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私は今、人生で初めて、男の人から告白されているのです!
相手はこの国の第1皇子殿下です。
そんな方に好かれる要素など何一つ持ち合わせていない私ですが、
どうやら一目ぼれしてしまったようです。
(でも、私にはもう心に決めた方がいるんです)
だから、その思いには答えられません。
それに私がお慕いしている方は別にいらっしゃるのですから、
しかし、この方はかなり強引なお方のようで、私の言葉に耳を傾けようともしません。
そしてとうとう強引に腕を掴まれてしまいました。
「きゃっ!」
思わず悲鳴を上げてしまいます。
すると彼はますます嬉しそうに笑いました。
まるで獲物を捕らえた肉食獣のような笑みでした。
背筋がぞくりとしました。
このままではいけないと思い、なんとか逃げ出そうとしますが、
びくともしません。
むしろより強く握られてしまっています。
痛いくらいに強い力でつかまれているため、振りほどくことができません。
それどころかどんどん力が強くなっていきます。
もう限界だと思いましたその時、突然彼が手を離してくれたので助かりました。
一体どうしてしまったのでしょうか?
「強引なことをして済まない、好いているのは本当なんだ、信じてくれ、リアラ・エメラルド嬢」
王子の切なげなまなざしに私は、胸が高鳴るのを感じた。
(どうしよう、こんな展開ってあり!? )
戸惑いながらも何とか平静を装って答えることにした。
だって、ここで動揺したら怪しまれてしまうもの。
とにかく今はこの場をしのがないとね。
それにしても本当にびっくりしたわ。
まさかいきなりあんなことされるなんて思わなかったんだもの。
そう思いながらもなんとかこう言うのです。
「わ、私でよければ喜んで」
こうして私たちはお付き合いする運びとなりました。
そんな彼は、この国、アザルヘルド大陸の南に位置する皇国エンフェルトの第一王子殿下で名を確か、ユリオ・エンフェルトと申しますの。
王子の歳は確か、私と3つ違い、私が17なので王子が20ですわね。
そんなことを思いながら支給された赤いブドウジュースを飲んでいますと、不意に声をかけられたのです。
驚いて顔を上げるとそこには見知らぬ男性が立っていました。年齢は恐らく30代後半くらいでしょうか。背が高くがっちりとした体格の男性で、鋭い目つきをしており威圧感がありました。
一見怖そうな印象を受けましたが、よく見ると整った顔立ちをしていることに気づきます。髪は銀色で瞳は緑色をしていました。
「あのどなたですか?」
「これは、失礼、お嬢様、他国の女性はなんとも愛らしいですな」
そう言って男は笑った。
なんだか嫌な感じだわ、
そう思いつつもとりあえず挨拶だけはしておくことにする。
するとその男はこう言ってきたのだ。
「ああ、申し遅れましたね、私の名前はガイルと言います、以後お見知りおきください」
そう名乗った後、一礼してきたのでこちらも慌てて返すことになったのである。
そして、私が困っていると、ユリオ様が私を庇うように立って、こう言うのです。
「ガイル様、ご機嫌麗しゅうございます、妹は彼女ではありませんよ、ご自分の婚約者の元に行かれてはいかがですか?」
それを聞いた途端、相手の顔色が変わったのがわかった。
怒りの形相に変わるのを見て恐怖を感じたのか、体が震え始めるのがわかる。それを悟られないように必死に抑えていると、急に肩を抱かれたので驚きのあまり固まってしまう。
そんな私に構わず、彼はそのまま歩き出してしまう。
連れて行かれたのは人気のない場所だった。
「あのさ、リアラ」
「はい、ユリオ様」
「彼は、北の帝国エルシェルドの皇帝、氷の暴君で女遊びも悪いっと、恐れられている、気をつけなさい」
そう言われてもいまいちピンと来ないというかなんというか、
そもそもなんで私が狙われるのかよくわからないんですけど……。
まあ、でも一応注意しておこうかなと思ったわけである。
そんな私の考えを見透かしたように彼が言うのだった。
「さて、初デートの続きと行こう」
私は頷くと後に続いた。
それから。3年の月日が立ち私はいよいよ、あの時を迎えてしまうことになる。
私の生涯の汚点となった事件である。
☆★☆
「い、今なんと言いましたか? エルノア王女」
私の心は怒り心頭状態である。
ここは、皇国エンフェルトの王子の部屋、婚約までしている私にこの歳も行かない小娘は云うに事欠いて、娼婦ですって?
「何度も、言っているでしょ? あんたごときが兄様と釣り合うはずがありませんわ、場をわきまえなさい、下女が、伯爵令嬢如きが本当にお兄様と釣り合うと思っているのですか?」
ああ、もう我慢なりませんわ!
こんなガキが生意気な口を叩くなど言語道断ですわ!
いくら皇女とはいえ許せません!
こうなったら実力行使しかありませんわね。
覚悟しなさい!
私は拳を握りしめると思いっきり殴りかかった!
しかしそれは簡単に受け止められてしまった。
それも片手でだ。
「なっ!」
次の瞬間何が起きたのか分からなかった。
叩いたはずの私が何故か床に伏せている。
突き飛ばされたのか?
皇女の位置からかなり、遠いい何よりも、ゴミでも見るような目で私を見下ろす、ユリオの姿があった。
なんで?
どうしてこうなったのだろう?
私はただ愛した人に振り向いて欲しかっただけなのに!
それなのにどうして!
涙が止まらない。
嗚咽が漏れる。
それでもなお、私は泣き続けた。
「妹に手を上げるとは、リアラ・エメラルド貴殿との婚約を破棄する、ここから出ていきなさい、後日、処遇を知らせる」
そう言いながら去っていく彼の後ろ姿を眺めながら呆然としていた私だったがやがて我に帰ると叫んだ。
相手はこの国の第1皇子殿下です。
そんな方に好かれる要素など何一つ持ち合わせていない私ですが、
どうやら一目ぼれしてしまったようです。
(でも、私にはもう心に決めた方がいるんです)
だから、その思いには答えられません。
それに私がお慕いしている方は別にいらっしゃるのですから、
しかし、この方はかなり強引なお方のようで、私の言葉に耳を傾けようともしません。
そしてとうとう強引に腕を掴まれてしまいました。
「きゃっ!」
思わず悲鳴を上げてしまいます。
すると彼はますます嬉しそうに笑いました。
まるで獲物を捕らえた肉食獣のような笑みでした。
背筋がぞくりとしました。
このままではいけないと思い、なんとか逃げ出そうとしますが、
びくともしません。
むしろより強く握られてしまっています。
痛いくらいに強い力でつかまれているため、振りほどくことができません。
それどころかどんどん力が強くなっていきます。
もう限界だと思いましたその時、突然彼が手を離してくれたので助かりました。
一体どうしてしまったのでしょうか?
「強引なことをして済まない、好いているのは本当なんだ、信じてくれ、リアラ・エメラルド嬢」
王子の切なげなまなざしに私は、胸が高鳴るのを感じた。
(どうしよう、こんな展開ってあり!? )
戸惑いながらも何とか平静を装って答えることにした。
だって、ここで動揺したら怪しまれてしまうもの。
とにかく今はこの場をしのがないとね。
それにしても本当にびっくりしたわ。
まさかいきなりあんなことされるなんて思わなかったんだもの。
そう思いながらもなんとかこう言うのです。
「わ、私でよければ喜んで」
こうして私たちはお付き合いする運びとなりました。
そんな彼は、この国、アザルヘルド大陸の南に位置する皇国エンフェルトの第一王子殿下で名を確か、ユリオ・エンフェルトと申しますの。
王子の歳は確か、私と3つ違い、私が17なので王子が20ですわね。
そんなことを思いながら支給された赤いブドウジュースを飲んでいますと、不意に声をかけられたのです。
驚いて顔を上げるとそこには見知らぬ男性が立っていました。年齢は恐らく30代後半くらいでしょうか。背が高くがっちりとした体格の男性で、鋭い目つきをしており威圧感がありました。
一見怖そうな印象を受けましたが、よく見ると整った顔立ちをしていることに気づきます。髪は銀色で瞳は緑色をしていました。
「あのどなたですか?」
「これは、失礼、お嬢様、他国の女性はなんとも愛らしいですな」
そう言って男は笑った。
なんだか嫌な感じだわ、
そう思いつつもとりあえず挨拶だけはしておくことにする。
するとその男はこう言ってきたのだ。
「ああ、申し遅れましたね、私の名前はガイルと言います、以後お見知りおきください」
そう名乗った後、一礼してきたのでこちらも慌てて返すことになったのである。
そして、私が困っていると、ユリオ様が私を庇うように立って、こう言うのです。
「ガイル様、ご機嫌麗しゅうございます、妹は彼女ではありませんよ、ご自分の婚約者の元に行かれてはいかがですか?」
それを聞いた途端、相手の顔色が変わったのがわかった。
怒りの形相に変わるのを見て恐怖を感じたのか、体が震え始めるのがわかる。それを悟られないように必死に抑えていると、急に肩を抱かれたので驚きのあまり固まってしまう。
そんな私に構わず、彼はそのまま歩き出してしまう。
連れて行かれたのは人気のない場所だった。
「あのさ、リアラ」
「はい、ユリオ様」
「彼は、北の帝国エルシェルドの皇帝、氷の暴君で女遊びも悪いっと、恐れられている、気をつけなさい」
そう言われてもいまいちピンと来ないというかなんというか、
そもそもなんで私が狙われるのかよくわからないんですけど……。
まあ、でも一応注意しておこうかなと思ったわけである。
そんな私の考えを見透かしたように彼が言うのだった。
「さて、初デートの続きと行こう」
私は頷くと後に続いた。
それから。3年の月日が立ち私はいよいよ、あの時を迎えてしまうことになる。
私の生涯の汚点となった事件である。
☆★☆
「い、今なんと言いましたか? エルノア王女」
私の心は怒り心頭状態である。
ここは、皇国エンフェルトの王子の部屋、婚約までしている私にこの歳も行かない小娘は云うに事欠いて、娼婦ですって?
「何度も、言っているでしょ? あんたごときが兄様と釣り合うはずがありませんわ、場をわきまえなさい、下女が、伯爵令嬢如きが本当にお兄様と釣り合うと思っているのですか?」
ああ、もう我慢なりませんわ!
こんなガキが生意気な口を叩くなど言語道断ですわ!
いくら皇女とはいえ許せません!
こうなったら実力行使しかありませんわね。
覚悟しなさい!
私は拳を握りしめると思いっきり殴りかかった!
しかしそれは簡単に受け止められてしまった。
それも片手でだ。
「なっ!」
次の瞬間何が起きたのか分からなかった。
叩いたはずの私が何故か床に伏せている。
突き飛ばされたのか?
皇女の位置からかなり、遠いい何よりも、ゴミでも見るような目で私を見下ろす、ユリオの姿があった。
なんで?
どうしてこうなったのだろう?
私はただ愛した人に振り向いて欲しかっただけなのに!
それなのにどうして!
涙が止まらない。
嗚咽が漏れる。
それでもなお、私は泣き続けた。
「妹に手を上げるとは、リアラ・エメラルド貴殿との婚約を破棄する、ここから出ていきなさい、後日、処遇を知らせる」
そう言いながら去っていく彼の後ろ姿を眺めながら呆然としていた私だったがやがて我に帰ると叫んだ。
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