名探偵に憧れた私はついうっかり異世界に探偵事務所を構えてしまった

冬月光輝

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第7話 コーヒーのお代わりと選択とウインク

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 今日までのことを、改めて話してみると現実味が無い。
 一通り話し終えたあたしは、いつの間にか淹れてもらったコーヒーのおかわりに口をつけた。
 やっぱり美味しい……。ほっこりする味だった……。

 立花はコーヒーを注ぐとき以外は髭を触りながら黙って話を聞いていた……。

「うーん」
 髭を触ることを止めて、立花は口を開いた。

「エクセレントッ! いやあ、君は話が上手いねぇ。ついつい聞き入ってしまったよ。何か、そういう習い事をやってたのかい?」
 立花はニコニコと笑って、私の話し方を褒めてくれた。

「はぁ……」
 疲れているせいでテンションに乗れなかった。

「おっと失礼。面白い話を聞くとついつい気持ちが抑えられなくてね。私の悪い癖なんだ。君の話は非常に興味深い! ふっふっふ」
 立花は満面の笑みを浮かべていた。

「あのう、笑い事じゃないんですけど……」
 あたしは少しムッとした。

「笑い事とは思ってないさ。でも君は思っているより大変なことに巻き込まれているよ」
 立花の声のトーンが急に下がる。

「思ったより大変なこと?」
 あたしは、聞き返した。

「イエースッ。私の推測が正しければ、君は選ばなくてはならない。1つはこの世界の一員になってこのまま暮らしていく。元の世界には戻れないけど、割と楽しいよ。君は順応性も高そうだしね」
立花は指を1つ立てた。

「そして、2つ目は元の世界に戻る。これはハードだ。絶対に苦労するねぇ。面倒とそれ以上に危険が多い。君の父上を見つける必要もあるし。今よりもっと怖い思いもしなければならない」
立花はもう一つ指を立てた。
なんだか、ピースサインに見えて少し滑稽だった。

「さあて、君はどうする?」
立花は私の目をじっと見つめた。

 突然の選択肢……。
 迷うまでもない。優しい父、仲の良い友人、楽しい学生生活……。
 捨てるには重すぎるよ……。

「あたしは……、元の世界に帰りたい。何があっても」
 あたしは、声は少し小さかったが、はっきりと答えた。

「本当に大丈夫かい? 知らないと思うけど、この世界には、想像も出来ないような怪物もいるんだよ。そして、もっと怖いニンゲ……」

――ガチャッ

 立花が話終える前に、扉が開いた。

「先生、お客様を脅すのは止めて下さいまし。可哀想ですわ」
 金髪で紅い目をしていて、透き通るくらい色の白い女が突然部屋に、入ってきた。
 同じ女性のあたしも見惚れてしまうくらい美しい容姿、違和感はほんの少しだけ尖った耳をしていることぐらい。
 こんなに綺麗な人は芸能人でも見たことはなかった。

「こんなに可愛い女の子が頼っていらっしゃったのに、意地悪するなんて酷すぎますわ」
 金髪の女はかなり立腹している様子だった。

「ふぅ、ニーナくん。立ち聞きとは良くないな。私は別にイジメているわけではなくてだねぇ。仕事を引き受けるにあたっては、色々と了承してもらわないと……」
 立花は困惑した表情で答えた。

「だからといっても先生は無神経過ぎますわ。涼子様、任せて下さい貴女のお父様は必ずや私たち、立花探偵事務所が見つけ出しますわ」
 ニーナと呼ばれた綺麗な人は、あたしに優しい笑顔を向けて話してくれた。

「いやだからね、勝手に話を進めないでくれ。依頼料の話とか……、万が一、依頼人が怪我をしてしまった時の……」
 立花が言い終わらないうちに、ニーナは遮る。

「先生、色々とおっしゃってますが、まさか【自信がない】のではありませんか?」
 ニーナは立花に対して挑発的なものの言い方をした。

「‥‥‥‥」
 立花は少し黙って口を開いた。

「ニーナくん。【自信がない】というのは私に対して言ったのかな? この世界一の名探偵である立花に対して……」
 明らかに怒っていた。

「そうですわ。先生のことは尊敬していますので、こういうことは申し上げたく無いのですが……」
 プイと横を向きながら、ニーナは挑発するように言った。

「もちろん、私が取り組めば解決できない事件は無いよ。なぜなら私が名探偵なのだから。涼子くん君も私を疑っているのかね? よろしい。この挑戦受けて立とう。必ず君のお父さんを見つけ出して、お家に返そう。これでどうだ? 文句無いな!」
 立花がそう早口で言い切ったと同時に、ニーナはあたしの方を向いてウインクした。
 立花さんって案外扱いやすい人なのかな……。

 いつの間にか不安な気持ちが、ほとんど無くなっていることにあたしは気が付いた。
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