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うちの隊長はこの夜の物語を誰にも語るつもりはありません
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ラグナーは手に入れたリボンを目の前に並べて苦戦をしていた。
なにせリボン結びを極める事無くこの年までなんとなく過ごして来てしまったのだ。極める理由も必要ないが、ネクタイを絞めれて荷物を纏めれて下手人を縛れればいいだろう。ラグナーのそんな紐に対する知識はその程度で実用的すぎる内容しか頭に入っていない。
そもそも何度結び直しても縦結びにしかならないし、練習台のベアーの手によって購入したリボンには毛が付き、失敗に依れていく。
なによりリボンという紐なのにびっくりするほど高く、アレクが俺のお気に入りの店の店長と何処か死んだ目でリボンを選んでくれたものしかないのだ。
残りはもう少ない。
不思議そうな顔をする店長に肝心のプレゼントがまだ決まってないと説明をする。言えるわけないから黙って選んでくれた三種類の色合いのリボンを全部買った。
長さなんて判らないし、ヴォーグがくれたお金だ。金額を聞けば全然余裕。出し惜しみする事無く購入したのだった。アレクの白い視線を受けながら……
とは言え光沢のある滑らかな素材のリボンでも上達するわけもなくただ無駄にしていく様子にもう一度教えてもらったリボン結びを試す物の結べば最後は縦になる不思議。試行錯誤力加減を考えながら繰り返すも上達何てどこにあるとムキニなっていた時だった。
カチャリ
扉の開いた音が聞こえて
「ただいまー。
ラグナー先に帰ってたんだね。今すぐご飯の用意するよ」
パタパタと家の中に駆け込んできてキッチンの机に荷物を置こうとした所で……
「ジェノサイドベアーの手、かな?」
「ああ、うん。なんかの手だと思うんだが……」
さすがに俺ではミスリルベアーのような特徴のないジェノサイドベアーとキリングベアーの違いは良く判らない。毛色も同じだし、手だけじゃ違いが分からなく何が違うと唸りながら二本の手を並べて見比べれば
「ええと、それ食べたいのかな?
だけどまだ殺して直ぐだから、熟成してないから硬くて食べれたもんじゃないよ?」
難しそうな顔をするヴォーグにこの作戦が見事失敗した事を悟るまでもなかった。
「いやな、別にベアーが食べたいわけじゃなくって……」
失敗の恥ずかしさに俯いてしまうもヴォーグは俺が腹を空かせていると思ってか食べごろの肉で料理を準備しようとするので、慌ててその背中からしがみ付いた。別に腹が減ってるわけじゃないと。
「ラグナー?」
「ああ、うん。ちょっとこうしたくて」
ムカつくくらいの広い背中の抱き心地は悪くはない。ただ多少ムカつくが、ヴォーグがこう言う甘え方を許してくれるのは俺だけな事を知っていて……
「ラグナー、後ろからより前からの方が嬉しいんだけど?」
その言葉に腕の力を緩めればくるりと振り向いたヴォーグに抱きしめられたと同時に唇も貪るようなキスが降り注ぎ
「ラグナーが積極的なのは知ってるけど、折角なら帰って来た時にしてくれればもっと嬉しいのに」
「まぁ、なかなか作戦が成功しなくてな」
「作戦?」
「リボン結びが出来なかったのがそもそも失敗だったんだ」
「リボン結び?」
首をかしげたヴォーグはしばらくしてベアーの手にまかれたリボンの残骸を見て納得をしたのだった。
「代わりに結ぶよ。
何を結ぶつもりだったんだい?」
まるで自分へのプレゼントじゃないと言うような質問は大方アレクへの嫌がらせだと思ったのだろう。それも悪くないが、アレクにこんなビックリするような値段のリボンを使うわけないじゃないかと心の中で言い訳をしつつ
「うん。もういいんだ」
恥ずかしさに失敗の悔しさはない。ただ、よくよく考えたらとんでもなく恥かしい事をしようとしてたのではと気づけば顔が赤い事を悟られないようにそっぽを向けてしまえばくすくすと笑うヴォーグに逃げ場所が無い事を悟ってしまった。
「何悪戯しようとしてたかは判らないけど、このリボン貰っても良い?」
「まぁ、俺の練習台になるぐらいよりは有効活用してくれ」
三色の美しい上等なリボンを押し付ければ、ヴォーグは青色のリボンを手に取り
シュルリ……
俺の首を二重三重と巻いて、項の辺りで複雑な形のリボンを結ぶのだった。背中側の事なので良くは見えないが
「器用だな?」
「よく店のラッピングを任されたので慣れた物だよ?」
にこりと笑う顔がやけに意地悪く見えた。
ああ、これはもう……
「利用方法は判っただろ」
「この幅ならよほどの大物じゃないと合わないからね」
くすくすと結び目の辺りに唇を落して
「面白いお誘いだからまさかとは思ったけど?」
「そのまさかです」
あまりの恥かしさに俯いてしまうも、ヴォーグは嬉しいと思ってくれたのか素のままちくりと項に痛みが走り
「明日の予定は?」
「当然休み。折角だからヴォーグの休みのうちに休みを貰って来た」
「すごく嬉しい」
背骨に沿うように唇がゆっくりと落ちて行く。
シャツのボタンが丁寧に外されて、いつの間にか背中は剥き出しで。
「森の中のお誘いの仕方も凄く色っぽかったけど、こんなお誘いもかわいくって、どうされたい?」
ゆっくりとズボンの前をくつろげてくれてきゅっと中心を握る手はほんのりと温かくて
「とりあえず、そのリボンを有効活用してみようか」
どうせ恥をかくのならとことんだと言う様に言えばピタリと動きの止まったヴォーグだったがふるりと体を震わせて
「俺、面白い結び方知ってるんだけど?」
「その言い方、ろくでもないんだろうな」
少しお伺いをするような問いかけの時は決まって真面だった時はない。だけどそれを許してしまう俺も大概だと思いながら
「二階に行こうか?」
「その前にキスをもっと欲しい。
その気にさせてから二階に連れて行って?」
「お望みのままに」
正面に向きなおして唇をはむように、そして交わるように、深く、深く……
あまりの心地よさにしがみつきなが喘ぐ様に息を求めれば、うっとりとした目で俺だけを見る瞳の中の俺は自分で言うのもなんだが凄く刺激的なくらい情婦顔負けのエロい顔をしていて、そんな顔をさせるヴォーグを少しだけ恨めしく思いながらも導かれる快楽に溺れて行って……
この後二階に連れてもらってから何があったかは誰にも話すつもりはないが、話したくても話せないような、二人だけの特別な時間を重ねて行く事を幸せと言うのだろうかと思うのだった。
***************
****************************************
今回の話はここでおしまいにまります。
お付き合いありがとうございました。
なにせリボン結びを極める事無くこの年までなんとなく過ごして来てしまったのだ。極める理由も必要ないが、ネクタイを絞めれて荷物を纏めれて下手人を縛れればいいだろう。ラグナーのそんな紐に対する知識はその程度で実用的すぎる内容しか頭に入っていない。
そもそも何度結び直しても縦結びにしかならないし、練習台のベアーの手によって購入したリボンには毛が付き、失敗に依れていく。
なによりリボンという紐なのにびっくりするほど高く、アレクが俺のお気に入りの店の店長と何処か死んだ目でリボンを選んでくれたものしかないのだ。
残りはもう少ない。
不思議そうな顔をする店長に肝心のプレゼントがまだ決まってないと説明をする。言えるわけないから黙って選んでくれた三種類の色合いのリボンを全部買った。
長さなんて判らないし、ヴォーグがくれたお金だ。金額を聞けば全然余裕。出し惜しみする事無く購入したのだった。アレクの白い視線を受けながら……
とは言え光沢のある滑らかな素材のリボンでも上達するわけもなくただ無駄にしていく様子にもう一度教えてもらったリボン結びを試す物の結べば最後は縦になる不思議。試行錯誤力加減を考えながら繰り返すも上達何てどこにあるとムキニなっていた時だった。
カチャリ
扉の開いた音が聞こえて
「ただいまー。
ラグナー先に帰ってたんだね。今すぐご飯の用意するよ」
パタパタと家の中に駆け込んできてキッチンの机に荷物を置こうとした所で……
「ジェノサイドベアーの手、かな?」
「ああ、うん。なんかの手だと思うんだが……」
さすがに俺ではミスリルベアーのような特徴のないジェノサイドベアーとキリングベアーの違いは良く判らない。毛色も同じだし、手だけじゃ違いが分からなく何が違うと唸りながら二本の手を並べて見比べれば
「ええと、それ食べたいのかな?
だけどまだ殺して直ぐだから、熟成してないから硬くて食べれたもんじゃないよ?」
難しそうな顔をするヴォーグにこの作戦が見事失敗した事を悟るまでもなかった。
「いやな、別にベアーが食べたいわけじゃなくって……」
失敗の恥ずかしさに俯いてしまうもヴォーグは俺が腹を空かせていると思ってか食べごろの肉で料理を準備しようとするので、慌ててその背中からしがみ付いた。別に腹が減ってるわけじゃないと。
「ラグナー?」
「ああ、うん。ちょっとこうしたくて」
ムカつくくらいの広い背中の抱き心地は悪くはない。ただ多少ムカつくが、ヴォーグがこう言う甘え方を許してくれるのは俺だけな事を知っていて……
「ラグナー、後ろからより前からの方が嬉しいんだけど?」
その言葉に腕の力を緩めればくるりと振り向いたヴォーグに抱きしめられたと同時に唇も貪るようなキスが降り注ぎ
「ラグナーが積極的なのは知ってるけど、折角なら帰って来た時にしてくれればもっと嬉しいのに」
「まぁ、なかなか作戦が成功しなくてな」
「作戦?」
「リボン結びが出来なかったのがそもそも失敗だったんだ」
「リボン結び?」
首をかしげたヴォーグはしばらくしてベアーの手にまかれたリボンの残骸を見て納得をしたのだった。
「代わりに結ぶよ。
何を結ぶつもりだったんだい?」
まるで自分へのプレゼントじゃないと言うような質問は大方アレクへの嫌がらせだと思ったのだろう。それも悪くないが、アレクにこんなビックリするような値段のリボンを使うわけないじゃないかと心の中で言い訳をしつつ
「うん。もういいんだ」
恥ずかしさに失敗の悔しさはない。ただ、よくよく考えたらとんでもなく恥かしい事をしようとしてたのではと気づけば顔が赤い事を悟られないようにそっぽを向けてしまえばくすくすと笑うヴォーグに逃げ場所が無い事を悟ってしまった。
「何悪戯しようとしてたかは判らないけど、このリボン貰っても良い?」
「まぁ、俺の練習台になるぐらいよりは有効活用してくれ」
三色の美しい上等なリボンを押し付ければ、ヴォーグは青色のリボンを手に取り
シュルリ……
俺の首を二重三重と巻いて、項の辺りで複雑な形のリボンを結ぶのだった。背中側の事なので良くは見えないが
「器用だな?」
「よく店のラッピングを任されたので慣れた物だよ?」
にこりと笑う顔がやけに意地悪く見えた。
ああ、これはもう……
「利用方法は判っただろ」
「この幅ならよほどの大物じゃないと合わないからね」
くすくすと結び目の辺りに唇を落して
「面白いお誘いだからまさかとは思ったけど?」
「そのまさかです」
あまりの恥かしさに俯いてしまうも、ヴォーグは嬉しいと思ってくれたのか素のままちくりと項に痛みが走り
「明日の予定は?」
「当然休み。折角だからヴォーグの休みのうちに休みを貰って来た」
「すごく嬉しい」
背骨に沿うように唇がゆっくりと落ちて行く。
シャツのボタンが丁寧に外されて、いつの間にか背中は剥き出しで。
「森の中のお誘いの仕方も凄く色っぽかったけど、こんなお誘いもかわいくって、どうされたい?」
ゆっくりとズボンの前をくつろげてくれてきゅっと中心を握る手はほんのりと温かくて
「とりあえず、そのリボンを有効活用してみようか」
どうせ恥をかくのならとことんだと言う様に言えばピタリと動きの止まったヴォーグだったがふるりと体を震わせて
「俺、面白い結び方知ってるんだけど?」
「その言い方、ろくでもないんだろうな」
少しお伺いをするような問いかけの時は決まって真面だった時はない。だけどそれを許してしまう俺も大概だと思いながら
「二階に行こうか?」
「その前にキスをもっと欲しい。
その気にさせてから二階に連れて行って?」
「お望みのままに」
正面に向きなおして唇をはむように、そして交わるように、深く、深く……
あまりの心地よさにしがみつきなが喘ぐ様に息を求めれば、うっとりとした目で俺だけを見る瞳の中の俺は自分で言うのもなんだが凄く刺激的なくらい情婦顔負けのエロい顔をしていて、そんな顔をさせるヴォーグを少しだけ恨めしく思いながらも導かれる快楽に溺れて行って……
この後二階に連れてもらってから何があったかは誰にも話すつもりはないが、話したくても話せないような、二人だけの特別な時間を重ねて行く事を幸せと言うのだろうかと思うのだった。
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今回の話はここでおしまいにまります。
お付き合いありがとうございました。
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ヴォーグとのお別れが早すぎて泣いてしまいました。ラグナーが思いきって子供を作ったのにはとても驚きました。意思を継ぐのはとても大事ですがヴォーグが大好きなのにラグナーが決心したときも泣いてしまいました。私はラグナーみたいにできるかわかりません。とても素敵な物語をありがとうございます。これからも応援しています。頑張って下さい。
Kazu様
感想ありがとうございます。
ヴォーグの短くも満ち足りた一生と、生涯を愛した人の為に尽くせる相手に出会ったラグナーの話なので、悲しみ混じりの暴走は想定の内です。アレク談。
今を見据えてではなく二人を直接知る人がいなくなった未来に向けての準備は再会を願ってのような思いも混ざっているのではと考えたりします。
長い話なのに最後までお付き合いありがとうございました。
読み終わりました!
素敵な作品をありがとうございます😭
佐倉田様
読んでくださってありがとうございます!
素敵な作品と楽しんでいただけて幸いです。
男二人でリボン…笑
砂糖吐く場面でおしまいなのですね。
ってか、おしまいかぁぁぁぁぁ 号泣
さく様
感想ありがとうございます!
男二人でリボンを結びながらイチャイチャとする先をどうぞ想像で楽しんでください!
結んだり、縛ったり、擽ったり、目も傷めずに目隠しできる幅なので活用方法は無限大です!
ヴォーグも見事欲望のままに使い切るでしょう!<そこを書けよ!!!
BL小説大賞も終わりました。短い復活の間でしたがありがとうございました!