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うちの隊長はアルホルン流の冬の過ごし方を満喫してます

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 この冬はあっという間に過ぎて行く。
  始まったばかりの社交界は王位継承の発表を皮切りに話題に富んだ冬でもあった。そんな王都の活気に未練がないと言う様に俺達はアルホルンに戻り日常を過ごしていた。
 冬の寒さが厳しいアルホルンで冬場は一体何をするのだろうと思えば、温室の植物の世話から城から門に繋がる通路の雪かき、薪を割ったり食料調達と言うこれは俺達の仕事なのだろうかと思うも俺より一年長く過ごしている宮廷騎士達はここではそれが仕事だと何所か途方にくれた視線で語ってくれた。
 王都に居る宮廷騎士達との仕事の違いのギャップになれろと言われるも、同期のウィルとアンディも実力不足でここで研修と称した勉強と訓練を受けている。
 そしてもう一人。
 全くついて来る事は出来てないけどイザムも懸命に後を追いかけて来ていた。
 これは俺も予想外だったが最初こそ駄々をこねたり我が儘言って困らせていたがいつの間にかシルビオと意気投合してしまい、上手くトゥーレが誘導して宮廷騎士達との訓練にも参加をさせていたのだ。
 ヴォーグもイザムは周囲に染まりやすいから心配だと喚いていたが、反面教師ではないがシルビオを見てこんな大人になりたくないとトゥーレに付いて座学は勿論戦い方も覚え、剣は覚え始めだから形にもならないけど魔法は元々魔力には恵まれていたようなのでそれなりに出来る様子からトゥーレは調子に乗らせないようにと治療と魔法支援から教えていた。
 もちろん攻撃魔法を覚えたいと喚いたらしいがヴォーグに見本を見せてもらい

「このアルホルンではこの程度が出来ないと魔物に食い殺されるから、これくらいが出来ないうちは魔力の底上げからがんばろうな?」

 俺も元団も出来ないような攻撃魔法をこれが普通だと言わんばかりのトゥーレの真顔の説明にヴォーグを始め誰もが間違いを修正しなくてはと思いながらも口を出さずに見守っていた。
 結果、間違った情報を与えられつつもいつかあのレベルに……と訓練するも簡単に辿り着けないというか人間では着けるはずのないレベルにこつこつと魔力の底上げをすると言う根はいい奴なんだが残念な奴と言うレッテルを俺達に張られたイザムは実戦の出来るシルビオ隊に混ざって今日も魔草取りの護衛としてアルホルンの森で魔物と戦っていた。
 
 俺の日常は朝晩にヴォーグと元団と剣の訓練を日課としていた。
 凍えるような寒さの中で積もりに積もった雪に突き刺さる日々。悔しくもあるがちょっとだけ楽しいのは秘密だ。
 ヴォーグの容赦ない訓練ははた目から見れば雪に飛び込んでいるように見えて楽しそうと人に言われると腹のたつ言葉を言ったウィルとアンディとイザムを巻き込めばあっという間に三人は風邪をひいてしまった。
 
「情けない……」
「お前らがおかしいんだよ!
 雪の中に頭から飛び込んでおいて何で風邪をひかないんだよ!」
「訓練のたまものだな」

 寒い季節は温かなお家の中に閉じこもっているだろう貴族の生活をしている彼らにとっては雪遊びは中々難易度の高い遊びだったらしい。
 とは言え夜勤がない日は付き合ってくれるのだからそれなりに楽しんでいると思うことにしている。
 最もアルホルン常駐する宮廷騎士達も去年全員が雪の中に突っ込まれて風邪をひくという経験したと言っていたが

「たいちょーはともかくアヴェリオ殿もなれてますね。
 さすが元騎士団団長です」

 トゥーレの関心ぶりに頷くシルビオ。
 この二人も風邪なんて知らないと時折訓練に参加してくるも、シルビオ隊の奴らもたまに風邪をひいて寝込んでいる奴らがいるから貴族とか平民とかの生活ぶりは関係ないのだろうと思う様にしている。

「私達はアルホルンの季節の移り変わりと共に過ごした事は勿論、冬のアルホルンを何度も体験した事がある。
 ここでの暮らし方を知っているのも対策の一つだな」

 盛大に雪の中に飛び込む羽目になって雪の中から頭だけを出して説明をする元団が這い出る頃には体温で雪が解けて濡れた服を乾かしたタイミングでそろそろ今朝の訓練を切り上げようと言う。そして結局今日も一人勝ちのヴォーグも俺の頭に積もった雪を払い乾かしながら

「こうやって体を動かして汗をかいているのにいつまでも濡れた服を着ているのが風邪の素だ。みんなも早く着替えるように」

 着替えたらご飯にしようと言うヴォーグの指示に俺達はヴォーグに教えてもらった濡れた服を乾かす程度の魔法を自らかける。
 まだうまくできない奴らは僅かなコントロールミスに叫び声をあげているものの上達しているのは見ていても判る。
 庭から暖炉の中で炎が躍る一室に直接入って冷えて悴んだ指先を温めていれば

「皆様お疲れ様です。
 朝食の準備は出いてますが、まずは一杯どうぞ」

 こってりと濃厚なミルクティーをふるまってくれた。

「ハイラありがとう」

 そう言って一口飲めばシナモンとジンジャーの香りが口の中で広がった。

「温まる~!」
「これは美味しい」

 ウィルとアンディも舌包みを打つ様子にハイラは笑顔で

「こちらはクラウゼ家で寒い日の朝に坊ちゃまにお出ししていた物になります」
「へー、アレクの奴がねぇ。
 こう言ったの飲んだ所見た事はないが……」
「ええ、お出ししていたのはまだ小さい頃のお話なので。
 今ではすっかりと味覚が変わってしまいあまりお飲みになりませんね」
「ふーん、もったいない」
 
 言いながら口を付ければヴォーグも美味しいと言うもテーブルのパンにかけるはずのハチミツをカップに注いで飲んでいたのを見て一口貰う。
 さらにこってりとした甘みが加わるがこれも悪くないなとそのまま全部飲んでしまった所で苦笑する姿に俺のカップをヴォーグに渡すのだった。
 そして全員がテーブルに着いた食事の時間になった。
 本日は朝の訓練の後に着替えの戻ったイザムが一番最後に席についた。彼は最近ではシルビオ達も含めて俺達と食事をとる様になり、逞しくも宮廷騎士の食欲に負けまいと山盛りのパンの籠に手を伸ばすようになった食事はとても賑やかでこんな日がずっと続けばいいなと願わずにはいられなかった。









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