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うちの隊長も複雑な人間関係から解放されたいので早くアルホルンに帰りたいと切に願っております

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 アレクの代わりに隣にいるヴォーグの体温によって重なる場所を温かく思いながら随分と贅沢になった物だとアレクから感じる事のない幸せに寄りそってしまえば少し嬉しそうにむずむずとより心地よさそうな場所を探しながら

「なら早々に店に戻れ」
 
 そっけない口調で退出の許可を出していた。
 一礼して去ろうとする二人を見送ろうとした所で

「ああ、言い忘れてた。ルネ、お前も今日からついて行ってメローの屋敷からリオネルを手助けしろ。
 それとリオネルにもう一つ仕事を追加する」
「……はい」

 ヒースが紅茶を運んできてくれてありがたく啜っていれば

「イザムが捨てた商会の全商会の長として取り纏めろ」
「私如きがいきなりそのような事をっ!!!」

 そんな重責に私がなんてと顔を青くするリオネルにヴォーグはそんな事分かってると言う様に俺にもたれてリラックスした姿勢のまま
 
「ヴェナブルズの方の長はワイズがやっているのは知ってるな?
 それを真似してで十分だからまずはお前が俺から預かっている事を商会達に通達、そして俺が引き取ったけど商会を守りきれなかったお前達を直接面倒をみる訳がない事の説明、それを踏まえて今後の事を会合を開いて話し合って来い。
 ドタバタはしたが給与面は現状を維持する事を俺が約束していた事を伝えて欲しい。
 仕事に関しては各商会のやり方があるから素人の俺達が特に口を挟む事はないと言う旨の通達も。
 ただお前に褒美じゃないが前に陶器や貴金属のデザインがウィングフィールドで取り扱える物では満足できない事をぼやいていただろう。
 一つウィングフィールドでも取り扱えるような物を作らせろ。 
 ただしウィングフィールドの客層はあくまでも平民向けだから、せいぜい背伸びをすれば何とか手が届くと言う価格設定で向こうと一緒に考えてみろ。一商会に一点以上がノルマとしてお互いの自己紹介代わりに仕事をして来い」

 そんな恐れ多いと言う気持ちと恵まれたチャンスに興奮と言わんばかりの顔色がせめぎ合うのをヴォーグでなくとも俺も微笑ましく見守ってしまう。
「商会の方が落ち着いたらでいい。この数日中に一度全員を集めて話をするように。
 日にちが決まればワイズにも同行させよう」
「お心づかいありがとうございます」

 深々と頭を下げるリオネルとマリーを見て元団が背後まで来て口を開く。

「いいか、お前がこういう風に頭を下げる必要性はないが、使用人にこのように頭を下げさせてしまうような人格者になれ」
「また無理難題を……」

 騎士だった時どれだけ蔑まされてきたか知らないはずじゃないのにと考えれば貴族ってそれ以上にえげつない一面を知ってる俺としてはワインをかけられたりどこかに閉じ込められたりと言った鉄板の嫌がらせは確実かと考えてしまう。

「無理難題じゃないよ。ラグナーなら慕ってくれていたシーヴォラ隊のみんなが保証してくれている。大丈夫。
 それにもし何かしてくるようならアルホルン大公とヴェナブルズ公爵家の名前を存分に使って叩きのめしていいぞフレッド」

 俺にではなく元団にやらせる辺り本気さを感じればそうならない事を願うしか俺ができる事はない。
 それに普段は宮廷騎士の制服を着ているのだ。
 宮廷騎士の俺に何かすれば反逆罪で掴まるだろうと思うも、それが通用しないのが貴族脳だ。随分悩まされたなと思い出しながら困った時は元団を頼ろうと、これからはもっと気軽に元団を頼る事が出来るんだと言う事に気づいて思わずと言う様に悪い笑みが浮かんでしまった。

「あ、ラグナーなんかすごい笑顔になってる」
「こういう時は変な事を考えてる時だから要注意だぞ」

 酷い誤解のある取説をしているが

「では私達はこれで失礼します」
「ああ、お疲れ様。ルネ、二人をちゃんと店まで送ってね」
「承りました」

 一礼して去って行く一行を眺めながら途端に静かになった室内に

「そろそろアルホルンに帰りたいな」
「なら夕食を食べてからにしよう。
 食べている間にワイズも帰ってくるだろうから王印の入った書類を確認してからでも遅くはないだろう。
 クラウゼ邸に滞在しているハイラには手紙を出して明日の朝迎えに行けばいい。
 少しは実家ともいえるクラウゼ邸でクラウゼ伯との会話を楽しませてやれ」
「そうだね。
 ああ、それとだ」

 ヴォーグは相変わらず俺にもたれたまま元団を見上げ

「公の場以外でいい。いや、公の場でも構わない。
 お前だけは俺を大公とか公爵とかそう言う風に扱うな。今のこのままの通りに俺にもラグナーにも接してくれ」
「命令ですか?」
「命令だ。せめてお前とブルフォードぐらいはそう居てもらわないと友人と言う物が居なくなる。フレッドには公私にわたる歯止め役になって欲しいからな」

 言い終えて返事も聞かずにもう出て行けとフレッドを追い払う手の動きに一礼して下がらせてしまった。
 ほとんどこの国にいなかったヴォーグの友人関係は酷く狭い事は知っていたが、それでも友と呼べる人間が少なすぎるだろうと歯がゆい気分になってしまった。
 







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