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踏み出す為の 4
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フランスに行く前に一度飯田さんにお土産を持って行こうと思って会えるか連絡したら急な出張で留守にするのでと断られたのでお店に行ってお土産だけ手渡して空港のホテルで宿泊する事にした。
飯田さんの料理に癒されればと思って嫌な事は先に済ませておこうとしたけど、飯田さんが留守ならやめておこう。そして嫌な事はしっかりと頭の隅に追いやってしっかりとホテルディナーを満喫する綾人だった。
これと言ってする事はないので早々眠りについて明日一番のフライト時間までにこの移動に疲れた体を休ませておく。
そして一度覚えた贅沢は中々忘れられず、ファーストクラスでゆったりとフランスに移動するのだった。
ご飯美味しいし、窮屈じゃないし、子供も騒がないし、贅沢だよな。
そんな空間を買ったと思えば中々にしていい買い物だと思う。
年に一度の贅沢…… 一度?たぶんね、なんて窓の外を見ながら地上とはまた違う角度の星空をうっとりと眺めるこの世界を堪能できると言うのも至上の極みだ。
家の方は宮下が世話をしてくれると言う。ウコ問題も安心して解決。そして昼間は麓の家に通って長沢さんと扉作りに励んでいると言う。少しずつ工具を貰い受けたり長沢さんも仕事場を麓の家でやる様にして仕事を受け継いでいると言う。
今はご近所さんからの依頼で襖を張り替えたりしているらしい。お正月に綺麗な襖で迎えたいからとこの時期はそれなりに忙しいらしい。その中で圭斗の離れの扉も全部作り直すしかない劣化具合と、俺の台所の方は根本的にサイズが変わる為に再利用不可となった為に新しく作ってもらっている。出入りしやすいようにしてもらったのでサイズ違いなら仕方がないしとアンティークな風格のないカビの生えていた扉は五右衛門風呂で焼却処分されていた。
飛行機の中は特にやる事がないのでトレーダーとは言わないけど株の動向はしっかりと見ている。補助となる情報が得られない環境なのでそこまでガッツリやらないけど、欲しいと思った株を購入しておく。
ただここで問題が発生した。
「やあ、君は前にも、七月の終わりにフランス行きの飛行機に乗ってなかったかい?」
白髪の身なりの良いお爺さんが声をかけてきた。顔に覚えはない。誰だ?
「ええと、まあ……」
それなりに悪目立ちしている自覚はある。
ファーストクラスに乗るのにまったく普通の恰好でノートPCとタブレット、そしてスマホを操る程度の荷物しか持ってなかったのだ。
海外旅行に行くと言うのにトランクも二泊三日程度の少なさだったし、旅行舐めきってる、もしくは上級者な出で立ちは本当に目立っていたのだろう。それに個室に近いこのスペースからほぼ出る事もなかったし、機内を探索する事がなかったから気付かなかっただけで、見られている可能性は全く考えてなかった。
とりあえず老人を立たせるのもあれなのでバーカウンターへと移動してシャンパンを奢って貰う。
「ずいぶんと株を見ていたようだね。ブラインドタッチも滑らかだし、ひょっとしてトレーダーか何かなのかい?」
「ずいぶんとあからさまですね」
あははと笑えば爺さんは少しだけ申し訳なさそうな顔をするも、その目は全く悪ぶってる様子はない。
「なに、私も会社経営しているからな。今時の若いトレーダーの目にはどんなものが魅力に感じるか少し話を聞きたいだけなんだ」
乾杯と言ってグラスを持ち上げてシャンパンを頂く。
カウンターにもたれながらナッツを齧るも、気泡の立つグラスにはこちらを見守るスーツを着た人が映り込んでいた。映像処理していたせいもあって映り込みに気を付けるようにした努力が実を結んだ形に喜ぶも黒スーツ何て正直に喜べないと冷や汗が流れる。
ひょっとして立派な身分の爺さん?それともヤバい系の人?
そんな情報が一切ないので考えている間にシャンパンを飲みきってしまった所で爺さんがブランデーも飲みなさいとおごってもらった。
逃げられない系だと単純な情報を与えて去ろうとする事に決めた。
「トレーダーって言うほど取引してないし、張り付いてまで動向も見守ってません。
基本に乗っ取って、興味のある株を買ってます。あと、俺かなりの僻地に住んでいるのでお取り寄せじゃないけどおいしい物くれる所だとか、どうしても工具は必須なので愛用している会社の応援ではないけどそう言う所はメインに」
「若いのにこれと言った冒険はしてないのだなぁ」
呆れたと言って見せる爺さんに少し前の失敗談を話す事にした。
「株に手を出した頃、好きな電機メーカーの株を買ってたんですよ。お金が溜まったら買う様にしてて……
ある日黒塗りの車がやって来たと思ったらその電機メーカーのお偉いさん達が来ましてね。かなりの株をお持ちいただいてどのような方かご挨拶にってなったんですよ」
目を見開いて驚く爺さんに
「いつの間にかかなりの大株主になっていたらしくって、期間から見ても乗っ取りとかそう言うのを警戒した方がいいと会社の方で方針があったそうで……」
「それはそれは……」
苦笑する爺さんに
「もしご都合があれでしたらって株を売り渡すと言う話になったのですが、乗っ取りでなければこれからもよろしくお願いしますって話しがあって以来何事もほどほどにする事に決めているんですよ」
因みにその株は安定しているので今ももっている。株式総会なんて一度も顔は出した事はないけど。
飯田さんの料理に癒されればと思って嫌な事は先に済ませておこうとしたけど、飯田さんが留守ならやめておこう。そして嫌な事はしっかりと頭の隅に追いやってしっかりとホテルディナーを満喫する綾人だった。
これと言ってする事はないので早々眠りについて明日一番のフライト時間までにこの移動に疲れた体を休ませておく。
そして一度覚えた贅沢は中々忘れられず、ファーストクラスでゆったりとフランスに移動するのだった。
ご飯美味しいし、窮屈じゃないし、子供も騒がないし、贅沢だよな。
そんな空間を買ったと思えば中々にしていい買い物だと思う。
年に一度の贅沢…… 一度?たぶんね、なんて窓の外を見ながら地上とはまた違う角度の星空をうっとりと眺めるこの世界を堪能できると言うのも至上の極みだ。
家の方は宮下が世話をしてくれると言う。ウコ問題も安心して解決。そして昼間は麓の家に通って長沢さんと扉作りに励んでいると言う。少しずつ工具を貰い受けたり長沢さんも仕事場を麓の家でやる様にして仕事を受け継いでいると言う。
今はご近所さんからの依頼で襖を張り替えたりしているらしい。お正月に綺麗な襖で迎えたいからとこの時期はそれなりに忙しいらしい。その中で圭斗の離れの扉も全部作り直すしかない劣化具合と、俺の台所の方は根本的にサイズが変わる為に再利用不可となった為に新しく作ってもらっている。出入りしやすいようにしてもらったのでサイズ違いなら仕方がないしとアンティークな風格のないカビの生えていた扉は五右衛門風呂で焼却処分されていた。
飛行機の中は特にやる事がないのでトレーダーとは言わないけど株の動向はしっかりと見ている。補助となる情報が得られない環境なのでそこまでガッツリやらないけど、欲しいと思った株を購入しておく。
ただここで問題が発生した。
「やあ、君は前にも、七月の終わりにフランス行きの飛行機に乗ってなかったかい?」
白髪の身なりの良いお爺さんが声をかけてきた。顔に覚えはない。誰だ?
「ええと、まあ……」
それなりに悪目立ちしている自覚はある。
ファーストクラスに乗るのにまったく普通の恰好でノートPCとタブレット、そしてスマホを操る程度の荷物しか持ってなかったのだ。
海外旅行に行くと言うのにトランクも二泊三日程度の少なさだったし、旅行舐めきってる、もしくは上級者な出で立ちは本当に目立っていたのだろう。それに個室に近いこのスペースからほぼ出る事もなかったし、機内を探索する事がなかったから気付かなかっただけで、見られている可能性は全く考えてなかった。
とりあえず老人を立たせるのもあれなのでバーカウンターへと移動してシャンパンを奢って貰う。
「ずいぶんと株を見ていたようだね。ブラインドタッチも滑らかだし、ひょっとしてトレーダーか何かなのかい?」
「ずいぶんとあからさまですね」
あははと笑えば爺さんは少しだけ申し訳なさそうな顔をするも、その目は全く悪ぶってる様子はない。
「なに、私も会社経営しているからな。今時の若いトレーダーの目にはどんなものが魅力に感じるか少し話を聞きたいだけなんだ」
乾杯と言ってグラスを持ち上げてシャンパンを頂く。
カウンターにもたれながらナッツを齧るも、気泡の立つグラスにはこちらを見守るスーツを着た人が映り込んでいた。映像処理していたせいもあって映り込みに気を付けるようにした努力が実を結んだ形に喜ぶも黒スーツ何て正直に喜べないと冷や汗が流れる。
ひょっとして立派な身分の爺さん?それともヤバい系の人?
そんな情報が一切ないので考えている間にシャンパンを飲みきってしまった所で爺さんがブランデーも飲みなさいとおごってもらった。
逃げられない系だと単純な情報を与えて去ろうとする事に決めた。
「トレーダーって言うほど取引してないし、張り付いてまで動向も見守ってません。
基本に乗っ取って、興味のある株を買ってます。あと、俺かなりの僻地に住んでいるのでお取り寄せじゃないけどおいしい物くれる所だとか、どうしても工具は必須なので愛用している会社の応援ではないけどそう言う所はメインに」
「若いのにこれと言った冒険はしてないのだなぁ」
呆れたと言って見せる爺さんに少し前の失敗談を話す事にした。
「株に手を出した頃、好きな電機メーカーの株を買ってたんですよ。お金が溜まったら買う様にしてて……
ある日黒塗りの車がやって来たと思ったらその電機メーカーのお偉いさん達が来ましてね。かなりの株をお持ちいただいてどのような方かご挨拶にってなったんですよ」
目を見開いて驚く爺さんに
「いつの間にかかなりの大株主になっていたらしくって、期間から見ても乗っ取りとかそう言うのを警戒した方がいいと会社の方で方針があったそうで……」
「それはそれは……」
苦笑する爺さんに
「もしご都合があれでしたらって株を売り渡すと言う話になったのですが、乗っ取りでなければこれからもよろしくお願いしますって話しがあって以来何事もほどほどにする事に決めているんですよ」
因みにその株は安定しているので今ももっている。株式総会なんて一度も顔は出した事はないけど。
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