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【ジーク】俺じゃ頼りないか?
しおりを挟むあの時のコハクの「ジークお兄ちゃん」発言は驚異的な可愛さだった。また聞きたい。
「ジークお兄ちゃん大好き~」と抱きつくコハク、可愛い!
「ジークお兄ちゃんのいじわる」と頰を膨らまし拗ねるコハク、凄く可愛い!!
「もう、許してジークお兄、ちゃんっ」と啼くコハクーーって俺は何を想像してるんだ!!
危ない、いけない扉を開くところだった。
「おい、ジーク聞いてるのか?」
「す、すまない何の話だったか」
「いや、だからコハクに護衛を付けようと思うがどいつがいいだろうか、と」
フレイヤ様の言葉を受けての提案だろう。
シェーンハイト様とフレイヤ様が暮らす離宮から帰って来てからも、コハクはまだ体調が良くないのか、夜になっても眠ったままだ。俺たちはベッドの上で寝ているコハクを挟んで気持ち小さな声で話をしている。
「アレクとグレンでいいんじゃないか?」
二人は俺の直属の部下でコハクに危害を与える事はないだろうし、先の件で俺たちがどれ程コハクを大切に思っているか十分に理解出来たはずだ。
二人の名前を出すとあからさまに嫌な顔をするクシェル。
「ルークを付けるわけにはいかないし他に適任がいないだろ?」
ルークはクシェル付きの護衛兼秘書だからな。
「それにいきなり面識の無い者を付けられたらコハクが不安に思うだろ」
「そ、それもそうだな」
次の日の朝無事にコハクが目を覚まし、早速護衛の件を伝えるべく俺も一緒に執務室へと向かう。
「今日はジーク様も一緒なんですね」なんて嬉しそうに笑うコハク、可愛い。
しかし、「お兄ちゃん」とは呼んでくれなかった。何故呼んでくれないのだろう。あの時はあんなに嬉しそうに呼んでくれたのに。
「あー…お兄ちゃんとは呼んでくれないのか?」
そう尋ねると、コハクは赤くなりながらアワアワとあれはその場の勢いで言っただけで、忘れてくれと言う。
忘れられる訳ないだろ!
しかし、この反応からしてこれは「お兄ちゃん」と呼びたくないのではなく、ただ恥ずかしいだけ?なら、押せば呼んでくれるのでは?
「可愛かったのに…もう呼んでくれないのか」とあえて悲しげに呟く。
我ながら少しわざとらしかったか?
コハクは戸惑いつつ、頑張ってお兄ちゃんと呼んでくれようとした。
しかしタイミング悪くあいつらがドアを叩く。それにビックリしたコハクが途中で言葉を止めてしまった。
あいつらが悪いわけではないとは分かっているがつい睨んでしまう。
それにしてもコハク、押しに弱すぎるだろ!いや、それがコハクの優しさ故だというのは分かっているがーー
自分の行いを棚に上げて、コハクの事が心配になった。
一通り敷地内を案内し終えると丁度昼時になり、執務室に戻り昼食を取る。
昼食後直ぐに、外出していた時溜まっていた仕事を夕食前までに終わらせるため、仕事場へと急ぐ。すると、部屋を出る際にコハクに呼び止められる。
「忙しいのに、すみませんでした」
そして、申し訳ないと頭を下げる。
「いや、俺がやりたくてやった事だ気にする必要はない」
コハクの案内を他人に任せる事は出来ない。昼食だって俺がコハクと共に取りたかったからそうしただけで、コハクが気を落とす必要はない。
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
最後にコハクをひと撫でして部屋を後にした。
結局その日は「お兄ちゃん」呼びは叶わなかった。まぁ、あまりこちらから言い過ぎて余計に呼びづらくなっても困るし、焦らずに慎重に!そう自分に言い聞かせた。
次の日、コハクは朝から今までになく寝起きが悪く、寝ぼけてクシェルに抱きつくほどだった。
コハクの寝起きが悪いのはいつもの事だが、これほど悪いのは初めて見た。朝食の時もどこかボーとしていて、見送りの時も眠たそうに目を擦っていた。
どこか体調が優れないのだろうか……
俺はそんなコハクが心配で、その日は急いで溜まっていた仕事を終わらせると、部下に稽古をつけに行くこともなく執務室へ急いだ。
すると、執務室はガランとしていて、隣の部屋が何やら騒がしい。
少し嫌な予感がする。
「何かあったのか?」
中を覗くと考え込んでいるルーク、壁際で真っ青な顔で床を見ている学者、険しい顔でコハクを凝視するクシェル、そして困った様に俯くコハクの姿があった。
本当に何があったんだ。
「あーそれが、コハクから血の「ジーク様いい所に!」
コハクは俺に気づくとパッと顔を上げ、何かを願う様に上目づかいで俺を見る。
可愛い、今すぐ抱きしめたいっ……じゃなくて!
「アレが来たみたいなんです」
アレが来た?アレって何だ?
コハクの手は下腹部に添えられている。お腹が痛いのか?いや、ただの腹痛ならこんな騒ぎにはならないだろう。
きっとアレとはコハクが俺たちにはっきりとはいえない事……そして、クシェルやルークには理解出来なかったもの。
コハクのこの目は俺なら「分かってくれるよね」という期待の目!俺は今コハクに期待され、頼りにされている!ーー考えろ!俺!
手がかりを探るべく部屋に入って来てからの記憶をたぐる。
そういえば、クシェルが何が言いかけていたな、確か「コハクからちのーー」…血か‼︎
「……あーアレか」
コハク(女の子)が俺たち(男性)には言いにくくて、お腹が痛くて、血が出るものと言えばアレしかない、月経だ。
今はクシェル以外には分からない程度の血の匂い、始まりかけか。本格的に始まる前で良かった。
クシェルは心配のし過ぎで今にも倒れそうなほど血の気が引いている。
この様子じゃあ本格的に始まったら当人以上にダメージを受け慌てふためき、返ってコハクの負担になりそうだ。
ーーそれに、あの日が近い。
俺は急いでコハクをクシェルのもとから離すべく、俺の部屋へと運んだ。
王妃室はクシェルの部屋と同じ階だからな。それではいざという時コハクをクシェルから守れない。
コハクに余計な負担がかからないように背中と膝裏を持ち上げるように横向きに抱き上げると、コハクは真っ赤になりながらも抵抗する事なく俺の腕の中に収まってくれた。
ーーコレは良いな!すごく良い!
俺の腕の中にスッポリと簡単に収まってしまうコハク。片手ではなく、両手でしっかりと抱き抱えることによりコハクの温もりと重みを腕いっぱいに味わえて、すぐ近くで可愛いコハクの顔を堪能することができる。
更にコハクは俺の服を掴み身を任せてくれた。
可愛い!クシェルが頼りにならない今、コハクが頼れるのは俺だけだ。
俺は自然と緩みそうになる口元を必死で引き締めた。
夕食の時間になるとコハクはベッドから出るのも辛そうだ。枕元に腰を下ろすと、俺でも分かるくらいの血の匂いがした。本格的に始まったようだ。
「コハク大丈夫か?」
眉を寄せて背中を丸めて横たわるコハク。
頭を撫でると眉が少し緩み、助けを求める様な目で俺を見る。
相当辛いのだろう。小さな体をさらに小さくして必死に痛みを耐える姿は見ているだけでも辛い。代われるものなら変わってあげたい。
しかし、俺はただ見守る事しかできない。
「ゔーお兄ちゃ~ん」
頭の中で自分の不甲斐なさを嘆いていると、コハクの甘えた声が聞こえた。
しかも、お、お兄ちゃんと言ったか⁈
驚きの顔をそのままにコハクを見るとバツが悪そうに布団の中へ潜ってしまう。
「す、すみません今のはなかった事に」
するわけないだろ!てか、出来るわけない!
もう一度ちゃんと聞きたい。
というか、コハクも本心では今みたいに「お兄ちゃ~ん」と甘えたいのでは⁈
コハクは一人っ子で甘えるのに慣れていないから、どうしても恥じらいの方が勝ってしまい、素直に甘えられないだけなのかもしれない。
俺は、ひと押しすべくこの間と同じ手を使う。
「俺じゃ、頼りないか?」
耳元でわざと弱々しい声を出す。すると慌てて布団から顔を出して俺は頼りなくないと、これ以上迷惑はかけれないと言うコハク。
迷惑?確か、婚約(仮)の時も同じ様なことを言っていたな。
コハクに甘えられて迷惑なんて事は無い、むしろ…
「俺はもっとコハクに甘えて欲しい」
素直にそう伝える。しかしコハクは首を縦には振ってくれない。何故そんなに頑ななんだ?
だが、俺もここで引き下がる気は無い!
俺は更に弱々しくコハクに訴える。
「やっぱり俺じゃコハクのお兄ちゃんには、なれないか?」
すると慌てて首を横に振り俺の事を「優しくて頼れる理想のお兄ちゃん」と言ってくれる。
思わずニヤけそうになる口元を引き締めて一気に畳み掛ける。
「ダメ、か?」
クシェルの件と今回の件で確信した!コハクはその優しさ故に、弱った表情に弱い。極力それに応えようとしてくれる。
「ーーっダメじゃ、ない」
だから、頰を真っ赤にして目を逸らしつつも小さく頷き応えてくれる。
「コハク、呼んで」
最後の一押し。
今度はあえて熱のこもった声で耳元で囁く。
すると、コハクは頰だけでなく、耳や首筋まで真っ赤にして潤んだ目で一瞬俺を見ると再び目を逸らし覚悟を決めた様に一呼吸おいて、なんとか「ジーク、お兄ちゃん」と言ってくれた。
その声は小さく、震えていた。
ーー可愛い、震える程恥ずかしかったのに俺のために頑張ってくれたのが凄く嬉しい。
しかし、そんな可愛い姿を見るとつい、イタズラしたくなる。もっと恥じらわせてやりたくなる。
俺は聞こえなかったフリで、今度は強制的に目を合わさせて「もう一回」と告げる。
コハクはハクハクと何度か声にならない声を上げ、目には涙がにじむ。
マズい少し追い込み過ぎたか…コハクに謝ろうと思った時
「ジークお兄、ちゃん」
今度は目をそらす事なくしっかりと俺の目を見て呼んでくれた。
ッグ、マズい、か、可愛い過ぎて…
顔を真っ赤にして目を潤ませ上目使いで、切なげに眉をハの字に寄せたその表情はまさに俺が想像(妄想)した表情そのものでーーマズいところに熱が集まるのを感じた。
「ちゃんと言えたな、コハクは良い子だな」
なんてなんでもないフリで、良いお兄ちゃんヅラでいつものように頭を撫でると、コハクはへへと褒められて照れる子供の様に笑った。
可愛いっっ!!
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