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《裏技》マスター、記憶を失う

森人族の医師

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「それでベクト爺、森人族でイイジマの記憶を治せそうな裏技バグを知ってる人って誰?」

「うぅむ……恐らく、この村の医師が知っておるんじゃなかろうか?」

「医師、ね。分かったわ。それじゃあ皆んな、ひとまずそこに行ってみましょ」

 私達は荷物を部屋に置いて早速医師の元へ向かってみる事にした。

「ようこ……人族? それに魔族にドワーフに獣人族だと? 何者だお前ら?」

 医師の方が先頭態勢になりかけたところに、ベクト爺が入って来た。

「ベ、ベクト様!?」

「この者らは客人じゃ。丁重に扱わんかったら……樹神様の事をみっちり教えねばならんから、ちゃんとするんじゃぞ?」

「かっ、かしこまりました! 今回はどういったご用件でしょうか?」

 とんでもない速度の手のひら返しね……。

「実は、彼が記憶喪失になってしまって……」

「ほう?」

「どうにかして戻してあげたいんですが、戻せますか?」

「……ちょっとだけ検査させて貰ってもよろしいでしょうか?」

「あっ、はい。構いません」

 医師の方はイイジマを病室へと連れて行き、扉を閉めた。

「「「「「……」」」」」

 一応、そう、一応私達も心配だったので、扉に耳を当てて中の音を聞く事にした。

「お主ら……何をやっておるんじゃ……」

 背後からベクト爺さんのそんな声が聞こえて来たが、そんな事は気にせず私達は中の会話を聞いていた。

「えー、記憶喪失、なんですね?」

「はい」

「何日前から?」

「昨日です」

「なるほど……もう昨日から以前の記憶は無い?」

「はい」

「分かりました、あーでは、そこのベットに横たわって下さい。ちょっと今どんな感じか、検査します」

「分かりました」

 イイジマがベットに横になる音が聞こえる。

「ふーむ……なるほど……特異的な事は起きてな……いや、起きてるな。何だこれは?」

 やっぱり、イイジマの記憶喪失はただの記憶喪失じゃないのね!

「ど、どうなってるんだ!? こんなの見た事がないぞ……!」

「「「「「!」」」」」

 それを聞いた私達はすぐに病室の中に入る。

「うわっ!?」

「今の、どういう事ですか!?」

「聞いてらしたんですか……どういう事と言われましても、先程言った事と同じですよ。見た事ない事になってるんです」

「具体的には?」

「治療が……邪魔されるんです」

「邪魔される?」

「治療する為にひとまず、電気を加えようとしたのですが……かき消されました」

「えっ!?」

 魔法やスキルがかき消されるのは、普通ではあり得ない事だ。

 あり得るのは、発動者が発動をやめた時、または死亡した時、そして、妨害系の魔法やスキルを喰らった時だが……医師の反応的に、その様なものを喰らった様子も無い。

 一体……イイジマに何が起こってるのよ……!?

「あの」

「何でしょう?」

「記憶を治せる裏技、みたいなのって知ってます?」

「申し訳ありません……存じておりません」

「そんな……!」

 森人族の医師でもダメなの……?

「じゃあ、他に知ってそうな人は?」

「ベクト様と……申し訳ありません、思い付きません」

「そう……ですか……」

 私はゆっくりと出口へと向かう。

「あっ! お待ち下さい! もう一人いました!」

「だっ、誰ですか!?」

「確か、貴方方あなたがたが初めてこの村に来た時に一緒にいらっしゃった…… 〝リヴェット〟様です!」

「「「「「あ!」」」」」

 た、確かにそうだわ!

 リヴェットさんなら、何とかしてくれるかもしれないわ!

「ありがとう! 試してみるわ! 行きましょイイジマ!」

「えっあっ、はい!」

 私達は医師の方に感謝をしてから、病院を去り、教会へと戻った。

「それじゃあリヴェットと呼ぶとしましょうか」

「えっと……どうやるんだったかしら?」

「まずリヴェットって誰よ?」

「イイジマ」

「お、俺ですか?」

「そうよ、貴方のポッケの中に鈴が入っているはずだわ」

「あっ、本当だ」

「それを鳴らして頂戴」

「分かりました!」

 チリリリンと鈴の音が森に響く。

 そして――

『ブピャラフォォォォー!!』

 あの、独特な笛の音が聞こえて来た。
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