【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい

冬月光輝

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第十三話(ニッグ視点)

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 殺される、殺される、と毎日怯えて生活していたが、ようやく最近監視されている気配が消えた。
 俺に害を与えるような嫌がらせもなくなったし。普段どおりの日常が帰ってきた。

 次はお前だぞって脅されたが、もう大丈夫なのかな? 正直言って地獄のような毎日だったので安全だという確信は出来ていない。

 だが、久しぶりの解放された気分というのはやはり良いもので、俺は歓喜した。

「最近、顔色がいいな。殺されるとか変な妄想に取り憑かれているときはどうしたものかと思ったが」

「父上、先日の庭で起きた惨劇をご覧になったでしょう。ヒットマンが俺を狙っている証拠ですよ、証拠」

 父上は一向に俺の言うことを信じてくれなかった。
 殺されるから護衛を百人用意してくれとお願いしたが、馬鹿かと罵られ、俺はこの男を一生許さんと決めたほどだ。

「あんなもん、悪戯だろう。というか、お前は誰かに殺される心当たりなんかあるのか?」

「……うっ、嫌だな父上。俺は品行方正ですって。誰にも迷惑かけずに生きていますよ」

「ふん。そんな自信があるなら、殺されるなんて妄想に過ぎんだろ。……それより、エルザさんのことはきちんと気を遣え。舞踏会の出席もキャンセルしているし、向こうも心配しておるだろう。食事でも誘ったらどうだ?」

 エルザを食事に誘えだって? 俺のことを殺そうとしている候補、ナンバーワンだっていうのに。
 あのスミスを使って消そうとしたら、返り討ちにあったし、間違いなく俺を快く思っていない。
 まぁ、最近は狙ってこないところを見ると諦めたのかもしれんが。それでも会えるはずないだろう。

「父上……仮に、ですよ。エルザと別れたいとかいったらどうします?」

「もちろん、勘当だ。ワシの顔に泥を塗る奴は許さん。お前の代わりに養子でもとるわい」

「で、ですよねぇ。あはは」

 ほら見ろ、これだよ。クソッタレ。
 どうしたらいいんだ。こんなの無理じゃないか。
 やはりエルザに誤解だと言い包めるしかないか。
 だが、俺はスミスを刺客として送っている。これには言い訳が出来ない。
 
 いや、スミスのことも全部ジーナがやったことにすればいいんじゃないか? あいつは俺に惚れているし、ちょっと騙せば証拠とか全てあいつに擦り付ける事が出来る。

 ジーナに会う必要があるな……。

 あいつに会っていたのは、無理やり付きまとうのを止めてくれと一喝していたことにしよう……それだ!


「いいか。公爵家とのパイプを持つということは、今後の我が家の――」

「わかっていますよ、父上。近いうちに必ずエルザとまた会って将来のこととか話しますから」

「ならば良いが。くれぐれもエルザさんを不安がらせるなよ」

 エルザのことも大切だが、まずはジーナから攻略しないとな。
 最近は誰とも会っていなかったから、あいつにも変だと思われているだろうが……。

「ニッグ坊っちゃま。ジーナ様から手紙が届いています」

「ほう、いいタイミングだな。……ふむふむ、今度会いたいとな。良いじゃないか、良いじゃないか。いくらでも会ってやるよ」

 くっくっくっ、悪いがジーナ。俺の盾になってもらうぞ。
 構わないだろ? 愛する人を守って死ねるのだ。本望じゃないか……。
 よし、さっそくジーナに罪を擦り付けるための偽の証拠を作ろっと――。
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