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雪那 由多

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春になって心機一転するかどうかはまた別の話し 4

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「修司さーん、しのさん次はいつ来るの?」
「んー?今週末は忙しいからその次の日の仕事終わりに寄ってくれるとは言っていたけど」
「「「くそっ! バイトが入ってる!」」」
「まあ、銭湯の掃除だからな。お前らの風呂も兼ねて閉店後もしっかり掃除して来い」
「分かってるけどさあ……」
 しょんぼりとする陽人。同様に瑞己と颯也もしょんぼりとしている。
「って言うかなんか用事でもあったか?」
 あまりに気落ちしている様子に聞けば
「単にしのさんに癒されたいです」
 ものすごくいい顔で颯也は言い切った。
 それはよくわかると頷きたかったが
「お前らがしのさんに癒されるなんて十年早い」
「十年長い!」
 颯也は嘆くが
「しのさんは立派な社会人で仕事もしてるんだ。
 お前らの癒しの為に仕事の合間にここの補修をしに来てくれてるわけじゃないんだぞ」
 言えばわかっているという様にしのさんリクエストのチンジャオロースを食べていた。
「ううぅ、ピーマンの割合多すぎです」
 別に嫌いじゃないけどもうちょっとお肉多めが良いと文句を言う瑞己にそこは俺も納得。
「仕方がないじゃないか。しのさんったらピーマンいっぱい貰ったからいっぱい使おうって切っていくし」
「え?しのさんの手作りですか?」
 颯也がなぜかテンション上げてきたけど
「俺がピーマンケチろうとしたら少ないって言って容赦なく切っていったんだ。切ってくれただけだぞ」
「「ああー……」」
 陽人と瑞己も納得。
「修司さんピーマン嫌いだからね」
「しのさんって出されたものは食べなさいだからね」
「って言うかその歳でピーマン嫌いってないっすね」
 颯也は普通においしいのにとモリモリ食べている様子。そんなに美味いかと思うも
「確かにしのさんが持ってきてくれたピーマンはそこまで苦くないけどさ。
 苦くないけど結局ピーマンの味がするじゃん。美味しくないよね」
「「いえ、十分美味しいと思います」」
 三人そろって裏切りやがった。
「だけど苦手って言いながらもちゃんと食べたんでしょ?」
「最後はしのさんが食べさせてくれました」
「「「いいなあぁ~!」」」
 三人に思いっきり詰め寄られるものの

『別に食べれないわけじゃないでしょ?』

 なんてにっこりした顔であーんと食べさせてくれた。
 いや、いくらしのさんとは言えそれは嬉しくない。
 手間のかかる弟のような扱いをされて浮かれる年でもない。
 あまりにも苦い思い出を思い出しながら涙を浮かべれば
「まあ、苦手なものを食べるのは苦痛だよな」
「けど修司さんが作った物でしょ? 苦手なわりにチンジャオロース美味しいっすよね」
 素朴な颯也の質問には
「苦手だから美味しく食べれるように研究したんだよ。結果ピーマンじゃなくても美味しく食べれるようになりました」
「チンジャオロースの主役を半分消滅させないで?!」
 陽人がなんて事をと言うものの
「いいじゃん。なくても美味しいし?しのさんが食べたいって言わなければ間違っても作らないし?」
「せっかく美味しく作れるのなら食べましょう!」
「いや、今日で一生分食べたからもういい。って言うか陽人、お前ピーマン好きだな?」
「ピーマンがまだ余ってたらピーマンの肉詰めを熱望します」
「山ほどあるぞー。明日にでも作ってやるなー」
 なんて俺は返事をしながらガッツポーズ。
 ピーマンの肉詰め、つまりは大量消費が出来る。
 そうか。こうやって消費すればいいのかとピーマンメニューを考える。
「ってかピーマンメニューって全然思いつかないんだけど」
「なにが?」
 しのさんのおかげで無限物理的チンジャオロースを攻略している三人に
「ピーマン料理。野菜炒めに加えるぐらいか?」
 悩む俺に
「あ、ピーマンの肉詰めで十分です」
「ピーマンの肉詰め、お肉沢山で美味しいですよね」
「お肉とピーマンの組み合わせ最高です」
「理由はそこだったか」
 食費と言う財源があるのに何をほざいていると思ったものの
「分かった。肉なしチンジャオロースだな。得意だから任せろ」
 肉なしピーマンの大量消費。なんてよいメニューだと喜べば
「お肉!豚肉で良いのでピーマンの肉詰めを!」
「くっ、修司さんの鬼畜モードがひどすぎるんだけど?!」
「泣くな!前の和ちゃんのお肉なし料理の日々を思い出せばピーマンを食べ尽くせばお肉が戻ってくるから!」
「「なるほど」」
 その瑞己の発想には俺も感心してしまった。
 って言うかお婆ちゃん和ちゃんて呼ばれてたんだと俺の前では大家さんと呼んでいたのにちゃんと使い分けてたんだなーとこいつらの器用さに少し感心をしてしまいながら

「ひょっとして俺の事も修ちゃんとか呼んでるとか?」
「え?流石にちゃんはないでしょ。ちゃんは」
「せめて修さんとか?」
「なんかまだしっくりくる呼び名を探している所」
 なんだかそのまま卒業していきそうな雰囲気を感じたものの
「とりあえず修司さんでいいかってなってね」
「さすがに大家さんとか慣れてないでしょ」
 もりもりとチンジャオロースを食べながら語るけど、あれだけ山だった物理的無限チンジャオロースにも終わりが見えてきたのにはびっくりだ。
 俺だったら途中で脱落する量なのに好きな奴って本当にいくらでも食べるんだと引いてしまうも一番に山盛りご飯も食べ終えた瑞己は満足そうな顔をして自分の食器を洗う。
 さすがにいつ帰ってくるかわからない奴の皿洗いの面倒までは見るつもりがないので自分たちで洗う事になっているのはお婆ちゃんの躾だ。まあ、こいつらの場合もともときちんとできる子だったからその点は問題ないけどね。そういう意味ではトラブルになったという話は聞いたことはない。トラブルになるような家庭の子がいないというのもあるが……
 次々に胃もたれをしそうな量を食べ終えた三人は缶ビールを持ち出してきたところを見て
「じゃあ、俺は寝るから。電気の消し忘れには注意しろよ」
「おやすみなさい」
「しのさんと連絡するならごちそうさまって伝えてください」
「明日も今日と同じ時間にバイト行くのでよろしくお願いします」
「了解。おやすみー。あと戸締りよろしくー」
 なんて玄関までお見送りしてくれる三人は俺が出た所でちゃんと鍵をかけてくれた。

 ここから先は三人の時間だからという様に離れの家へと戻って明りを点ければネットで購入した本を段ボールから取り出して本棚に並べる。
 結構な数を購入した本は英語で書かれた本で
「やっぱりこういうのは日々目にしていないと忘れるからな」
 翻訳家として仕事を目指したいというのは夢だというのは分かってるが
「勉強はいくらしても足りないからな」
 結局のところ本の虫の俺としては読みたい本が海外の本ばかりなので読んでは自分的に日本語に訳してから翻訳された本を読んでセンスのなさに羞恥心が溢れ出すという一人遊びを続けるのだった。







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