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瞬く星は近く暖かく 3
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今度の水曜日客が来るのかとぼんやりと聞きながらベットへと戻る。
ベットの上にポンと置かれたスマホにちょうどよく静かなバイブ音と共に新着のメッセージが届いた。
『今度の水曜日父を連れて行くのでご迷惑おかけしますがよろしくお願いします』
そんなメッセージ。
詳しくは先生の所に行ってるだろうと
「おまちしてます」
何か先生が言ってたな。最後まできっちり面倒見ろと。
飯田さんもご実家のお父さんのお世話をしているのなら俺もしないとなとメッセージを打って送信。後は先生と圭斗に任せれば良いかと水曜日と言う所を忘れて陸斗を連れて来てもらおうと応援要請。
水曜日は学校だよね。だけどこの時すっかり俺は忘れていて陸斗が圭斗に
「この日学校休んだ方が良いの?」
「んなわけないだろ!」
なんて会話が交わされていたとは想像もしてなかった。
そうか。人が来るのか。
とりあえず掃除しないとなとベットに寝転がった体を起き上がらせて部屋を出る。階段下の納戸から箒を取り出して掃除を始める俺。
「お前はとうとつに何を始めてるんだ」
呆れたような先生の顔と帰宅の準備をしている内田さんは俺の掃除姿を見て
「飯田さんがお父さんを連れて来るって事だから掃除をと」
夏休みも終わったからお泊りしていくのかな?仏間の隣の部屋で良いだろうかとバケツに水を汲んで雑巾を持って来れば先生が頭を抱えていた。
「もう夜だっていうのになんでこんな時間に掃除を始めるかな?」
「迷惑になる人いないでしょ?」
先生は気にしなさそうだしと呟きながらはたきで埃を落して箒で縁側から外に放り出す。あとは固く絞った雑巾で柱や畳、縁側を拭った後にガラスも磨き上げる。その頃には内田さんは帰ってしまっていたが、約一時間ほどの軽い運動。
「先生、おなかすいた……」
「インスタントラーメンがあっただろう」
仕方がないというように台所に立ってくれた。作るのは数少ない先生が作れる料理。スーパーで買ってきたカット野菜をラーメンを茹でる時に一緒に茹でて全部まとめていただくと言う男前料理だ。一人前の野菜の量なんて判らないから全部食べればいいんだよとこの基準も男前。残されたらどうなるかだけは良く判っているので頑張って食べなくてはならないのが難点だが、まぁ食べれない事もないし普通に食べる事は出来るから問題無し。
普段は台所に立たせないし立たない先生が鍋に水を張って電気コンロにかける。計量しっかりしようよとツッコミたいけど気分よく鼻歌を歌いながら作る背中にとても理系の教師には思えない。
「カット野菜って便利だよなー。洗わなくても良いんだぞ?」
なんて言いながら麺と一緒に沸騰した鍋に投入。そこに冷蔵庫から取り出した卵を二つ。ソーセージも一袋分入れた。多すぎじゃね?
そう思いながらも眺めていれば鍋ごと机の上にドンと置いて俺の目の前にお玉と箸とどんぶりを置いて
「さあ食べていいぞ!」
「ラーメンって鍋だっけ?」
「いきなり〆から始まる鍋と思えば問題ないでしょ~?」
「そうかもしれないけどさ……」
レンゲだと具が取れないのでお玉を駆使しながら菜箸で麺を取りわけていきなり〆から始まる男前ラーメン鍋の実食に移るのだった。
「先生ね、なんだかんだ言って醤油ラーメンが好きなのよ。味噌ラーメンも塩ラーメンも好きなのよ?豚骨だってガッツリ食べたい方だけどね。結局の所スーパーのラーメンコーナーの棚の前に立つと醤油ラーメンを買っちゃうのよ。高速道路のサービスエリアでも醤油ラーメンだし、大学の時の学食も大体醤油ラーメンだったわ。まあ、それだけ身近だったって事ね」
「ずるずるずる……」
麺をすする音で返事をすればソーセージは一人三本までとどんぶりに放り込まれた。
「だけどこの地域味噌ラーメンでしょ?七味をガツンと効かせてさ。
どこだっけ?猪のチャーシュー入れてくれる所。あれはいいわぁ」
「ずるずる、ずずず……」
「でしょ?ワイルドで食べ応えあって病みつきになるのよ。
塩はね、大学生の時バイクで北海道に行った時の函館ね。
雨降って、唇真っ青になるくらい寒くってとりあえず温まりたくって近くにあったきったない店のラーメン屋に飛び込んだら他に客もいなくて、じいさんばあさんが細々と経営してる店でさ、しまったなーって思ったけど店が暖かかったから席に着いちゃってラーメンを頼んだのよ。お薦めのラーメンでって。
そしたらねぇ、金もない、ほぼ野宿で無精ひげの血の気のない俺を哀れに思ってくれたのか豪華な塩ラーメンでねぇ。出汁でとった後の蟹だけどとかラーメンに乗せてくれてねぇ。あれは美味かったなぁって感動した塩ラーメンの頂点だったわぁ」
「ずずず、ず、ずず……」
「生簀のモクズ蟹は十月から十一月ごろが食べ頃だから今は待ちましょう。食べるならどこぞのシェフみたいに美味しく食べないとね。
それで面白いのが同じ時に北海道で食べた豚骨ラーメンよ。またここもあんまり繁盛してないような店でね。っていうか豚骨なら普通九州だろって思うけどね、そこ、養豚場が作った豚骨ラーメンなのよ!聞いただけで卑怯って思うよねー。
それがまたチャーシューの美味しいラーメン屋さんでね。
大将が『全部自前のラーメンです』って笑わせてくれたのよ。麺も自分の家の畑の小麦から作ったって言うの。
自分で麺を打って切ってるから細麺じゃなくてね。でもあれは豚を極めたラーメンだったって今も先生の豚骨の基準はそこなのよ」
「はむっ、むしゃむしゃむしゃむしゃ……」
「いや、別に豚を飼えって言ってるわけじゃないわよ。ここはクマも多いしね。
でもそこで思ったの。宮下の奥さんあれだけの蕎麦打ちの名人だからラーメンの麺を打っても美味しくなると思わない?」
「んぐっ、んっ、んー……はあ。
ごちそうさまでした」
「え?ちょ、綾人さん?そんなあっさりあきらめないで!
この流れなら烏骨鶏ベースのラーメン食べてみたいって思うのは普通でしょ?
チャレンジしようと思わないの?!」
「烏骨鶏食べるならフライドチキンが食べたい」
「んなの今度シェフにお願いすればいいじゃない?あのシェフ絶対ラーメン何て作ってくれそうもないし!」
「普通においしかったよ?麺打ち上手かったよ」
「くっ、食いそびれただと……」
「猪の骨で出汁を取ったパターンもありました」
「何てレアな?!
いや、豚は猪の改良種だから元は同じか?」
「結局の所作り手の問題じゃない?」
「食べたい物は中々口に入らないか……
良いよ。先生は身近な食べ物を愛する事にしてるから」
言いながらスープと大量の野菜をどんぶりに移してもしゃもしゃと食べながらテレビをつける。その横を着替えを持って風呂場へと向かって土間を越えた家風呂に入って行く後姿を見送って
「久しぶりに会話が成立したな」
鍋にご飯を投入してもう一度温めた所に溶き卵を入れる。
「〆のラーメンを更に〆る。サイコーじゃん!」
長風呂の綾人が出てくるまでにゆっくりと堪能して片付け終える頃茹であがった綾人に
「久しぶりに飲むだろ?」
外に置くだけで十分に冷たいビールを渡せば、少し考えながらちびちびと飲みだして、久しぶりのアルコールにビール一本で酔い潰れる様子にまだまだ子供だなと、今日もここで寝るかと布団を引っ張って来るのだった。
ベットの上にポンと置かれたスマホにちょうどよく静かなバイブ音と共に新着のメッセージが届いた。
『今度の水曜日父を連れて行くのでご迷惑おかけしますがよろしくお願いします』
そんなメッセージ。
詳しくは先生の所に行ってるだろうと
「おまちしてます」
何か先生が言ってたな。最後まできっちり面倒見ろと。
飯田さんもご実家のお父さんのお世話をしているのなら俺もしないとなとメッセージを打って送信。後は先生と圭斗に任せれば良いかと水曜日と言う所を忘れて陸斗を連れて来てもらおうと応援要請。
水曜日は学校だよね。だけどこの時すっかり俺は忘れていて陸斗が圭斗に
「この日学校休んだ方が良いの?」
「んなわけないだろ!」
なんて会話が交わされていたとは想像もしてなかった。
そうか。人が来るのか。
とりあえず掃除しないとなとベットに寝転がった体を起き上がらせて部屋を出る。階段下の納戸から箒を取り出して掃除を始める俺。
「お前はとうとつに何を始めてるんだ」
呆れたような先生の顔と帰宅の準備をしている内田さんは俺の掃除姿を見て
「飯田さんがお父さんを連れて来るって事だから掃除をと」
夏休みも終わったからお泊りしていくのかな?仏間の隣の部屋で良いだろうかとバケツに水を汲んで雑巾を持って来れば先生が頭を抱えていた。
「もう夜だっていうのになんでこんな時間に掃除を始めるかな?」
「迷惑になる人いないでしょ?」
先生は気にしなさそうだしと呟きながらはたきで埃を落して箒で縁側から外に放り出す。あとは固く絞った雑巾で柱や畳、縁側を拭った後にガラスも磨き上げる。その頃には内田さんは帰ってしまっていたが、約一時間ほどの軽い運動。
「先生、おなかすいた……」
「インスタントラーメンがあっただろう」
仕方がないというように台所に立ってくれた。作るのは数少ない先生が作れる料理。スーパーで買ってきたカット野菜をラーメンを茹でる時に一緒に茹でて全部まとめていただくと言う男前料理だ。一人前の野菜の量なんて判らないから全部食べればいいんだよとこの基準も男前。残されたらどうなるかだけは良く判っているので頑張って食べなくてはならないのが難点だが、まぁ食べれない事もないし普通に食べる事は出来るから問題無し。
普段は台所に立たせないし立たない先生が鍋に水を張って電気コンロにかける。計量しっかりしようよとツッコミたいけど気分よく鼻歌を歌いながら作る背中にとても理系の教師には思えない。
「カット野菜って便利だよなー。洗わなくても良いんだぞ?」
なんて言いながら麺と一緒に沸騰した鍋に投入。そこに冷蔵庫から取り出した卵を二つ。ソーセージも一袋分入れた。多すぎじゃね?
そう思いながらも眺めていれば鍋ごと机の上にドンと置いて俺の目の前にお玉と箸とどんぶりを置いて
「さあ食べていいぞ!」
「ラーメンって鍋だっけ?」
「いきなり〆から始まる鍋と思えば問題ないでしょ~?」
「そうかもしれないけどさ……」
レンゲだと具が取れないのでお玉を駆使しながら菜箸で麺を取りわけていきなり〆から始まる男前ラーメン鍋の実食に移るのだった。
「先生ね、なんだかんだ言って醤油ラーメンが好きなのよ。味噌ラーメンも塩ラーメンも好きなのよ?豚骨だってガッツリ食べたい方だけどね。結局の所スーパーのラーメンコーナーの棚の前に立つと醤油ラーメンを買っちゃうのよ。高速道路のサービスエリアでも醤油ラーメンだし、大学の時の学食も大体醤油ラーメンだったわ。まあ、それだけ身近だったって事ね」
「ずるずるずる……」
麺をすする音で返事をすればソーセージは一人三本までとどんぶりに放り込まれた。
「だけどこの地域味噌ラーメンでしょ?七味をガツンと効かせてさ。
どこだっけ?猪のチャーシュー入れてくれる所。あれはいいわぁ」
「ずるずる、ずずず……」
「でしょ?ワイルドで食べ応えあって病みつきになるのよ。
塩はね、大学生の時バイクで北海道に行った時の函館ね。
雨降って、唇真っ青になるくらい寒くってとりあえず温まりたくって近くにあったきったない店のラーメン屋に飛び込んだら他に客もいなくて、じいさんばあさんが細々と経営してる店でさ、しまったなーって思ったけど店が暖かかったから席に着いちゃってラーメンを頼んだのよ。お薦めのラーメンでって。
そしたらねぇ、金もない、ほぼ野宿で無精ひげの血の気のない俺を哀れに思ってくれたのか豪華な塩ラーメンでねぇ。出汁でとった後の蟹だけどとかラーメンに乗せてくれてねぇ。あれは美味かったなぁって感動した塩ラーメンの頂点だったわぁ」
「ずずず、ず、ずず……」
「生簀のモクズ蟹は十月から十一月ごろが食べ頃だから今は待ちましょう。食べるならどこぞのシェフみたいに美味しく食べないとね。
それで面白いのが同じ時に北海道で食べた豚骨ラーメンよ。またここもあんまり繁盛してないような店でね。っていうか豚骨なら普通九州だろって思うけどね、そこ、養豚場が作った豚骨ラーメンなのよ!聞いただけで卑怯って思うよねー。
それがまたチャーシューの美味しいラーメン屋さんでね。
大将が『全部自前のラーメンです』って笑わせてくれたのよ。麺も自分の家の畑の小麦から作ったって言うの。
自分で麺を打って切ってるから細麺じゃなくてね。でもあれは豚を極めたラーメンだったって今も先生の豚骨の基準はそこなのよ」
「はむっ、むしゃむしゃむしゃむしゃ……」
「いや、別に豚を飼えって言ってるわけじゃないわよ。ここはクマも多いしね。
でもそこで思ったの。宮下の奥さんあれだけの蕎麦打ちの名人だからラーメンの麺を打っても美味しくなると思わない?」
「んぐっ、んっ、んー……はあ。
ごちそうさまでした」
「え?ちょ、綾人さん?そんなあっさりあきらめないで!
この流れなら烏骨鶏ベースのラーメン食べてみたいって思うのは普通でしょ?
チャレンジしようと思わないの?!」
「烏骨鶏食べるならフライドチキンが食べたい」
「んなの今度シェフにお願いすればいいじゃない?あのシェフ絶対ラーメン何て作ってくれそうもないし!」
「普通においしかったよ?麺打ち上手かったよ」
「くっ、食いそびれただと……」
「猪の骨で出汁を取ったパターンもありました」
「何てレアな?!
いや、豚は猪の改良種だから元は同じか?」
「結局の所作り手の問題じゃない?」
「食べたい物は中々口に入らないか……
良いよ。先生は身近な食べ物を愛する事にしてるから」
言いながらスープと大量の野菜をどんぶりに移してもしゃもしゃと食べながらテレビをつける。その横を着替えを持って風呂場へと向かって土間を越えた家風呂に入って行く後姿を見送って
「久しぶりに会話が成立したな」
鍋にご飯を投入してもう一度温めた所に溶き卵を入れる。
「〆のラーメンを更に〆る。サイコーじゃん!」
長風呂の綾人が出てくるまでにゆっくりと堪能して片付け終える頃茹であがった綾人に
「久しぶりに飲むだろ?」
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