10 / 32
第十話
しおりを挟む
「本当に来るのですか?」
「ええ、もちろんですわ。わたくし、これまでマルサス様にこれっぽっちも興味が無かったのですが、今回の件で逆に興味を惹かれるようになりました」
「……あなたって子は物好きにも程がありますよ」
マルサス様が謝罪したいという連絡を聞いて、シェリアは「面白そう」と目を輝かせて一緒に行きたいと言い出しました。
私にはこの子の考えていることがありません。
マルサス様の謝罪など見て何が面白いのでしょうか……。
「ここ来てみたかったお店ですわ。50年間、ラテアートの修行を積んだマスターが淹れるコーヒーが有名でして――」
「あなたはそういうことばかり詳しいですね……」
王都の中央通りにある、お店で私たちはマルサス様を待ちます。
普通は謝罪する側が早く来るものだと思いますが……。
それにマルサス様はどうしてこんなにも人通りの多いオープンカフェを謝罪場所に選んだのでしょう。
普通は個室を取るか、家に呼ぶか、どちらかだと思うのですが……。
シェリアではありませんが、私も嫌な予感がしてきました。
「やぁ、待たせたね。君は、えっとルティアの妹の……」
「はい。シェリア・アルディスですわ。わたくしのことはどうかお気になさらずに」
ようやくやって来たマルサス様に挨拶するシェリア。
いや、普通は気にするでしょう。マルサス様も首を傾げましたが、着席して飲み物を頼みました。
「まぁ、いいか。シェリアちゃんが居ても。……もう少し時間はあるな」
「ありがとうございます~。本当に空気になりますから、お気になさらずに~」
マルサス様はしばらくして妹の同席を認めました。
それにしても、先程から時間を何度も確かめていますが、何かこのあと予定があるのでしょうか。
「あのう、マルサス様。改めて謝罪をなさりたいと仰って頂きましたが、そんなに思いつめなくても結構ですよ。私は――」
「……おいおい、あそこのペンキ塗りの少年、どうしたんだろう? 何か固まってるみたいだぞ」
「あー、本当ですね。なんで動かないんでしょう?」
「その隣の果物売りの少年も、果物を盗んだ泥棒も、みんな動きが止まっているぞ。あー、不思議だなぁ!」
マルサス様が大きな声で通りを見ると、歩いていた人や商売をしていた人が一斉に動きを停止していました。
ええーっと、これはどんな状況なのでしょう。
「んっ? この曲は舞台シャンデリットのテーマだ……。不思議だなぁ!」
「「――っ!?」」
急に店内にいた方々がオーケストラの如く演奏を開始して、私は心臓が止まりそうになるくらいびっくりします。
えっ? えっ? えっ? 一体、何が起こっているのですか?
そんなことを思っていますと馬車が走ってきて、停止して中からバレリーナの少女たちがダンスを始めました。
これって、聞いたことありますが、フラッシュモブというものですか? 誰が誰のために行っているのか存じませんが……。
バレリーナに触れられた通行人たちは様々なダンスを披露します。
ブレイクダンスやタップダンス、とんでもない練習量が見え隠れする非常に達者な踊りです。
「あー、ルティア。僕も何だか引っ張られるみたいだ――」
よく分かりませんが、突然に立ち上がったマルサス様はムーンウォークでダンスを踊っている人たちに混ざります。
も、もしかして、マルサス様がフラッシュモブを? 一体、何のために――!?
「ええ、もちろんですわ。わたくし、これまでマルサス様にこれっぽっちも興味が無かったのですが、今回の件で逆に興味を惹かれるようになりました」
「……あなたって子は物好きにも程がありますよ」
マルサス様が謝罪したいという連絡を聞いて、シェリアは「面白そう」と目を輝かせて一緒に行きたいと言い出しました。
私にはこの子の考えていることがありません。
マルサス様の謝罪など見て何が面白いのでしょうか……。
「ここ来てみたかったお店ですわ。50年間、ラテアートの修行を積んだマスターが淹れるコーヒーが有名でして――」
「あなたはそういうことばかり詳しいですね……」
王都の中央通りにある、お店で私たちはマルサス様を待ちます。
普通は謝罪する側が早く来るものだと思いますが……。
それにマルサス様はどうしてこんなにも人通りの多いオープンカフェを謝罪場所に選んだのでしょう。
普通は個室を取るか、家に呼ぶか、どちらかだと思うのですが……。
シェリアではありませんが、私も嫌な予感がしてきました。
「やぁ、待たせたね。君は、えっとルティアの妹の……」
「はい。シェリア・アルディスですわ。わたくしのことはどうかお気になさらずに」
ようやくやって来たマルサス様に挨拶するシェリア。
いや、普通は気にするでしょう。マルサス様も首を傾げましたが、着席して飲み物を頼みました。
「まぁ、いいか。シェリアちゃんが居ても。……もう少し時間はあるな」
「ありがとうございます~。本当に空気になりますから、お気になさらずに~」
マルサス様はしばらくして妹の同席を認めました。
それにしても、先程から時間を何度も確かめていますが、何かこのあと予定があるのでしょうか。
「あのう、マルサス様。改めて謝罪をなさりたいと仰って頂きましたが、そんなに思いつめなくても結構ですよ。私は――」
「……おいおい、あそこのペンキ塗りの少年、どうしたんだろう? 何か固まってるみたいだぞ」
「あー、本当ですね。なんで動かないんでしょう?」
「その隣の果物売りの少年も、果物を盗んだ泥棒も、みんな動きが止まっているぞ。あー、不思議だなぁ!」
マルサス様が大きな声で通りを見ると、歩いていた人や商売をしていた人が一斉に動きを停止していました。
ええーっと、これはどんな状況なのでしょう。
「んっ? この曲は舞台シャンデリットのテーマだ……。不思議だなぁ!」
「「――っ!?」」
急に店内にいた方々がオーケストラの如く演奏を開始して、私は心臓が止まりそうになるくらいびっくりします。
えっ? えっ? えっ? 一体、何が起こっているのですか?
そんなことを思っていますと馬車が走ってきて、停止して中からバレリーナの少女たちがダンスを始めました。
これって、聞いたことありますが、フラッシュモブというものですか? 誰が誰のために行っているのか存じませんが……。
バレリーナに触れられた通行人たちは様々なダンスを披露します。
ブレイクダンスやタップダンス、とんでもない練習量が見え隠れする非常に達者な踊りです。
「あー、ルティア。僕も何だか引っ張られるみたいだ――」
よく分かりませんが、突然に立ち上がったマルサス様はムーンウォークでダンスを踊っている人たちに混ざります。
も、もしかして、マルサス様がフラッシュモブを? 一体、何のために――!?
98
あなたにおすすめの小説
「証拠なら全て記録してあります」——記録魔法しか取り柄がないと捨てられた令嬢、婚約破棄の場で三年分の不正を読み上げる
歩人
ファンタジー
伯爵令嬢アネットの唯一の魔法は『記録《レコード》』——見たもの聞いたものを
一字一句記憶する地味な能力。婚約者の侯爵子息ヴィクトルは「戦えない魔法など
無価値だ」と婚約破棄を宣言する。だがアネットは微笑んだ。「承知いたしました。
では最後に一つだけ——」。彼女が読み上げ始めたのは、ヴィクトルが三年間で横領した
軍事費の明細。日付、金額、共犯者の名前、密会の会話。全て『記録』済み。
満座の貴族が凍りつく中、王宮監察官が静かに立ち上がった。
「……続けてください、アネット嬢」。
婚約破棄の舞台は、そのまま公開裁判になった。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
阿里
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。
なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと?
婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。
※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。
※元サヤはありません。
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる