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《裏技》マスター、海水浴をする

な、何だお前ら!? ……いやまあ、余裕で対処出来るんだけどさ

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「よー」

「あっ、イイジマさん!」

 宿に戻って休憩した後、俺はミリア達の練習場にやって来ていた。

「いやー、良い歌声だったな」

「本当ですか!? やったぁー!」

 ミリアの後ろにいる皆んなもめちゃくちゃ喜んでいる。

「マジでよくあそこまでやったよ」

「ありがとうございます!」

「まあなんだ、これからも頑張ってくれ」

「はい!」

 その後、俺は一人一人に別れを言ってから練習場を後にした。

「さてと、ここでする事もなんか無くなったし、そろそろ街を移動でもするかー」

 もうここの街の人に裏技バグに近い力を持つ人の事は質問しまくったし、本当にやる事が無い。

 まあ寿司を食えなくなると思うと残念だが……仕方ない。

「んじゃ、宿に戻るか」

 そう言って宿に戻ろうとした時、気付いた。

 おんやぁ? どうやら付けられているなこれ。

 気配というか視線を感じた。

 この間付けられたから意外とこういうのに敏感びんかんになったんなだよなぁー。

 でも何で付けて来てるんだ?

 気配的に複数人で、なんか敵意もあるっぽいし……。

 俺なんかした?

 あ、分かった。

 俺が人族だからか? 人族なんて来るなー的なあれか?

 なるほどなるほど、いやーそれなら酷い差別だなぁー。

 まあ仕方ない、取り敢えず近くの人気のない所に行こう。

 足を早めて人気の無い場所に行く。

 もちろん俺を付けていた奴らも来た。

「!? ど、どこだ?」

「この道に入ったはず……!」

「探せ!」

 彼らは背中と背中を合わせ、全方角を見る。

 ふーむ、俺目の前にいるんだけどなぁー。

 ただ【透明化】と【足音消去】を使ってるだけで。

 なんかどこにいるか分からないものを探してる時の人の顔を見てみると案外面白いものだな。

 目の前にいるのにっていうのもあるだろうが。

 取り敢えず、今目の前にいるコイツからやるか。

 首をトンッ……いや、それやったら死んじゃうか。

 気絶……あ! 忘れてた。

 俺【睡眠付与】っていう魔法持ってたじゃねぇか!

 よし、これをやろう。

「【睡眠付与】」

 小声で目の前の奴にそう言う。

「ん~、んぅ~」

 目の前の奴がパタッと倒れる。

「ん? おい!? どうした!?」

「Zzz……」

「ね、寝てる!?」

 うん、寝てるんだよそいつ。

「麻酔針か!? どこから!?」

 ここから。正確に言うとあんたの目の前から。

 そんでもっと正確に言うと麻酔針じゃなくて魔法だ。

「おい! 慌てるな! 慌てたら相手の思う壺だぞ!」

 お、あいつは冷静だな。

 ならば次はアイツをやろう。

「【睡眠付与】」

「だから冷静れいすぇいに……」

 この男もパタッと倒れる。

「くそっ! どこにいるんだよ!?」

「卑怯者が……!」

 いやいやどっちが卑怯者だよ。

 尾行して人気の無い所に行ったらボコボコにしようって考える方が卑怯者だろ。

 まあもう見てても意味無いし、もう全員に【睡眠付与】するか。

「んふぁ~」

「んぺっ」

 二人ともパタッと倒れた。

「さて、と」

 冷静だった奴が恐らくこの中で一番のベテランだろうし、【麻痺付与】をして色々吐かせるか。

 そう思いそいつに近づくと……

「待て」

 背後から声を掛けられた。

 あれ!? 俺今透明なはずなんだけど!? それに足音もしたないはずだし……え、なんで俺の存在が分かった?

「その者達を殺すな、逸脱者いつだつしゃよ」

 逸脱者? それって俺の事か?

「私はこの国の王の側近、ヴァレスタナ・ヴィラータ・ヴァルヴェオスである」

 ヴの発音が多いなぁ!

 四つもあるぞ!?

「王がお前を世間にバレぬ様に殺せとの命令した。すまぬが、ここで死んで貰う」

 は!? この国の王が俺に殺せって命じた!?

 マジかよ!?

 ヴァレスタナは俺に向かって駆け出していた。

 手には普通の長さの剣があり、間違いなく俺の方が分かっていてそこに攻撃を仕掛けようとしているのが分かった。

「ほっ!」

 それを避けて【睡眠付与】を発動する。

「【睡眠付与】!」

「悪いが、状態異常系スキルは、海の力によって消せるのだよ」

「なっ!?」

 俺は……左肩を斬られ……かけた。

「…………は?」

「あ」

 剣が、ぐにゃ~んと曲がっている。

「いっ、一体なんだこれは!?」

「あー、俺の防御力が高すぎて剣が曲がっちまったんだな」

「そ、そんなバカな!? この剣は、代々伝わるいにしえの――」

 なんか熱弁してるし、今の内に逃げるか。

 ピョーンと飛んで、建物の上を駆けた。

「あっ! おい待て!」

 ヴァレスタナも追いかけて来たが、まあ俺のスピードに付いて来れる訳もなく……。

 俺は何とか逃げ切って宿の部屋へと戻った。
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