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愛すべき時を刻む音 3
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親父と二人で作業場へと移り、星崎さんを呼ぶ。
星崎さんはうちで雇ってる職人さんで機械類も得意としている。
そして目の前に置かれたアンティークな時計に目を輝かせ、背後のねじをはずめて背板を外してただ一言。
「社長、悪いけどこれ俺の手に負えないですよ。
オーバーホールが必要なのは分かるともいますが、中の部品全とっかえが最低限必要となります。
このブランド、スイスのメーカーだと思います。とっくになくなっていて修理できる人はもうほとんどいないし、部品全とっかえって言ったけど全部品作り出しになりますよ」
ふわ~、いいもの見ちゃったなんて星崎さんはご満悦だけど
「まったく見込みはないのか?」
親父が聞けば
「クリーニングは綺麗にできていると思います。
ですが金属疲労、金属も腐食しているし、歯車、角がみんな落ちてます。
歯車がかみ合って動かすはずなのにこれだけ角が丸まってると時計も正しく時間を刻むことが出来ないでしょう。
それに腕時計ならある程度代用品も使い得ますが、このアンティーク時計シリアルナンバーが入ってます。
代用の利かない、むしろ見つけるほうが困難なお品ではないでしょうか」
言いながら宝石を埋め込まれて妖精がデザインされたねじ回しは幾つか宝石が取れている。そこは確認済みなので問題ないが
「あとぜんまい。たぶんって言うか経年劣化でよく切れてないのが不思議なくらいですよ」
ピンセットの先端で軽く触れての感想。
懐中時計や振り子時計など我が家に持ち込まれるものすべて修理を堪能する星崎さんの言葉は俺の感より信じられる確かな言葉で
「この時計、明日にでもお返ししましょう。
あまりかかわらない方がいいと思います」
そんな直感的感と言うものだろうか。
俺達親子ととは違う危機感の鋭い星崎さんの意見はなお止まらない。
「先日も変な絵を持ち込まれた時香月さん体調を崩してたでしょう?
あとわけのわからない人も来たし、今だって庭の方なんか悪くはないけど変な感じだし。水っぽい空気が動いてるって言うか、怖くはないけど今もなんか見られてるっていう感じがして……」
「星崎さんすごっ」
「社長や香月さんは俺より感が良いけど、俺、ここの職場だから我慢して働けるんですからね!」
「まあ、星崎にとったらお宝に囲まれた職場だからな。
だが古道具屋なんてどこも何かいると思った方がいいぞ」
「だから怖くても我慢しているんです。
社長たちが俺を含めた従業員を守ってくれているの分かっているし、独立しても自分を守る手段がないからここで働いているんです!」
「まあ、よそじゃこういったフォローはないからな」
ふふんと鼻を鳴らす親父、自慢にならないぞと思うも
「分かってる星崎さんだから言いますけど水の匂いしたのはうちで預かる事になった子なので嫌わないで上げてください。お菓子あげると喜びます。
あと見られているというのはたぶん好奇心旺盛なだけなのでお仕事の邪魔は一切しないし暫くしたらお帰りになる子も預かっているので気にはなるかもしれないけど我慢してください」
「本当に大丈夫なのですね?」
「ええ、水の匂いはわが家の守り神になってくれるかもしれないし、もう一人の子はさっきから俺の膝の上で眠ってしまっているので」
かたり……
足を崩して膝が机に当たれば次郎さんの耳がピクリと動く。
だけど気にならないという様にすっと尻尾が揺れただけで身動きしない貫禄ある三毛猫、さすがだなと感心してしまう。
と言うか、三毛猫なのに次郎さんオスなんだよな。その点どうなってるんだろうというのは創作の自由だからだろうかという事にしておく。
「まあ、いたずらしないのなら文句は言いませんが……
一緒に暮らすのならちゃんとみんなにも教えてくださいね。一応ここで働きだしてからみんな感覚が鋭くなっているんだから」
代表で言わされていることぐらい気付いたけど、さすがにもう誤魔化せないかと
「親父、怒られたよ」
「まあ、今日の昼食の時にでも説明するからってそれとなく伝えておいて」
「しっかり説明してくださいね」
「って言うか、なんで今まで稼業の事バレずに来たのかそっちの方が不思議だよ!」
俺の力説に
「え、あれでバレてないつもりでした?」
なんて皆さん察して気付いてないふりをしていたみたいだ。
「鯉の絵の様な大きな案件さえなければ今までは本当にちょっと何か気になる程度の物しか扱ってこなかったんだ。そんな大きな案件うちに来る前に別のしかるべき所に行くだろうからな!」
「ああ、もう。親父は開き直らないの!
太郎も菖蒲も気にしなくていいからね」
なんて俺の周囲を泳ぐ二匹の金魚にいえば
「え、そこに居るの?」
「次郎さんが膝の上に居るからね。構ってほしいのでしょう……」
猫にかまってほしい金魚、それってどうよと思っていれば
「はー……」
限りなく疲れたため息とともに
「お昼ではなく今すぐ説明してください」
俺達親子の返事を聞かずにほら行きますよと手を引っ張られて工房で仕事を始めようとしている皆様に説明することになるとは、まだ昼前だというのに朝から濃厚な一日だなと親父の説明をぼんやりと聞くのだった。
星崎さんはうちで雇ってる職人さんで機械類も得意としている。
そして目の前に置かれたアンティークな時計に目を輝かせ、背後のねじをはずめて背板を外してただ一言。
「社長、悪いけどこれ俺の手に負えないですよ。
オーバーホールが必要なのは分かるともいますが、中の部品全とっかえが最低限必要となります。
このブランド、スイスのメーカーだと思います。とっくになくなっていて修理できる人はもうほとんどいないし、部品全とっかえって言ったけど全部品作り出しになりますよ」
ふわ~、いいもの見ちゃったなんて星崎さんはご満悦だけど
「まったく見込みはないのか?」
親父が聞けば
「クリーニングは綺麗にできていると思います。
ですが金属疲労、金属も腐食しているし、歯車、角がみんな落ちてます。
歯車がかみ合って動かすはずなのにこれだけ角が丸まってると時計も正しく時間を刻むことが出来ないでしょう。
それに腕時計ならある程度代用品も使い得ますが、このアンティーク時計シリアルナンバーが入ってます。
代用の利かない、むしろ見つけるほうが困難なお品ではないでしょうか」
言いながら宝石を埋め込まれて妖精がデザインされたねじ回しは幾つか宝石が取れている。そこは確認済みなので問題ないが
「あとぜんまい。たぶんって言うか経年劣化でよく切れてないのが不思議なくらいですよ」
ピンセットの先端で軽く触れての感想。
懐中時計や振り子時計など我が家に持ち込まれるものすべて修理を堪能する星崎さんの言葉は俺の感より信じられる確かな言葉で
「この時計、明日にでもお返ししましょう。
あまりかかわらない方がいいと思います」
そんな直感的感と言うものだろうか。
俺達親子ととは違う危機感の鋭い星崎さんの意見はなお止まらない。
「先日も変な絵を持ち込まれた時香月さん体調を崩してたでしょう?
あとわけのわからない人も来たし、今だって庭の方なんか悪くはないけど変な感じだし。水っぽい空気が動いてるって言うか、怖くはないけど今もなんか見られてるっていう感じがして……」
「星崎さんすごっ」
「社長や香月さんは俺より感が良いけど、俺、ここの職場だから我慢して働けるんですからね!」
「まあ、星崎にとったらお宝に囲まれた職場だからな。
だが古道具屋なんてどこも何かいると思った方がいいぞ」
「だから怖くても我慢しているんです。
社長たちが俺を含めた従業員を守ってくれているの分かっているし、独立しても自分を守る手段がないからここで働いているんです!」
「まあ、よそじゃこういったフォローはないからな」
ふふんと鼻を鳴らす親父、自慢にならないぞと思うも
「分かってる星崎さんだから言いますけど水の匂いしたのはうちで預かる事になった子なので嫌わないで上げてください。お菓子あげると喜びます。
あと見られているというのはたぶん好奇心旺盛なだけなのでお仕事の邪魔は一切しないし暫くしたらお帰りになる子も預かっているので気にはなるかもしれないけど我慢してください」
「本当に大丈夫なのですね?」
「ええ、水の匂いはわが家の守り神になってくれるかもしれないし、もう一人の子はさっきから俺の膝の上で眠ってしまっているので」
かたり……
足を崩して膝が机に当たれば次郎さんの耳がピクリと動く。
だけど気にならないという様にすっと尻尾が揺れただけで身動きしない貫禄ある三毛猫、さすがだなと感心してしまう。
と言うか、三毛猫なのに次郎さんオスなんだよな。その点どうなってるんだろうというのは創作の自由だからだろうかという事にしておく。
「まあ、いたずらしないのなら文句は言いませんが……
一緒に暮らすのならちゃんとみんなにも教えてくださいね。一応ここで働きだしてからみんな感覚が鋭くなっているんだから」
代表で言わされていることぐらい気付いたけど、さすがにもう誤魔化せないかと
「親父、怒られたよ」
「まあ、今日の昼食の時にでも説明するからってそれとなく伝えておいて」
「しっかり説明してくださいね」
「って言うか、なんで今まで稼業の事バレずに来たのかそっちの方が不思議だよ!」
俺の力説に
「え、あれでバレてないつもりでした?」
なんて皆さん察して気付いてないふりをしていたみたいだ。
「鯉の絵の様な大きな案件さえなければ今までは本当にちょっと何か気になる程度の物しか扱ってこなかったんだ。そんな大きな案件うちに来る前に別のしかるべき所に行くだろうからな!」
「ああ、もう。親父は開き直らないの!
太郎も菖蒲も気にしなくていいからね」
なんて俺の周囲を泳ぐ二匹の金魚にいえば
「え、そこに居るの?」
「次郎さんが膝の上に居るからね。構ってほしいのでしょう……」
猫にかまってほしい金魚、それってどうよと思っていれば
「はー……」
限りなく疲れたため息とともに
「お昼ではなく今すぐ説明してください」
俺達親子の返事を聞かずにほら行きますよと手を引っ張られて工房で仕事を始めようとしている皆様に説明することになるとは、まだ昼前だというのに朝から濃厚な一日だなと親父の説明をぼんやりと聞くのだった。
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