんだ

マルフレッドという男の纏う 一抹の影に、何やら不信感を持ちながら 再び、エリスは歩き出す

何にせよ、今は別の目的がある…、王都は目の前だ このままドンドン進んで、ヘレナさんと合流し、再び相見えようじゃないか…ルナアールと!

勿論、劇団としても頑張りながらね?



王都は…、エリスの戦いの舞台は 近い

………………………………………………………………………………

エトワールの とある街に…音が響く


ザリ…と、重たいそれが 雪の下の地面を擦る

「ねぇアグ兄?」

ザリザリ…と、それを引きずりながら雪の積もる街の中 一本の線を残しながらそれは歩く

「ねぇねぇアグ兄アグ兄?」

ザリザリザリ…と、引きずりれ雪に後を残す重厚なそれに巻きつけた鎖を 肩で背負い、ゆっくりながらも着実に前へと男は進む

「ねぇねぇねぇアグ兄アグ兄アグ兄ーーっっ!!!」

「やっかましいぞ!イグニス!」

キレる、アグ兄と呼ばれる男は声を荒げ 自分の周りをピョコピョコウロウロするイグニスという少女に激昂を示す

「だって返事してくれないんだもん!!!」

「何度目だイグニス、俺にまだ聞きたいことがあるのか」

その光景を一言で言い表すなら 『異様』だ

何が異様と?、全てだ

アグ兄と呼ばれる男と軽快な少女の見た目、それは 常に雪の降り積もるこの国では見慣れない 褐色の肌、男も女も 揃って浅く焼けた褐色の肌とやや灰色がかった髪色をしている、こんな見た目の人間 エトワールにはいない、見るからに他国の人間とわかる

が、他国の人間なんてこの国には山ほどいる…、一番異様なのは…

「だって暇なんだもん!」

「これを運ばなきゃならんから…俺は今忙しい」

男が後ろに目を向ける、男が懸命に鎖で巻いて引っ張っているのは 棺桶だ、死人の入るそれだ、それを鎖でぐるぐる巻きにして 一人で引っ張っているんだ

雪に続いた跡を見るに 街の外から 丘の向こうから…ずっとずっと 引っ張って来ているのだ、重厚な棺桶を一人で、永遠に…

「大変だねアグ兄!」

「大変も大変だが、所詮俺たちはこれの運び屋でしかない…唯一の職務だ 何が何でも果たさねばならない、あとあまり騒がしくするな、知ってるだろう 今寝ているんだ、この中で…彼の方が」

イグニスもまた棺桶に目を向ける、棺桶は本来死人の入るものだ…が、アグ兄は言うんだ この中で人が寝ていると

今 この棺桶には生きた人間が入っている 、それも 起こすとマズい者が

「そっかそっか、起きると大変だもんね 寝起き悪いし」

「ああ、昼間に寝て 夜に起きるというのは生きづらい体質だが、それ以外欠点らしき欠点が無いからな…この人は」

「昼夜逆転ってやつ?」

「この場合は夜行性だ」

するとまるでやかましいとでも言わんばかりに棺桶がグラリと揺れる、どうやら今の言葉が気に障ったか 或いは単純に起きかけたか、どちらにせよ 静かにせねばなるまい

「でも寒く無いのかな 棺桶の中って言ってもさ、この雪だよ?」

「寒いだろうな、だから早く 目的地に着かねば…」

「うんうん、早く行こうよ!…でさ 王都ってもうすぐ?」

「まだまだだ、あと数ヶ月は最低でもかかるだろうな」

「うぇー…」

そっかとやや声を潜めながらイグニスは囁く、そうだ 目的地はまだまだ先だ、この雪降る国の果て 目的地である王都はまだまだ先だ

その果てなき旅路を超えて 二人はひたすら進んで行く、灼炎紅蓮の兄妹はただ進む、ある一つの目的を果たす ただそれだけのために……






「おい、あの二人…、あの珍しい褐色二人…」

「あ ああ、何者なんだ、あいつら」

そんな二人を見送るように エトワールの街人達はコソコソと話し合う、見慣れぬ風体 異様な棺桶、いやでも目を惹くその存在を不気味がるように

「あいつらよ、今 向こうの雪原から歩いてこなかったか?」

「え?、それがどうかしたか?」

ふと、街人の一人が青い顔をしながら二人を指差す、確かにあの二人は今 街の向こうの雪原を超えて来た、それは棺桶を引きずった跡が物語っている

しかし

「いやいや、おかしいぜ…だって徒歩だろ?」

「だから、それがどうかしたかって!」

「いや、だって…」

そういうと青い顔の街人は彼らが来た方向をゆっくり指差すと

「だって…向こうの雪原は昨日までとんでもない吹雪が吹いてたんだぞ…、その中突っ切って歩いて来たのか?、平然と…」

その言葉を聞いてゾッとする…、あの二人は エトワールの自然の猛威である吹雪を物ともせず馬橇や行商すら通らない道なき雪原を徒歩で…、しかも吹雪の中進んで来たのだ

人間業じゃない、人間に出来る筈がない そんなこと、だとすると…だとするとあの二人は一体何者で なんなんだ

街人達はゴクリと固唾を呑む、何か とんでも無いものを見てしまったのではないかと、いや違皆感じているのだ

もしかしたら、この国に とてつもない 何かが入り込んで来たのでないかと…

………………………………………………………………

そうして、もう一度 所変わる、エリス達クリストキント旅劇団、棺桶を引きずる謎の兄妹、そしてもう一組 エトワールの王都 アルシャラを目指す者達がいる

「……………………」

場所は白峰の境界と呼ばれるエトワール国内に存在する山岳地帯、冷たい風の吹き荒ぶ岩山の中腹で 遥か先にある街々を見下ろす影がある

「ここが、エトワール…始めて来ますが、こうも景色が変わるものですか」

風に揺れる髪を手で押さえながら寒さで赤くなる手で革の鞄を握りながらほうと呟く

「魔女の加護があって尚この寒さか、或いは魔女が姿を消しているからこその寒さか、とてもとても気にはなりますが 確かめる術はないでしょう」

それが見つめる先はただ一点、ここからでは見えないほど遠くにある王都アルシャラ、或いはそこにいるであろう人物

「姫騎士ヘレナ、閃光の魔女の弟子を名乗る人物、先ずは彼女に会うべきでしょうかね…、彼女には聞きたいことがいくつかありますし」

「おーい!、いつまでそんな崖っぷちにいるんだよ!危ないからこっち来い!」

ふと、背後から響く声にそれははたと髪を揺らして…

「そんなに慌てなくてもいいじゃないですか、…どうせ目的の居場所は分かってるんです」

「分かってるなら早く向かうぞ!」

「いいえ、もう少し泳がせます」

「はぁ?、なんで」

なんでと聞かれても と肩を竦める、相変わらずの低脳ぶりだ 少し考えれば分かる事だろうに

「そんなの決まってるでしょう?…」

チラリと見るのは雪の果て、恐らく目的の存在がいるであろう場所

「試すのです、その力をね…我等の敵になり得るか 味方になり得るか、それを確かめるんです」

そういうと共に背後の声の主を置いて 崖側を歩いて先にそそくさと向かってしまうそれを見て、彼等は舌打ちをする…


エリスの他に動き出した別の存在達、現れたそれらの存在は エリスのエトワールでの いや、このディオスクロアを駆け抜ける大いなる旅を、ある一つの方向へと収束させていく

強大な二大勢力の間で進むエリスは、翻弄されるか はたまた 翻弄するか、それは未だ誰にも掴めぬ未来でしかなかった
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