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山を歩くも柵はどこだ 5
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ズボンと靴を泥だらけ草の種まみれにしながら柵があったと思われる所を一周して別れる事となった。
柵はちゃんと途中からあり、健太郎さんが言う所の映画の撮影の場所から見える範囲の柵が取り外されていたのだろうと予測する。その証拠に水路の一角の良く目立つ場所に一纏めにされていて、こんな目立つ場所に置いてあるのに気付かないのはどうよと言う流れにもなった。ただ、持ち主にちゃんと連絡が回ってないと言うのはよろしくないとの流れには当然なる。
あの時は多紀さんは勿論映画の撮影も全く興味持てなかったので、綺麗にスルーしたのだろう想像は容易い。
どうだったかなーなんて記憶にない事はとりあえず家でゆったりとした状態で多紀さんに電話をかけて確認することにする。忙しい人だから出ないよなーなんて判りきっていても一応履歴に残しておけと伝言残しておこうとワンキリは止めて留守電に切りかかるのを待てば
「綾人君?久しぶりじゃないか。
珍しいから驚いちゃったよ」
穏やかなのんびりした声を懐かしいと思って仕舞えば自然に笑みが浮かぶ。
「忙しいところすみません。ちょっと確認したいことがありまして」
言えばギシリと椅子だろうか、背もたれに体重をかけたのだろう音が聞こえた。
「何かあったかな?」
「楮の畑の事で確認したいのですが」
「それは撮影の時に使った畑で良かったよね?」
何かあったのかい?そんな不安そうな声に
「いえ、柵のことです。もう一段高い畑の所に柵があったとおもいますが……」
「柵、ねえ……」
少し考えるように声が遠くなり
「ひょっとしてすごく劣化してた金網の事かな?」
「すみません。それです」
やっぱりというか、当然というか。すごく劣化してたと言うことは柵かどうかも危うい状態だったのだろう。逆にこのことを聞かなくてはいけなくて申し訳なくなるが
「ええと、倒れて抜けてたから引っこ抜いてまとめておいたの、ダメだったのかな?」
「秋に熊が庭先に侵入してきたので柵を貼り直そうとしようとしてるのですが、肝心の柵が見当たらなくて……」
「ごめん!ひょっとして話伝わってなかった?道路から見える川沿いの畑に置いておいたよって伝えたと思ったんだけど……」
「多分俺が聞き逃したのかとおもいましてすみません」
「いや、僕もアシスタントにお願いしたから。報告連絡がうまく伝わってなくってごめんね」
そんな謝罪合戦。
くつくつと笑う多紀さんの笑い声が鎮まって
「映画見てくれたかな?
楮畑の所から話が一気に進むから。
朝焼けの楮畑のシーン是非とも見てもらいたくて。ポスターにも使わせてもらったぐらいいい絵になった」
「ああ、うん。
ブルーレイ予約したよ」
「……」
「……」
痛いくらいの静寂はよく知ってるつもりだがこれはまた種類が違う。
「ブルーレイ予約しました。初回盤で……」
重要なのでもう一度言ってみました。
「何で映画館で見てくれないのおおおっっっ!!!」
「うちからじゃあ映画館遠いんだよっ!!!」
「それを乗り越えて見ようよっっっ!!!」
お互い譲れない主張に叫び合い耳は痛いけど
「せっかく綾人君の家の畑がロケ地になったんだから記念に見るのが持ち主の役目だろ?!」
「言われるまで知らなかった畑に何の思い出があるって言うんだよ?!
台本を波留さんに見せてもらったけど人気俳優を集めての青春に何の感情移入できるんだよ!見た目大切かもしれないけどこの村の何処にあんな美男美女がいるんだよ!こっちは価値観変わるほどの現実と向き合ってるんだよ!烏骨鶏のハーレム築いてウハッてる現実に現実の男女の恋愛なんて必要ねーんだよ!大体こんな田舎の男に憧れる女なんてぜってーヤバいやつって宮下の兄貴が証明しただろ!!!」
「……」
思わず叫んでしまった現実に大和さんはとばっちりだなと思うも無言になってしまった多紀さんに言いすぎたかと思うも、何か言い出すまで忍耐強く待っていれば
「綾人君」
「はい」
まるで何かを決心したような声。
次はどうくると警戒をすれば
「ゴールデンウィーク終わったら会いに行くから」
そう言いのこして通話を切られてしまった。
「多紀さん!ちょっと待って!!!」
何でそんな不吉な事を言って切るのと再度連絡を取ろうとするも電源でも切ったのか留守番サービスにしか通じない。
「嘘だ……」
スマホを畳に転がして項垂れる。
多紀さんがやってくる。
これは確定だろう。だけど問題はそこじゃない。
「一人で来るわけないよな。絶対何かしに来るんだよな」
トラブルを連れてやってくると言っても間違いないと思っている節のある綾人は鳥肌を立てて警戒するものの
「それよりいつくるんだよ」
せめて日時さえ分かっていれば心構えができる。繋がらないスマホに向かっていつ来るのか最低限連絡くれよなと腹の底から叫びたかった。
柵はちゃんと途中からあり、健太郎さんが言う所の映画の撮影の場所から見える範囲の柵が取り外されていたのだろうと予測する。その証拠に水路の一角の良く目立つ場所に一纏めにされていて、こんな目立つ場所に置いてあるのに気付かないのはどうよと言う流れにもなった。ただ、持ち主にちゃんと連絡が回ってないと言うのはよろしくないとの流れには当然なる。
あの時は多紀さんは勿論映画の撮影も全く興味持てなかったので、綺麗にスルーしたのだろう想像は容易い。
どうだったかなーなんて記憶にない事はとりあえず家でゆったりとした状態で多紀さんに電話をかけて確認することにする。忙しい人だから出ないよなーなんて判りきっていても一応履歴に残しておけと伝言残しておこうとワンキリは止めて留守電に切りかかるのを待てば
「綾人君?久しぶりじゃないか。
珍しいから驚いちゃったよ」
穏やかなのんびりした声を懐かしいと思って仕舞えば自然に笑みが浮かぶ。
「忙しいところすみません。ちょっと確認したいことがありまして」
言えばギシリと椅子だろうか、背もたれに体重をかけたのだろう音が聞こえた。
「何かあったかな?」
「楮の畑の事で確認したいのですが」
「それは撮影の時に使った畑で良かったよね?」
何かあったのかい?そんな不安そうな声に
「いえ、柵のことです。もう一段高い畑の所に柵があったとおもいますが……」
「柵、ねえ……」
少し考えるように声が遠くなり
「ひょっとしてすごく劣化してた金網の事かな?」
「すみません。それです」
やっぱりというか、当然というか。すごく劣化してたと言うことは柵かどうかも危うい状態だったのだろう。逆にこのことを聞かなくてはいけなくて申し訳なくなるが
「ええと、倒れて抜けてたから引っこ抜いてまとめておいたの、ダメだったのかな?」
「秋に熊が庭先に侵入してきたので柵を貼り直そうとしようとしてるのですが、肝心の柵が見当たらなくて……」
「ごめん!ひょっとして話伝わってなかった?道路から見える川沿いの畑に置いておいたよって伝えたと思ったんだけど……」
「多分俺が聞き逃したのかとおもいましてすみません」
「いや、僕もアシスタントにお願いしたから。報告連絡がうまく伝わってなくってごめんね」
そんな謝罪合戦。
くつくつと笑う多紀さんの笑い声が鎮まって
「映画見てくれたかな?
楮畑の所から話が一気に進むから。
朝焼けの楮畑のシーン是非とも見てもらいたくて。ポスターにも使わせてもらったぐらいいい絵になった」
「ああ、うん。
ブルーレイ予約したよ」
「……」
「……」
痛いくらいの静寂はよく知ってるつもりだがこれはまた種類が違う。
「ブルーレイ予約しました。初回盤で……」
重要なのでもう一度言ってみました。
「何で映画館で見てくれないのおおおっっっ!!!」
「うちからじゃあ映画館遠いんだよっ!!!」
「それを乗り越えて見ようよっっっ!!!」
お互い譲れない主張に叫び合い耳は痛いけど
「せっかく綾人君の家の畑がロケ地になったんだから記念に見るのが持ち主の役目だろ?!」
「言われるまで知らなかった畑に何の思い出があるって言うんだよ?!
台本を波留さんに見せてもらったけど人気俳優を集めての青春に何の感情移入できるんだよ!見た目大切かもしれないけどこの村の何処にあんな美男美女がいるんだよ!こっちは価値観変わるほどの現実と向き合ってるんだよ!烏骨鶏のハーレム築いてウハッてる現実に現実の男女の恋愛なんて必要ねーんだよ!大体こんな田舎の男に憧れる女なんてぜってーヤバいやつって宮下の兄貴が証明しただろ!!!」
「……」
思わず叫んでしまった現実に大和さんはとばっちりだなと思うも無言になってしまった多紀さんに言いすぎたかと思うも、何か言い出すまで忍耐強く待っていれば
「綾人君」
「はい」
まるで何かを決心したような声。
次はどうくると警戒をすれば
「ゴールデンウィーク終わったら会いに行くから」
そう言いのこして通話を切られてしまった。
「多紀さん!ちょっと待って!!!」
何でそんな不吉な事を言って切るのと再度連絡を取ろうとするも電源でも切ったのか留守番サービスにしか通じない。
「嘘だ……」
スマホを畳に転がして項垂れる。
多紀さんがやってくる。
これは確定だろう。だけど問題はそこじゃない。
「一人で来るわけないよな。絶対何かしに来るんだよな」
トラブルを連れてやってくると言っても間違いないと思っている節のある綾人は鳥肌を立てて警戒するものの
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