この醜悪な世界に咲いた、一筋の光を。

蒼紅

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誘い

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「ねね!明後日の日曜暇ならどこか遊びに行こうよ!」
 その提案は、僕にとってこれ以上ないほど魅力的だった。ぼっちで、虐められてばかりいた僕が、休日に誰かと出かけることができる。
 みんなにとって当たり前のことが、僕にとってはとても新鮮なものなのだ。
 ……だけど。
「……嬉しいけど、僕なんかと遊んでも楽しくないと思うよ」
 僕は、今までの経験から、すっかり自分に自信がなくなっているのだ。
「そんなことないよ、さっきまで一緒に帰ってた時でも会話続いてたし楽しかったじゃん!どうせ優晴くんのことだから用事も無くて暇でしょ?」
 半ば強引に決定されてしまった。だが、それがありがたかった。僕は先ほどのように掴めるチャンスを自ら潰すことが多くあったのだ。
 だからこそ、チャンスを押し付けてくれた結華に心の中で感謝した。
 結華はそのまま背を向けて帰ろうとしたが、思い出したようにくるりと振り返る。
「あ、ライン交換しとこ!いろいろ連絡したいし」
 そして、家族以外から連絡が来ることはなかった僕のLINEの通知は、結華という1人の少女のスタンプによって鳴らされるのだった。
 
 土曜日は惰眠を貪っただけで一瞬にして過ぎ去り、迎えた日曜日。
 おしゃれに気を使ったりもしたかったが、選ぶほどの服がなかったのでTシャツにジーンズという某起業家のような格好で外に出た。
 彼女は病気のせいで午前中は体調が悪いことが多いため、それを考慮し集合時間は13:00で、ご飯を食べて集まることになっていた。
「あっつ……」
 家のドアを押し開けた瞬間、僕を出迎えたのは熱気だった。梅雨に入る前の快晴の恐ろしさを思い知り、思わず唸る。
 灼熱に体力を削り取られながらも駅のホームまで歩を進め、逃げるように電車に乗り込んだ。
 10分ほど電車に揺られて、県内で最も栄えている都市で降りた。改札をくぐると、慣れない都会の喧騒が渦巻いている。こんな性格の僕はこの都市部に赴くことは滅多にないので、久しぶりの都会の空気にしばらく圧倒されていた。
「ちょっと早すぎたかな」
 時間まであと20分ほどある。ずっと外で待っていると暑さで気が狂いそうになるので、近くのコンビニに寄った。外の熱気とコンビニのクーラーのコントラストを堪能し、ペットボトルに入った水だけ買った。
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