ああ、スライム。君はなんておいしいんだ!

空兎

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スライム、ポーション?

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「……エアトは馬鹿なのです」

次の日スラりんのことを親友のミツバに報告に報告しに行ったらそう言われた。え、俺何かしましたかな?

「え、なにゆえそう思うのだよ、我が親友」
「その発言をする時点で頭が弱いのです。スライムを飼うためにテイマーになるなんて、そんな死にスキル買うくらいならもっといいスキルがあるのですよ」

ミツバがドロンとした目でそういう。え、死にスキル?テイマーって使えないスキルなの?

「でもスラりんはテイムできたよ?」
「確かに、スライムなら使えるかもしれないのです。でもテイマーが成功する確率は凄く低いのです。100回やって1回、もしくはとても痛めつけて瀕死の状態でやっと成功といった感じなのです。役に立つようなモンスターはほとんどテイムできないのですよ?」

みっちゃんがふーぅとため息をつく。なるほど、どうりでお店のおっちゃんも反対するわけだよ。テイマーってあんまり使い勝手の良いスキルではないんだろう。

「でもスラりんはテイムできたよ?」
「レベル差が凄くある場合は割と成功するらしいのです。だけれどもそんなにレベル差があるならテイムしてもあまり使えないですし、使えるように育てたとしても主人のレベルを抜いたらテイムされたモンスターは逆らうことができるのです。モンスターは自分よりレベルの高い者しか主人として認めないのです」

なるほど、テイムモンスターにレベルを抜かれたらテイムできなくなるのか。せっかく育てたとしても強くなりすぎると管理できなくなるんだね。それはテイムにあまり魅力はないかもしれない。

「でもスラりんはテイムできたよ?」
「……エアトが良いならかまわないのです。好きにスライムを育てるのですね」

ミツバが諦めたように息を吐いた。うん、テイマーのデメリットは凄くわかった。だけれどもまあ俺には関係ない話ですね。

だって俺はスラりんを増やしてスライムをたくさん食べたいだけなのだもん。戦闘用にスラりんを飼っているわけではないのでテイマーの使い勝手の悪さというのはそんなに気にしなくていいだろう。

ミツバと別れて自分の家に戻る。昨日は森に行ってしまったけど今日は仕事をしよう。テイマーのオーブでお金がなくなっちゃったし稼がないとスライムが食べられない。

俺は露天の薬屋さんだ。主な売り物は下級ポーションである。

下級ポーションは簡単に作れる。まず薬草をすり潰す。ゴリゴリ潰す。

次に綺麗な水を用意する。混ぜる。白硝石をひと匙掴む。そしてスキルを使う。

「《-錬金-》」

するとすり潰された薬草と水はポンッと音を立てて白いガラス瓶に入ったポーションに変わる。

このポーションを作った能力は“錬金術”というスキルで結構レアなスキルらしい。俺は生まれた時から持っていたからラッキーだった。この力のおかげで今まで食いつないでこれたもんね。ありがたや。

そんなわけで薬草をすり潰しては水に混ぜてポーションに変えるという作業をしていると薬草が切れた。

確かスラりんのところに大量の薬草置いてたなと思って見に行くと薬草に埋もれた緑色のスライムがいた。……は?

「え、ちょ、何故緑色になっているんだよスラりん」

スラりんはここにきた時透き通るような水色だったはず。何故に緑色に変色しているのだよ。こんなスライム見たことないわ。やばい、むっちゃ食べたい。

スライムマスター(自称)と呼ばれた俺だ、当然新しいスライムは気になってしまう。ふらふらとスラりんに手を伸ばす。するとスラりんはふるふると揺れそして小さなスライムを生み出した。ん?

スラりんが生み出した小さなスライムを手に取る。よく見るとそれには小さなツノはないし動きもしない。スラりんの一部だけを取り出したゼラチンみたいなものだ。

「これ、もらっていいの?」

スラりんに聞く。口の中に唾液が溜まった。だって新種のスライムのお味だよ!こんなのスライムマスターの俺が食べなくてどうするんだ!

スラりんは『いいよ』というようにふるふる揺れる。そうか、いいのか。よし、食べよう。

普通スライムを食べるのなら果実水や砂糖水で煮込んでスライムゼリーにするのが一般的だがもうそんなに待てん。俺は一刻も早く新種のスライムを味わいたいのだ。

紳士はスライムに齧り付かないのかもしれないがスライムマスターはスライムに齧り付く。というわけで緑色のちびスライムを口に入れる。その瞬間、若葉の青々さ、森の豊かさが脳裏に浮かぶ。

緑だ、世界が緑に包まれた。森を体現したようなその味を一言で言うならば、

……苦い。

あ、これ薬草の味と同じだわと思った瞬間スラりんがふるふると揺れてまた小さなスライムを生み出す。ひとつ、ふたつ、みっつ、

そして5つ目の小さなスライム、ちびスラを生み出すとスライムはただ震えるだけとなった。ちびスラが5つもある。しかし残念のことに美味しくないのだ。

スライムは浸透性が非常に高い。だから食べた薬草も体内で蓄えて薬草味になったのだろうけど、これはひどい。せっかくのスライムだというのにまさか食べれないのかあんまりだ。

薬草食べさせたのが失敗だったのだろうな。どうしたもんか、と考えた時ふと身体の調子が良くなっていることに気付いた。まるでポーション飲んだ時のような体調だ。

ん?なんでだ?ひょっとしてちびスラを食べたから?

俺は緑のちびスラをひとつ手元に取り上げる。緑色でプニプニとしている。薬草を食べ続けたスライムには回復作用があるのか?

ちょっと思い付いたことがあるのでスラりんが出してくれたちびスラとすり潰した薬草と白硝石を手元に寄せる。

ぷにぷにとした感触のちびスラを薬草の中に入れる。そしてスキルを使った。

「《-錬金-》」

ポンッと音を立ててポーションができる。見たことがないポーションだ。下級ポーションと同じようにガラスの瓶に入っているけど蓋がスライムの形をしている。

うわ、回復作用あるし出来るんじゃないかと思ってやったら新しいポーションが作れてしまったよ。薬草食べたスライムがくれたちびスラで作ったポーションだと?結構ポーションは作ってきたけどこれは初めて見るぞ?

パッと見、下級ポーションのように見えるけどスライムの蓋があるからイマイチ効能がわからない。

うん、まあいいや。今日ポーション売るついでに常連さんたちに何本か渡して効能調べてきてもらおう。まあちびスラと薬草しか入ってないし変なことにはならないだろう。いけるいける。

にしてもまさかちびスラがポーションの材料になるとは。薬味のスライムゼリーが出てきた時はどうしようかと思ったけどポーションの材料になるなら使い道がある。

うん、よし、決めた。スラりん、ちゃんと育成しよう。ポーションの材料になるならそれだけで価値があるしおいしくないけどちびスラだって出してくれる。薬味だけどこれだってうまいこと調理したらおいしくならないかな?とにかくスラりんは役に立つ。しっかりと育成しようじゃないか!

取り敢えずスラりんが出してくれたちびスラは全てポーションに変える。その結果、スライムポーションが5本できた。

普通のポーションもそれなりに作って露店を開く。店といっても綺麗目な布引いてポーション並べるだけだ。その前によいしょと座る。

「お、エアトじゃないか。今日は店をやっているんだな」
「こんにちは、イツダツさん」

そうしていると早速常連さんがやってきた。冒険者のイツダツさんはちょこちょこと下級ポーションを買ってくれるいいお客さんだ。笑顔を振りまいておこう。

「昨日は仕入れだったのか?」
「そんなとこです」
「じゃあ下級ポーションを5本くれ」
「はい。50sシリングになります」

銅貨を5枚受け取り代わりにポーションを5本渡す。下級ポーションは1本10sだ。別に高くない。ギルドの販売する額と同じである。だから安くもないけど。売れてくれるのは実にありがたい。

「イツダツさん、それとこれはオマケです」
「なんだこれは、見たことないポーションだな?」

イツダツさんにスライムポーションをひとつ渡す。まあ蓋がスライムの形したポーションなんて中々お目にかかれないよね。俺も見たことないので是非とも効能を確かめてくださいな。

「イツダツさんは常連さんなのでサービスです。感想聞かせてくださいね」
「おう、そうか。有り難く頂くぜ。またな、エアト!」

笑顔でイツダツさんを見送るとそのあとポツポツとお客さんがやってきた。俺のポーションは割と売れる。ギルドと同じ値段なのになんでだろうね。ありがたいことです。

そうしてしばらくすると用意していたポーションが全て売れたので店じまいである。売り上げは800s、スライムポーションも常連さんに配れた。順調である。

片付けをしてポケットからスラりんを取り出す。スラりんはプルプル揺れながら肩にまで登ってきた。きちんと育成すると決めたのだ。

さあ、レベル上げに行こう。
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