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決意
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帝級攻撃魔導士‥‥‥?
前に姫様から聞いたことがあるぞ。
魔導には、治癒魔導か攻撃魔導、防御魔導の三つあり、また、魔導の強さによって、初級、中級、上級、帝級、皇級、神級に分けられるって確か言ってたっけ‥‥‥。
そんな強い人を追っ手に寄越したのか王宮は‥‥‥。
狭い路地に逃げ込んだことがアダになった。
前は、胸の大きい上級魔導士、後ろはロリッ子帝級魔導士。
どうあがいても逃げれそうにない。
僕の人生は二度目の終了を告げそうです。
挙動不審にアタフタする僕を、微笑ましそうに見ながらソイニーは尋ねた。
「少年、君はアスカ・ニベリウムかな?」
もうすでに名前がバレている。
これは、もう追っ手確定である。
このまま僕はまた、あの暗い牢獄に戻されるのであろう。
僕は、もう逃げ切ることは無理だと観念し、白状した。自分がアスカ・ニベリウムだと。
「良かった、ちゃんと見つけられて。
横浜領に突然、荒々しい魔導が現れたから、もしやと思ってきてみたら、ビンゴだったみたいね」
ソイニーという女性はやっぱり僕を探していたようだ。
「アスカ、ソイニー師匠はすごいんだよ。微力な魔導でも追跡できちゃうんだ」
何故か、ユミという女性が誇らしげに語っている。
まあ、そんなことはどうでもいいんだ。
さっさと連れて行ってくれ。
「じゃあ、行きましょうか」
そういうと、ソイニーとユミは僕の手を2人で引きながら歩き出した。
僕はなされるがまま、2人に付いていった。
10分ほど歩いた後だろうか、ソイニーとユミは歩みを止めた。
下を向きながら歩いていた僕が、顔を上げると、目の前に一軒家が建っていた。
何だか予想していたことと違う。
もっと禍々しい監獄のような場所に連れて行かれると思っていたのに、ほのぼのアットホーム感溢れる場所に連れてこられてしまった。
「どうですか、アスカ? ここが今日から貴方が住む場所です!」
ソイニーは満点の笑みで、ふわふわな髪を大きく揺らす。
「え? どういうことですか?」
状況が全く飲み込めない。
ソイニーとユミもアスカが何故戸惑っているのか理解できないようである。
すると、ソイニーが、手を頭に当て、何かに気づいたかのような素振りを見せた後、口を開いた。
「もしかして、シルベニスタから何も聞かされてないんですか?」
シルベニスタ‥‥‥
そう、僕を牢獄から逃がしてくれた人である。
ソイニーからシルベニスタの名が出てきた。
ようやく僕もこの状況が理解できそうだ。
「あの人、いつも言葉足らずなんですよね、全く。
ごめんなさいね、知らないなら戸惑うことも無理ないですね。
私は、ユーリ・シルベニスタから貴方を保護して欲しいと、言伝を預かったので、探し回っていたんですよ。
良かった、横浜の方に逃げてきてくれて。
そうでなければ、一生見つからなかったかもしれません」
ソイニーは僕の目線の高さまで、屈んでから、僕の頭を撫でた。
「そうだったんですね、じゃあ、2人は追っ手ではないのですね?」
「追っ手とかじゃないですよ。安心してください。貴方を守る人たちなので。ささ、夕ご飯にしましょう。準備しますので、ユミさんアスカさんをお願いしますね」
「は~い、わかりました~、じゃあアスカ、こっちにおいで」
ユミの後についていくと、着いた場所は脱衣所だった。
「え? ユミさんあの、これはどういった」
「どういったって、風呂に入るに決まってるでしょ。汗かいたんだし」
まあ、僕は10歳で、相手は20歳くらいなんだから、一緒に入っても、ギリギリ、本当ギリギリ大丈夫かもしれないけれど、だけどやっぱりダメじゃないか?
僕がもたもたしてる最中に、ユミさんは服を脱ぎ、バスタオルを巻いた。
「アスカも早くしなさい、それか手伝ってあげようか」
ユミはニタニタしている。
「自分でできますから!」
反射的に赤面してしまった。
ユミさんは「はいはい」と言いながら先に風呂に入ってしまった。
後を追いかけるように僕も風呂に入る。
「こっち、ここに座って」
言われるがまま、ユミさんの前に座る。
ユミさんは背中や頭を念入りに洗ってくれる。
「アスカ、今日から私のことはユミ姉と呼びなさい、アスカはソイニー師匠の2番目の弟子になるんだから」
「ソイニーさんの弟子になるんですか?」
「弟子になりたくないの?強くなりたくないの?」
ユミ姉に聞かれたとき、何もできずに姫様と離れ離れにされてしまったこと、前世で家族を救えなかったことが脳裏に蘇る。
強くなりたいさ、それはもう。
口から手が出るほど欲しい強さ。
「強くなりたいです」
流れるシャワーの音にかき消されそうなほど、小さく呟く。
「強くなりたいよね。
強さってのは暴力的で非道なイメージがついて回るが、誰かを守りたい時、誰かの助けになりたい時でも、強くなければなし得ない時だってある。
人のために何かしたいならば、強くならなければいけない。
しかもアスカの場合、誰も文句が言えなくなるほど強くなれば、姫様とだって結婚できるかもしれないよ」
ユミ姉は、僕の頭の泡を優しく落としながら語りかける。
「強くなればまた姫様と会えるんですか」
「そうとも、アスカには魔導が備わっている。まだまだ微弱な魔導だけども、
強くなれば王宮付きの魔導部隊に入れるかもしれない。
はたまた英雄になれば姫様とだって結婚できるかもしれないよ」
英雄になれば姫様と結婚できる。
強さも手に入る。
前世のような過ちも防げるかもしれない。
ならば強くなるしかない。
「僕、強くなります」
「そうこなくっちゃ、あと、不思議なことにアスカは私と同じ匂いがする。人一倍の苦労を乗り越えてきた匂いが……。
だから大丈夫、君は強くなるよ」
そう言うと、ユミ姉は立ち上がり、「さあ、師匠の美味しいご飯を食べに行こう」といいながら風呂場を後にした。
本当に人を守れる強さを手に入れることができたのならば、どんなに嬉しいことだろう、そう考えながら僕も風呂を後にする。
風呂場を出るとソイニーとユミ姉が言い合っていた。
「ユミさん、アスカさんと一緒にお風呂に入ったんですか!?」
「だって師匠がよろしくって言ったじゃないですか」
「言いましたが、あれは一緒に入ってと言うことではありません。お風呂まで案内してってことです」
「まあ、いいじゃないですか。裸の付き合いの方が心も通わせられますし。
あれ、もしや、師匠がアスカと一緒に入りたかったんですか?」
「違います!」
「師匠はダメですよ。年は上ですが、絵面的にアウトです」
「アウトとはなんですか。全く」
コミカルな会話が響き渡る。
なんだかおしゃべりマシンガンの妹を思い出す。
こんな日常を姫様と過ごせたらと心がざわめく、そして再び決意する。
「僕は、ここで強くなる」
前に姫様から聞いたことがあるぞ。
魔導には、治癒魔導か攻撃魔導、防御魔導の三つあり、また、魔導の強さによって、初級、中級、上級、帝級、皇級、神級に分けられるって確か言ってたっけ‥‥‥。
そんな強い人を追っ手に寄越したのか王宮は‥‥‥。
狭い路地に逃げ込んだことがアダになった。
前は、胸の大きい上級魔導士、後ろはロリッ子帝級魔導士。
どうあがいても逃げれそうにない。
僕の人生は二度目の終了を告げそうです。
挙動不審にアタフタする僕を、微笑ましそうに見ながらソイニーは尋ねた。
「少年、君はアスカ・ニベリウムかな?」
もうすでに名前がバレている。
これは、もう追っ手確定である。
このまま僕はまた、あの暗い牢獄に戻されるのであろう。
僕は、もう逃げ切ることは無理だと観念し、白状した。自分がアスカ・ニベリウムだと。
「良かった、ちゃんと見つけられて。
横浜領に突然、荒々しい魔導が現れたから、もしやと思ってきてみたら、ビンゴだったみたいね」
ソイニーという女性はやっぱり僕を探していたようだ。
「アスカ、ソイニー師匠はすごいんだよ。微力な魔導でも追跡できちゃうんだ」
何故か、ユミという女性が誇らしげに語っている。
まあ、そんなことはどうでもいいんだ。
さっさと連れて行ってくれ。
「じゃあ、行きましょうか」
そういうと、ソイニーとユミは僕の手を2人で引きながら歩き出した。
僕はなされるがまま、2人に付いていった。
10分ほど歩いた後だろうか、ソイニーとユミは歩みを止めた。
下を向きながら歩いていた僕が、顔を上げると、目の前に一軒家が建っていた。
何だか予想していたことと違う。
もっと禍々しい監獄のような場所に連れて行かれると思っていたのに、ほのぼのアットホーム感溢れる場所に連れてこられてしまった。
「どうですか、アスカ? ここが今日から貴方が住む場所です!」
ソイニーは満点の笑みで、ふわふわな髪を大きく揺らす。
「え? どういうことですか?」
状況が全く飲み込めない。
ソイニーとユミもアスカが何故戸惑っているのか理解できないようである。
すると、ソイニーが、手を頭に当て、何かに気づいたかのような素振りを見せた後、口を開いた。
「もしかして、シルベニスタから何も聞かされてないんですか?」
シルベニスタ‥‥‥
そう、僕を牢獄から逃がしてくれた人である。
ソイニーからシルベニスタの名が出てきた。
ようやく僕もこの状況が理解できそうだ。
「あの人、いつも言葉足らずなんですよね、全く。
ごめんなさいね、知らないなら戸惑うことも無理ないですね。
私は、ユーリ・シルベニスタから貴方を保護して欲しいと、言伝を預かったので、探し回っていたんですよ。
良かった、横浜の方に逃げてきてくれて。
そうでなければ、一生見つからなかったかもしれません」
ソイニーは僕の目線の高さまで、屈んでから、僕の頭を撫でた。
「そうだったんですね、じゃあ、2人は追っ手ではないのですね?」
「追っ手とかじゃないですよ。安心してください。貴方を守る人たちなので。ささ、夕ご飯にしましょう。準備しますので、ユミさんアスカさんをお願いしますね」
「は~い、わかりました~、じゃあアスカ、こっちにおいで」
ユミの後についていくと、着いた場所は脱衣所だった。
「え? ユミさんあの、これはどういった」
「どういったって、風呂に入るに決まってるでしょ。汗かいたんだし」
まあ、僕は10歳で、相手は20歳くらいなんだから、一緒に入っても、ギリギリ、本当ギリギリ大丈夫かもしれないけれど、だけどやっぱりダメじゃないか?
僕がもたもたしてる最中に、ユミさんは服を脱ぎ、バスタオルを巻いた。
「アスカも早くしなさい、それか手伝ってあげようか」
ユミはニタニタしている。
「自分でできますから!」
反射的に赤面してしまった。
ユミさんは「はいはい」と言いながら先に風呂に入ってしまった。
後を追いかけるように僕も風呂に入る。
「こっち、ここに座って」
言われるがまま、ユミさんの前に座る。
ユミさんは背中や頭を念入りに洗ってくれる。
「アスカ、今日から私のことはユミ姉と呼びなさい、アスカはソイニー師匠の2番目の弟子になるんだから」
「ソイニーさんの弟子になるんですか?」
「弟子になりたくないの?強くなりたくないの?」
ユミ姉に聞かれたとき、何もできずに姫様と離れ離れにされてしまったこと、前世で家族を救えなかったことが脳裏に蘇る。
強くなりたいさ、それはもう。
口から手が出るほど欲しい強さ。
「強くなりたいです」
流れるシャワーの音にかき消されそうなほど、小さく呟く。
「強くなりたいよね。
強さってのは暴力的で非道なイメージがついて回るが、誰かを守りたい時、誰かの助けになりたい時でも、強くなければなし得ない時だってある。
人のために何かしたいならば、強くならなければいけない。
しかもアスカの場合、誰も文句が言えなくなるほど強くなれば、姫様とだって結婚できるかもしれないよ」
ユミ姉は、僕の頭の泡を優しく落としながら語りかける。
「強くなればまた姫様と会えるんですか」
「そうとも、アスカには魔導が備わっている。まだまだ微弱な魔導だけども、
強くなれば王宮付きの魔導部隊に入れるかもしれない。
はたまた英雄になれば姫様とだって結婚できるかもしれないよ」
英雄になれば姫様と結婚できる。
強さも手に入る。
前世のような過ちも防げるかもしれない。
ならば強くなるしかない。
「僕、強くなります」
「そうこなくっちゃ、あと、不思議なことにアスカは私と同じ匂いがする。人一倍の苦労を乗り越えてきた匂いが……。
だから大丈夫、君は強くなるよ」
そう言うと、ユミ姉は立ち上がり、「さあ、師匠の美味しいご飯を食べに行こう」といいながら風呂場を後にした。
本当に人を守れる強さを手に入れることができたのならば、どんなに嬉しいことだろう、そう考えながら僕も風呂を後にする。
風呂場を出るとソイニーとユミ姉が言い合っていた。
「ユミさん、アスカさんと一緒にお風呂に入ったんですか!?」
「だって師匠がよろしくって言ったじゃないですか」
「言いましたが、あれは一緒に入ってと言うことではありません。お風呂まで案内してってことです」
「まあ、いいじゃないですか。裸の付き合いの方が心も通わせられますし。
あれ、もしや、師匠がアスカと一緒に入りたかったんですか?」
「違います!」
「師匠はダメですよ。年は上ですが、絵面的にアウトです」
「アウトとはなんですか。全く」
コミカルな会話が響き渡る。
なんだかおしゃべりマシンガンの妹を思い出す。
こんな日常を姫様と過ごせたらと心がざわめく、そして再び決意する。
「僕は、ここで強くなる」
応援ありがとうございます!
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