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《裏技》マスター、忍者の里へ行く

難易度、上げてくれ

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 馬車に揺られて数時間。

 空を飛ばない馬車の景色も普通に良いねぇ。

 いやまあこれが普通の景色なんだけど。

 むしろ空飛ぶ馬車からの景色を知ってる人の方が少ないな。てかいないな。

「あー! 見て見てイイジマー! おっきい雲ー!」

 遠くにある雲を指差してレカがそう言う。

「本当だな、でっかいなあの雲」

 平和だなぁー。

 そう思ったその時、ガコンと馬車が大きく揺れた。

「うおっと、なんか凄い揺れたな」

「そうね、大きな石の上でも通ったのかしら?」

 ルリカがそう言って通った道を見たが、どうやら大きな石らしき物を見つけられず、首を傾げた。

「あぁすまんね旦那、馬が少しつまずいたんだわ」

「あっ、そういう事か。ルリカ、ただ馬が躓いただけらしいぞ」

「ほっ、良かった」

「馬を休めた方が良いんじゃないか? 躓くって事は疲れているんだろ」

「……そうだなぁ、少し休ませるか」

 という訳で、近くで馬を休ませる事になった。

「いやー本当にすまんね旦那」

「別に良いさ、馬にも休息は必要だろう」

「そう言って貰えるとありがてぇですわ。んじゃ俺は、馬を見てくるとしますよ」

 そう言って御者は馬の方へと向かった。

「さてと」

 俺はそう言って立ち上がり、馬車の方へと向かった。

「おい、いるんだろ」

 馬車の下の方を見下ろしてそう言う。

「……」

「俺が誰だか、分かるだろ?」

「……」

「イイジマ、上忍だ」

「!」

「まあ、確かにここで姿を現すのは危険だよな、向こうの林で会おう」

「……」

 雰囲気でだが、肯定の意思を感じた。

「すまんルリカ、俺ちょっとお花畑でトイレしてくるわ」

「オブラートに包めてないわよそれ。まあ、いってらっしゃい」

 そして俺は林へと向かった。

「出て来ても良いぞ」

 そう言うと目の前はシュッと一人の忍者が現れた。

「まあ何だ、所謂いわゆる、忍者の里に辿り着くまでの試練ってとこか?」

「その通りです」

 声は男とも女とも取れる声だった。

 まあ、忍者ならこれくらい出来ないとダメではある。

「ですが申し訳ありません、上忍の中の上忍である、貴方様の事が分からず、試練を与えようとしてしまいました。
この過ち、腹を切って――」

「やめろやめろ、そんな事しなくて良い。むしろもっと精進してくれ」

「っ! 分かりました!」

「それでまあ、一つ頼みを聞いてくれないか?」

「なんなりと」

「その試練……難易度を上げてくれ」

「……は?」

 忍者が少し困惑した声を出した。

「いや、ただ難易度を上げて欲しいんだ。ルリカ達には多分それくらいが適正なんだよ」

「お言葉ですが、相手は言わば一般人、死んでしまうかもしれません」

「……むしろ、お前らの方が危ないかも何だよ」

「っ!」

 その言葉に、忍者は驚いたのか少しムカついたのか、体をピクッと動かした。

「それは……我々が弱いと……?」

「いや、別にそういうんじゃない。
ただ、あいつらってなんか片手から何もかもを消し去る黒い球を生み出せたり、剣の先から爆発を生み出したり、俺をゆうゆうと引っ張る事が出来る力を持ってたりするからな……」

「……それ……本当に生物ですか?」

「マジで生物なんだよな」

「私達……大丈夫でしょうか?」

 弱気になっちった。

「安心しろ、お前らが危なくなった時は俺がさりげなく助けてやる」

「ありがとうございます」

「んじゃ、ここに来てない仲間にも伝えとけ、行って良いぞ」

「御意」

 そう言ってその忍者は行ってしまった。

「ふぅー、何とかなったな」

 あの忍者達が死ななくなって良かったぜ。

「ただいまー」

「おかえりー」

「さてと、そいじゃそろそろ馬を走らせんで、馬車に乗って下せぇ」

「分かった」

 そして俺らは馬車に乗った。

「それじゃ、参りやーす!」

 馬がパカパカと足音を立てて歩き出す。

「さぁーて」

 あの忍者達はどれくらいやってくれるのかね?

 そう思う事数分、馬車が少しだけ揺れ始めた。

「……イイジマ、なんかさっきよりも揺れてない?」

「本当だな、結構揺れてるな」

 すると、馬車の床の一部がベコッと飛んだ。

 そして、そこから何人もの人が出て来た。

 忍者達だ。

 ただ、忍者であると悟られない様に、盗賊の様な格好をしている。

「盗賊っ!」

 現にルリカも騙されている。

 さて、どうなるのか見ものだな。

 そう思ながら、俺は頭に手を組んだ。
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