異世界召喚に巻きこまれたらスマホがバグって騎士団団長の妻になるそうです

雪那 由多

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聖女、豹変。

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 お昼の時に薄いけどお化粧が崩れるくらい号泣した聖華ちゃんは今度はそれこそ聖女の微笑みと言う様に慈しみを浮かべた穏やかな、でも瞳には涙が溜まってて、それを懸命に零さないようにまるで何かを決意する、そんな瞳で映像が終わってもしばらく眺めつづけていた。
 ゆっくりと顔を上げた時に一筋の涙がこぼれ、綺麗だなと、タイミングを逃して部屋を出そびれたエリエルと一緒にこの何とも言えない神聖な時間を黙していた。
 だけど俺は違和感を覚えずにはいられない。
 安心から感極まっての号泣。
 涙は心の滓を洗い流すと言う様に、心の拠り所を手に入れた彼女が次にする事は……

 物凄い勢いで指がシュッシュ動いていた。
 風を切るような音、画面をスライドする摩擦の音、それはどっちだろうかと俺以外は何をやってるか判らない様子をただ見守る周囲と俺との温度差は歴然だ。
 やがて……

「天鳥さん在りました!
 続編が嬉しくってスクショしまくってたんですよ!
 ほら見てください!あ、隣失礼しますね」

 この世界では男女が肩を寄せあって…… なんてはしたないのだろうと思われないのかと思えば俺の視界の端では『男女の密着ははしたない』なんて文字が現れていた。
 こう言ったマナー講座も大切だよなと思うだいぶアンサーにも慣れた俺はやっぱり中世かよとつっこむ間にもぐいぐいとスマホの画面を見てくださいと謎の押しつけで見せてくれる彼女に俺だって未成年の少女とこんな密着何てギルティだと戸惑う物の、見せてくれた画面はこのクソゲーの世界の大雑把な紹介。

 続編は前作の三年後設定なのでどれもこれもキャラクターが大人びていた。
 ただし主人公の男女はまだ若々しい青春を謳歌している二人。
 間違ってもくたびれた三十路一歩手前ではない。
 だけどこの設定を見ればそこにはクラエスがいて、セリム、アレックス、エリエル、王弟殿下、宰相に冒険者の人。
 前作の上位互換されたキャラクター設定と言うセレブ、いやブルジョワ感が半端ない。筆頭侍女のハウゼンさんだって伯爵席があるのだ。セリムは由緒ある元伯爵家の人間、何か名声を上げればすぐに貴族籍を得られるだけの血筋だけにきっとこのゲームの展開次第では貴族に戻るルートもあるのだろう。

「天鳥さんに是非見てもらいたかったのは、このゲームですね分岐点があって伴侶を選ぶとNLかBLとかTLとかにルートが変わるんですよ。まだそのポイント判ってないのですけどね」

 ほらと言う超重要分岐点に結婚相手次第で運命が大きく変わると言う謎の文字。
 既にポイントは通過していた俺としてはもっと早く教えてくれと心の中で絶叫だ。

「あー……どういうこと?」

 心の中が在れれば荒れる程表面的な完感情は冷静になる俺は素直に聞けば

「たとえば主人公が普通に反対の性別のコースに行けばその後も男女関係なく仲良くなれて、女の子のキャラが女の子と結婚するとその後の展開も女の子と濃密にR-18的に絡んでいくって言う分けです!」

 キャー!また言わせないでくださいよ!!!と俺の肩をバンバン叩く聖華ちゃんの言葉を意識の遠くで反芻していた。
 つまりこれは俺が身の安全に走ったばかりにクラエスと結婚したからの……

「あ、天鳥さんはクラエスさんとご結婚なさいましたのでBLコースまっしぐらですね!
 だけど安心してください。この設定は主人公にしか適応されないので大丈夫ですよ?」

 ムンと胸を張る聖華ちゃんの頼もしいねと顔では笑い……
 大丈夫じゃありません。
 もろBLコースです。
 ガッツリと主要キャラの上位を攻略済みしてます。
 心の中の俺は大泣きだ。
 浮き沈み激しいなと思う間にもスマホの画面はくるくると変わり

「このゲームの特徴はですね、魔物とか魔障とかを浄化する為に光竜を育てなくてはいけないんです」

 聖華ちゃんはうっとりと画面を見て熱のこもった溜息を零す。画面に映るイケメンさんにご執心の用で、それはまさに恋する少女の顔だった。

 そこでコンコンとまたノックがされた。外にいた女騎士さんがクラエスが来た事を教えてくれたので俺はどうぞと言えばクラエスと王弟殿下が並んでやって来た。
 俺と聖華ちゃんの距離に顔を潜めるクラエスだったがそんな事今眼中にないと言う聖女様は久しぶりの大好きな世界の情報にはしゃいでいて、何故か今も居続けるエリエスも黙っているから同じように怪訝な顔をしながらも傍らで俺達の様子を見守る様にしてくれたらしい。
 いや、そうじゃない。ここから脱出させてくれと視線で訴える物の

「この光竜ヴォージャンシーの育成がゲームのポイントなのです!」

 何か重要な事を言ったけど元気すぎる少女のテンションに疲れた俺は

「信愛度を高めるのがポイントじゃないのかよ?」

 思わず聞いてしまう。
 もうちょっと子供には親切にしてやれと言わないでくれ。
 今まで言ってた話しではそちらの方がメインのように聞こえたのだがどうやら他にもポイントやらはあるようだし名前は違うけど光竜の話しならもふの為にも役立つ。気分はもうお母さんだ。
 
「光龍ってヴォージャンシーって言うんだ。中々おしゃれな名前だな」
「素敵でしょ?お父さんの書斎に飾ってあったシャンパンだったかな?小さい頃からラベルのイラストがすごく好きで覚えてたの」

 スパークリングワインではなくシャンパンがある家だ何てすてきーと縁のないご家庭にやっぱりお嬢かよとそれこそ縁のない庶民だが、見てみてと迫ってくるお嬢さんに俺は縁なんかいらないと少しだけ願ってしまう。

「あ、光竜の名前は主人公達同様私達が付けるからプレイヤーの性格が出て楽しいよね!」

 なにげにもふをディスられた気がした。


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