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《裏技》マスター、忍者の里へ行く

試練……終了!

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「ひっ、ひぃぃぃぃ!」

 御者(忍者)が怯えた声を出す。

 ほお、中々良い演技だな。

「さっさと金目のもん置いてけぇ!」

「そうすりゃ、命だけは取らないでなるぜぇ?」

「へへへっ!」

 おおお、あのゲスっぽい言い方はマジで盗賊だ!

 凄い上手いぞ!

「イッ、イイイイイイジマ! 盗賊が来ちゃったわよ!」

「おっ、おお、そうだな」

「何でそんな冷静なのよ!」

「いやだって……お前らなら勝てるだろ?」

「……いやまあ、そうかもしれないけど……」

 どうやら今のルリカの発言にカチンと来た様だ。盗賊達が顔の皮膚をピクピクとさせている。

「出さねぇんなら……! 仕方ねぇ! やるぞお前ら!」

「「「「うおお!」」」」

 おいおい、こんな狭い馬車の中で計9人で乱戦する気か!?

 流石にヤバイ気が……

「よっ!」

 一人の盗賊が、馬車の屋根へと飛ぶ。

 そして天井から剣が伸びて来た。

「うわっ!」

 ルリカピュッと横にずれて避ける。

「私が……行く……!」

 ニルが上の方に飛ぶ。

「んじゃ、ここは俺らがやんないとな」

「ええ!」

 そう言って俺は銃を構え、ルリカは剣を構えた。

 因みにレカは両手を前に突き出している。

「「うおおお!」」

 二人の盗賊がルリカとレカに斬りかかった。

 恐らく、まずは小さい子供を狙おうと考え、ルリカを足止めしている隙に倒そうとしたのだろう。

 だが……

「えい!」

『ブォン』

「え?」

 盗賊の目の前に黒い球体が現れた。

「!!」

 盗賊は綺麗なバク転をして回避した。だが、とんでもない量の汗をかいていた。

 忍者の勘で、あれはヤバイと感じたのだろう。

 実際、あれはヤバイ。

 触れたらまあ間違いなくその部分は無くなるだろう。

 因みに未だに俺もあの黒い球体が何なのか分かっていない。

 マジで何なんだろうなあれ。

「おい! 女を狙うぞ!」

 そして三人がルリカに向かって走った瞬間――

『ドゴォォォ!』

「「「!?」」」

 馬車の屋根が崩れた。

「……ふぅ……」

 そして、屋根と共に落ちて来たニルの足元には、伸びた盗賊がいた。

「あぁ! 俺の馬車が!」

 御者さんがめちゃくちゃ悲しそうな顔をしている。

「こいつらの金から取っといてくれ!」

 そう言うと、盗賊らの顔が『ヤバッ』という様な顔になった。

 間違いなく、この後の里で金をぶん取られるだろう。

 まあ、頑張れ。

「ひとまず人族の女だぁ! 行け行けぇ!」

「きゃっ!」

 ルリカに向かって全員が突っ走り、ルリカを斬ろうとしたが……

「ダメ……」

 ニルが剣を器用に使って、盗賊の剣を落とさせる。

「あ?」

 なぜ自分が剣を落としたのか分からない盗賊に、ニルが蹴りを入れる。

「ふぎゃば!」

 変な声と共に、蹴られた盗賊が馬車から落ちる。

「くそぉ!」

 一人冷静を失って(フリ)ニルに突っ込んだ。

「ほい……」

「どわぁぁ!?」

 ……え、今、何をしたニル……?

 なんか、剣が相手に触れてなかった様な気がするんだが……。

「おい、ニル、今何をしたんだ?」

「……風圧で……相手を吹き飛ばした……」

「……」

 マジかよ。

 剣の風圧で吹き飛ばすって何?

 しかも片手剣で。

 どんな筋力してるん?

 いやまあそれは俺にも言えるか。

「な、何だコイツら……化け物か……!」

「くそ! 逃げるぞ!」

 そして盗賊達は逃げて行った。

「撃退、出来たな」

「良かったー」

 ルリカがペタンと床に座り込む。

「言うてお前何もしてなかったけどな」

「そっ、それはニルやレカちゃんが強かったから……あら? 貴方も、何もしてなくない?」

「……バレたか」

「人の事言えないじゃないのー!」

「ごめんごめん!」

 その後もルリカにポカポカと優しめに殴られた。




「おっ、見えてやしたぜ旦那」

「ん? んー?」

 竹藪たけやぶに入ってから変な道を行ってるなぁーとは思っていたが、何も無いぞ?

 でも確かにここら辺に忍者の里はあったはず……。

「あぁすんません、見えねぇですよな、ほれ!」

 御者がパンと手を叩くと、一部の空間が歪み、竹で出来た門が出て来た。

「うおお!」

 凄ぇ! 村全体を隠す様になったのか!

 へぇーこりゃまた面白い風になったなー。

 そう思いつつ、御者と共に村に入る。

「さて、と、旦那方、まずは試練突破おめでとう」

「え? 試練?」

 あっ、そうか、ルリカ達は分かってないのか。

「あー、盗賊の襲撃があったろ? あれが試練」

「えっ、あれ試練だったの!?」

「まあこの里に来るのが相応しいかどうかのテストみたいなものだ」

「そうなのね……」

 なんか、感心してる……。

「それではこれより、上忍のお方に会う。付いて来い」

 そう言って彼はバビューンと走って行った。

「はや!」

「これくらいのスピードには付いていけるようになるぞ! ほら! 行くぞ!」

 そして俺らは駆け出した。

「まっ、待ってぇ~!」

「……」


 結局、ルリカを担いで行く事になった。
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