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《裏技》マスター、サーカスに入団する

ショーの幕開け

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「ふぅー……やっと来れたー」

「何だかんだ疲れたわねー」

「帰って来たー!」

「あ……道化師クラウィーがいる……」

『我ら、汝等うぬらを待ちびたり』

『団長が汝等に用がある。付いてきたま

 道化師達がテントの中に入る。

「じゃ、行くか」

「行こー!」

 入るとやっぱり暗い。

「相変わらず暗いなぁ」

【光球】を発動し、辺りを照らしつつ進む。

 チリンチリンと道化師達のコックスコームから音が鳴って、彼らがこちら側を向く。

『これより先に団長がおられり』

『失礼無きように願おう』

『では、我らは〝観客席〟へとこう』

『ああ』

 そう言って彼らは暗闇の中に消えた。

「よし、入るか」

「なんか嫌な予感がするのよねぇ」

 幕をめくり、奥へと歩く。

『ダラララララララ』

 お、ドラムロールだ。

『ダン!』

 辺りに煙がプァーっと出て来て中央にリヴェットがいた。

「やあ、我々の団員を集めてくれてありがとう」

「良いさ、で、リレオの居場所は?」

「そう焦るな。まだ終わっていない」

「……は?」

 終わってないって……どういう事だ?

「言ったであろう? 我々のショーを手伝って頂きたいと」

「だから、団員を集めて来たぞ?」

「否! これからだ!」

『パッ!』

 俺らがスポットライトで照らされる。

「さあ! ショーの幕開けだ!」

 リヴェットがそう言うと、部屋全体が一気に明るくなる。

「うわっ!?」

『『『『『ウオオオオオオォォォォォォォォオオオオオ!!!!!!!』』』』』

 観客席には大量の道化師がいた。

「これ……全部道化師!?」

「凄い……数……」

「怖いぃー……!」

「それでは始めよう!」

 リヴェットが臙脂色えんじいろの炎を飛ばしてくる。

「うわっ! マジかよ!」

 リヴェットはインワドでもかなりの強さに入るキャラだ。

 しかしキャラの設定では、いつでも本気を出していないという風になっているので、本気でやられたらマジで誰も倒す事は出来なかったと思う。

 というか、マジで殺した人はいない。

 どういう事かといつと、リヴェットのHPが尽きると攻撃ができなくなり、普通に会話になって終わるのだ。

 因みにその攻撃が出来ない硬直時間は、一部の人にとっては至高の時間となるらしい。

 リヴェットって意外とカッコいいのだ。

 お面被ってるから素顔分からないけど。

 でもなんか厨二心をくすぐられる感じと、少し紳士っぽい感じのキャラなので、男性からも女性からも人気が高い。

 まあ、俺は普通に裏技バグでその硬直時間無効にして剣で斬りまくってだけどな。

 だが話しているリヴェットはオブジェクト判定のようで、攻撃しても意味が無かった。

 その時はめちゃくちゃ笑ったなぁー。

「ふんっ!」

「おっと」

 考え事してちゃダメだな。

「はぁっ!」

 状況を理解したルリカが横から剣でリヴェットを斬ろうとする。

「ふははっ!」

 だが、ヒラッとかわされる。

「っ! 速い!」

 多分リヴェットは素早さがスライムよりも速い。

 なので本気で集中しないとマジで死ぬ!

「えーい!」

 レカがあの黒い炎を大量に出し、それを一気に放つ。

「ふっ」

 リヴェットがそれを避けようとしたので

『パァン』

「!?」

 銃を撃ち、逃げれないようにする。

「ふ、ふははははは!」

 リヴェットは大笑いして、マントをバッと広げてくるまる。

「は!?」

 するとなんとマントがブワッと広がり、周囲に炎をき散らした。

「ちょちょちょ!」

 んだよその技!

 あ、でもそれをやるとレカが出してくれた黒い炎に当たって焼けるぞ!

 よし! 勝ち申したな。

『ブォン!』

「あれ?」

 当たった……よな?

 え? 消えた?

「ふむ、何回も出来るものではないから余りやりたくは無かったのだが……中々やるではないか」

 な、何をしたんだ……?

「何をしたのか疑問であろう。だが、言わぬよ」

 リヴェットが距離を詰めてくる。

「くそっ! マジかよ!」

 連続ではないがたまに攻撃を無効化出来るのかよ!

 もしかしたら魔王よりタチ悪いかもしれねぇぞ!

 リヴェットが炎を剣の形にしてスッと斬りつけてくる。

 一応避けられてはいるが……ヤバいなぁ……。

「ふっ……!」

 ニルが背後から斬りつけたが、ヒラリと飛び、逆にニルの背後に回る。

「……!?」

「もっと舞いたまえ」

 炎が連続でニルに向かって放たれ、本当にニルは舞う様に避けた。

「いい舞だ」

「くっ……!」

 煽ってるなぁー。

「さあさあまだまだショーは終わらないぞ!」

 そう言ってリヴェットはマントをひるがえした。

 すると……

「うわっ!? 何だこれ!?」

 コウモリの様な何かが飛び出して来たのだ。

「来ないで来ないでぇー!」

「怖いー!」

「いやお前の所には結構コウモリとかいるイメージあるけど!?」

「でも怖いー!」

「ちょっと……私も……無理かな……」

 大量のコウモリが上の方に飛んだので、リヴェットの方を見ると

「!? いない!?」

 いやまあ察してはいたが、一体どこへ行ったんだ?

「……! あれ……!」

 ニルがコウモリの群れを指差す。

 ……おいおいマジか……!

「一匹だけ……他のと違う……飛び方してる……!」

 んー……? あ! マジだ! 一匹なんか違う奴がいる!

「よーし!」

 ベルトから銃を抜き、エイムアシスト裏技をやる。

「当たるかなぁ……?」

 少し心配だが、裏技を信じよう。

『パァン!』

「なっ!?」

 お! 落ちてく!

「うぬぅ……」

「俺らの勝ち……か?」

「ふ、ふはははははははははは!!」

『『『『『ワアアアァァァァァァァアアアアア!!!!!』』』』』

 な、何で今叫ぶんだ?

「素晴らしい! 素晴らしいショーだった! 私に銃弾を当てるとは! ふはははは! 素晴らしい! 素晴らしい!」

 両手をグワッと上に上げてそう叫ぶ。

「我らが団員よ! 聞きたまえ!」

 その瞬間道化師全員が彼に注目したのが分かった。

「彼らを、我らの新たな団員とする!」

『『『『『ざわざわ……ざわざわ……』』』』』

 えぇー!? ちょ、そりゃそうなるって……。

「疑問はあるだろう。だが、君らの中に私に傷を付けられる者はいるかね?」

『『『『『…………』』』』』

「そういう事だ」

 リヴェットがこちらを向く。

「君らにこれを授けよう」

 マントの内側から取り出したのは、四つのお面だった。

「あ、これ……」

「そうだ、団員の証だ。安心したまえ、これを付けても頭が変になったりはしない」

 手に取って、試しに付けてみる。

「おお……付けた感じがしない……!」

「え、それって凄くない!?」

「団員達には不自由の無いようにしたいからね。団長の勤めさ」

 リヴェットはクルッと反対方向を向き、俺らに向かって両手を出す。

「さあ! 新たな団員の加入を喜ぼう!」

『『『『『ワアアアァァァァァァアアアアア!!!!!』』』』』

 その歓声と共に観客席が暗くなる。

「さてと……リレオの居場所……だったね?」

「そうだ、それが知りたい」

「待ってイイジマ」

「何だ?」

「リヴェットさんに連れて行って貰えば良いじゃない。時と場所を好きに移動出来るんでしょ?」

「あ、確かにそうだな」

 その方が手間も省けるだろう。

「残念だがそれは出来ない」

「何故だ?」

「君らが耐えれない。恐らく、時空以前に場所を変えただけで君の体はぐにゃぐにゃに曲がっているよ」

「何であんたらは大丈夫何だ?」

「始まりが一緒だからさ」

「?」

「団員、それはが兄弟。それは我が友。それは我が道標みちしるべ。共に暗闇にありし臙脂色の炎から生まれ、今こうしていたり」

「お、おう……」

 大丈夫か……?

「おっとすまない、昔のくせでね。では本題に入ろうか。我があげた地図を返してくれたまえ」

 言われた通りリヴェットに貰った地図を返す。

「現在のリレオの居場所は……ここだな」

 どこからか赤ペンを取り出してグリグリと地図上に丸を描く。

「なっ!?」

「えっ!?」

「そんな……!」

「? どーしたのー?」

 リヴェットが丸を付けた位置は……


 ベーナダンジョンだった。
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