隣の古道具屋さん

雪那 由多

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愛すべき時を刻む音 1

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 はたきの人と九条が帰り、家に戻ればこんなまだ開店前だというのにお袋がお客様から電話を受けていた。
 依頼かな?
 なんて側で聞き耳を立てていれば開店より速くお客様をお迎えすることになったようだ。
 こういうのは時々ある。
 怪異を起こすものが持ち込まれる場合が特にそうだ。
 少しでも早く問題を解決してほしくて、必死になって何件も回った先でたどり着いたというのが理由の一つ。
 時々お寺でも受け取り拒否されるものを古美術商に持ち込んで買い取ってもらおうなんて不埒な奴もいるが……
 うちでは手に負えない物も一度引き受けて懇意にしている能力者様に処理をお願いすることになっている。
 それが九条の所だって言うのを聞かされた時は驚いたけどね。
 逆に処理するまでもないモノはうちに持ってきて修繕して穏やかな時間を過ごしてもらったりと言った事をしているらしいけど……
 そうするといずれ抜けていくというらしい。
 不思議な話だと思いながらも俺は先日視た俺の中からたたき出された呪いを九条が九字で消滅させるあの光景を見れば全然修繕して穏やかな時間を過ごしてもらう方を選びたいと思っている。
 呪いとはいえ消滅されるとき一瞬死への恐怖の叫び声をあげていたような気がして……
 少しだけ感情をそげ落とした九条の顔も忘れられずにいた。
 それを見て俺が選ぶ世界は甘いのだろうと思われるけど……
 そんな選択のある世界だっていいじゃないかと俺は思う。
 
 とりあえず電話の内容をお袋が親父に報告に行くから俺もついて行って一緒に話を聞く事にする。
 話を聞く分にはいくらでも聞かせてくれるから毎回聞かせてもらう様にしている。
 因みに場所は親父が新聞を読みながら茶をすする台所。
 事務所的な場所なんてないけど作業場には店番をしてくれるパートのおばちゃんや工房で働いてくれる職人さんたちの休憩所がある。
 けどこの話はうちの家の仕事なので職人さんたちには聞かせないようにしているけどね。
 もっともこういった怪異は封印の間に置いておいても何か不思議な事が起きるので長い事一緒に修繕を手伝ってくれる職人さんたちは察してくれているけど今ではなれたという様に、でも脅えずに黙々と仕事をしてくれるいい人たちばかりだった。

 今回台所でお袋が言うには

「明治時代ごろに購入したと言われる置時計が先日依頼者のおじいさまが亡くなったころから不思議な事を起こすようになったそうで……
 このままでいいのか、それとも処分するべきか相談していたらこちらを紹介されたらしいです」
「置時計か……」
 ぜんまい式だろうか何だろうかちょっと楽しみだよな。
 あの時代はすごく質の良い木を使っているから見るだけでも芸術品だろうなと思いを膨らませていれば
「それでいつこちらに来ると言っているんだ?」
「それが見てもらえるのなら今すぐにでもとなりまして……」
「そうか、香月。お前も準備しておきなさい」
 なんて珍しい事と言うか初めて親父に積極的に参加するようにいわれた。
「え、えーと…… いいのか?」
 慎重になって本当に?という様に聞けば
「体質も変わった。
 そういう意味でお前も自分と向き合うには今回の品はそこまで難易度の高いモノではないだろう。まずは隣で話を聞く事から始めようか」

 まさかの後継者教育がついに始まって、少しだけ舞い上がる俺は隠しきれない笑みがにじみ出てしまえば

「ご依頼人は必死の思いをしてくるのだから、そんな顔をするなら下がっておれ」

 丸めた新聞で頭をたたかれてしまうものの

「いや、ちゃんとするから。一緒に話聞かせてください!」
 
 そこは親子と言うより師弟と言う様に頭を下げてお願いするのだった。
 
 
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