人生負け組のスローライフ

雪那 由多

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予想外は本当に無防備な想定外で俺を巻き込むなと言いたいけど何故あとヨロで済ますと怒りながらも付き合う俺素敵だと思う 7

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 今度の生贄は先生の新しい学校の三年生で遠藤健二、高木優、池田琉人だ。
 三人共ガタイ良いなと思えば
「は?元野球部に元陸上部に元サッカー部?なぜに理科部に引きずり込まれた」
 飯田さんにお茶とお茶請けを出して貰って五人で話しを聞く。ちなみに先生は未だに五右衛門風呂で気持ちよさそうに鼻歌を歌っていた。
「俺達怪我でリタイアしたので補欠ではなくマネージャーをしていました」
「マネージャーって三年で?」
「俺達の学校は全員部活に所属する事が義務付けられてますのでどこかに所属しないといけないのです」
「また古臭い風習だな。
 因みに俺が通ってた麓の学校は電車の都合で乗り過ごすと二時間待ちとかあるからさっさと帰らす方針だ」
「道なりに真っ直ぐ来ただけの学校でこんなにも格差が……」
「安心しろ。東京生まれに言わすとお前達の学校も長閑すぎるぞ。まず運動場が地面だってと心から驚きだ」
 既に中学で運動場は校舎の屋上しかなかった土地事情。体育館が整備されていく理由は言うまでもない。もっとも私学ではなかったので古く柵って辟易したけどこっちの学校に比べれば綺麗だったんだよなと意外と生活水準が高かったんじゃね?なんて勘違いしたのは単に五右衛門風呂と竈のある家だからだろう。
「でだ。
 先生が引っ張って来たって事は成績どうなってる」
 聞けば差し出した成績表はそこまでどん底でもない物の
「なんか拍子抜けだな。2とか3とかあいつらの1と2の並ぶ成績表と比べたらまだ可愛いな」
 何て見比べていれば
「すみません。うちの学校10段階なんです」
「なんですって」
 大変申し訳ありませんと言う顔に向かってガチで真顔で聞いてしまった。
 麓の高校は五段階だ。だから新顔の成績表を単純に2で割れば……
「2にも届かないだと……」
「あはは、先生が拾ってきて来そうな生徒さんですね」
 口元を引き攣らせながらも陽気に笑って見せた飯田さん。かなり苦しそうなので頑張ってるなと意識を反らせながら平常心を保ち
「因みに好きな授業は」
「「「体育です」」」
 期待を裏切らない返答に涙が出そうだ。
 弁当の時間ですと言った植田を思えばまともな答えだけどと会話が通じそうでほっとする。
「まあ、今から昼まで学力検査じゃないけどお前達がどこまでできるのか一度見させてもらうから……
 飯田さん、悪いけど縁側から机と座布団持って来ていつもみたいにセッティングお願いします。
 あとトイレは玄関の横のドアを入った所。そして寝る所は向こうの部屋の襖開けると階段あるからその上な。とりあえず荷物置いておいで」
 と言えばさすが元運動部。直ぐに動く様子は感心する物のノートパソコンとプリンターを持って来てだいぶ使ってなかったファイルを開いて懐かしの問題集をプリントアウトさせるのだった。
「とりあえず昼までこれやってて。
 出来る所はどんどんやって、できない所は出来ないままにして。
 何が出来るかどうか見たいだけだから気軽にやって。その間俺は庭の掃除してくるから。何かあったら飯田さん、先生にやらせてね」
「もちろん。先生がお風呂から出て来たら俺は下の畑の方に行かせていただきますので」
 なんて言った後ご飯はどれぐらい食べるのか聞きだして俺もびっくりな量を食べる三人に飯田さんはとてもいい顔をするのだった。

 飯田さんから機械限定と言われている。とは言えはっきり言おう。
 大和さんと宮下の兄弟コンビのおかげで俺が引っ越してきた歴最高の状態となっている。まあ、雑草は日々成長する物だから視線を反らす物の家の近くの木々の枝打ち、側溝のゴミさらい、畑の管理、元馬小屋の管理、更に上の畑の美しい事……
「俺の出る幕ないじゃん」
 しくしくと泣く場所はお約束の烏骨鶏ハウス。抱卵している烏骨鶏にくーくーと何うじうじしてんのよ。卵に悪影響出るから出て行ってと言われているような気がする被害妄想を覚えながらも誰も迎えに来てくれないこの場所も建て付けの悪かったはずの棚もいつの間にか直されていた。
 そりゃあ未だに何があるか判ってない我が家だけど少なくとも母屋は記憶の限り使用感はあれど弄られた形跡はなくほっとしている。ほら、俺の部屋一応散弾銃保管してるからね。あまり言いふらしてないけど知る人は知る、宮下家と飯田さんと猟友会ぐらいしか知らない程度の圭斗も多分知ってるけど表ざたには知らない認知度なので保管の安全性も兼ねて本当に入って欲しくない俺の部屋だけど、まあ宮下ブラザーズが我が家の入り口の前で仁王門の如く立ちふさがってくれているので大丈夫とは思っている。役に立たない仁王様だけど一応大和さんも猟友会に入って猟銃は持っている。
 一応兼業農家だから野生動物退治には協力してくれている。そして宮下は…… 言うまでもないけど。それでも二級電気工技師の免許取った時みたいに勉強しまくって罠師の免許は取ったらしい。いやとったんか?! と言う驚きの方が強かったが一応兄弟連携で宮下が罠を仕掛けて大和さんが仕留めると言う…… 宮下商店がどっちの方に向かっているのか本当に気になる。
 因みに帰って来てから知った事だが肉は猟友会が販売している所に卸して、宮下商店で委託販売していると言う。誰が買うんだと思うも牛や豚に馴染のないこの村の昔ながらいる人達が喜んで買っていくと言う。
 良いのかこの村の住人?!
 都会に馴染めない理由を何となく感じ始める未だに烏骨鶏ハウスで烏骨鶏を抱きしめ癒されている綾人もこの村住人同様何年経っても変わらないようだが

「おら、シェフの奴が探しているぞ。いつまで引きこもってるつもりだ」
 
 なぜか先生が迎えに来た。
 何でと思うも
「宮下が綾人が雲隠れした時はここにいるから迎えに行けって言ってたんだよ」
 何てめんどくさそうに言う先生様はほら行くぞと俺の首根っこを摘まみ上げてずるずると烏骨鶏ハウスから連れ出す始末。
 あらやだ先生、積極的なのね。
 言えばその場で置いていかれるから言わないけど、一応来てくれたのが嬉しくて引っ張られながらもニマニマとしてしまった。
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