【完結】妹の天然が計算だとバレて、元婚約者が文句を言いに来ました

冬月光輝

文字の大きさ
12 / 17

第十二話(エレナ視点)

しおりを挟む
 アリシア姉様は真面目で気立ても良く、お優しい方ですが、妹のわたくしから見てどうにも危なっかしい方でした。

 もう覚えているかどうかも怪しいですが、幼少期なんてわたくしを虐める子を公爵家の娘だと知りながら蹴飛ばしたり、王宮では溺れている王子様を何も考えずに川に飛び込んで助けたり――見返りを求めずに、何の計算もせずに正しいと思ったことを行う、昔からそんな方なのです。

 わたくしは幼少の頃から周囲の人間の悪意に人一倍敏感だったのか、人を簡単に信じられない人間でした。
 
 だからこそ、アリシア姉様が危うく見えていたのです。
 この方はいつかと言わず、近いうちに悪い男性に騙されたり、嫌な女に嵌められたりしないか、それが心配でならなくなりました。

 わたくしが出来る限り、姉様を守ろう。
 彼女に擦り寄る男がいれば口説き落として適当に捨て去り、彼女を悪く言う女がいれば共に悪口に花を咲かせて地獄に落とす。
 頭はあまり良さそうに見せてはなりませんね。警戒されますから。
 
 その日からわたくしは自分を偽ることを徹底しました。姉様の露払いをするために……。

 決して姉様に悟らせてはなりません。お優しい、アリシア姉様はわたくしがそんなことをしていると知ればきっと悲しみますし、何よりもわたくしが勝手にやってることなので彼女の気を煩わせたくありませんから――。

 ◆ ◆ ◆


「アリシア姉様は真面目すぎてつまらない方ですから、今日のパーティーでも殿方は一人も側に寄りませんでしたね」

「エレナ……、あなたの周りは賑やかで楽しそうですね。きっと縁談も多いのでしょう。誰とも婚約しないのは私の順番を待っているからですか?」

 はぁ、パーティーは疲れます。
 姉様は気付いていませんが、彼女は男たちからそれなりに注目を浴びています。
 大人しくて、口下手ですが、それが淑やかに見て取れて顔も薄化粧が逆に栄えるくらいに整っていますので、彼女に声をかけようと近付こうとする男は最近特に多いのです。

 まぁ、声をかける前にわたくしがそれを察知して先手を打つのですが……。
 

「今日もお疲れでしたねぇ。エレナお嬢様」

「楽しそうな顔しないでもらえますか? ビンセント」

 さすがに一人じゃ情報も集められないし、姉様を守ることも難しいから、わたくしは信用のおける二人にだけ秘密を打ち明けています。

 一人は執事でわたくしの世話係の一人でもあるビンセント。
 元々は王宮で王族の護衛をしていたのですが、足を怪我してからは引退。
 諜報みたいなこともしていたらしく、情報収集もお手のもの。

「エレナ様~~! またまた、縁談が来ていますよ~~! さっきまでアリシア様が好きみたいなオーラを出していましたのに、薄情ですね~~!」

「シーラは少しは小さな声で話す努力をしてください」

 そしてもう一人の世話係でメイドのシーラ。
 秘密は守ってくれるし、言われたことはキチンとこなすから、信用はしているけど声が大きいことがたまにキズです。

「でも~~! 私たちの警戒をすり抜けて~~! チャルスキー侯爵家の嫡男であるヨシュア様がアリシア様に求婚されたみたいですよ~~!」

「「――っ!?」」

 あら、いつかはこうなる日が来るかと思っていましたが、遂に現れましたか。
 アリシア姉様に求婚される身の程知らずが――。
 いえ、身の程知らずかどうか判断するのは少しだけ探りを入れてからにしましょう――。
 
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

とある侯爵令息の婚約と結婚

ふじよし
恋愛
 ノーリッシュ侯爵の令息ダニエルはリグリー伯爵の令嬢アイリスと婚約していた。けれど彼は婚約から半年、アイリスの義妹カレンと婚約することに。社交界では格好の噂になっている。  今回のノーリッシュ侯爵とリグリー伯爵の縁を結ぶための結婚だった。政略としては婚約者が姉妹で入れ替わることに問題はないだろうけれど……

婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。 だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。 理由は簡単だった。 「君は役に立ちすぎた」から。 すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、 “静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。 そこで待っていたのは―― 期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。 前に出なくていい。 誰かのために壊れなくていい。 何もしなくても、ここにいていい。 「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」 婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、 何者にもならなくていいヒロインの再生と、 放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。 これは、 “役に立たなくなった”令嬢が、 ようやく自分として生き始める物語。

妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます

新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。 ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。 「私はレイナが好きなんだ!」 それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。 こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた

今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。 二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。 それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。 しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。 調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。

婚約者を取り替えて欲しいと妹に言われました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ポーレット伯爵家の一人娘レティシア。レティシアの母が亡くなってすぐに父は後妻と娘ヘザーを屋敷に迎え入れた。 将来伯爵家を継ぐことになっているレティシアに、縁談が持ち上がる。相手は伯爵家の次男ジョナス。美しい青年ジョナスは顔合わせの日にヘザーを見て顔を赤くする。 レティシアとジョナスの縁談は一旦まとまったが、男爵との縁談を嫌がったヘザーのため義母が婚約者の交換を提案する……。

【完結済み】妹の婚約者に、恋をした

鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。 刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。 可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。 無事完結しました。

妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます

tartan321
恋愛
最後の結末は?????? 本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。

【完結】いつも私をバカにしてくる彼女が恋をしたようです。〜お相手は私の旦那様のようですが間違いはございませんでしょうか?〜

珊瑚
恋愛
「ねぇセシル。私、好きな人が出来たの。」 「……え?」 幼い頃から何かにつけてセシリアを馬鹿にしていたモニカ。そんな彼女が一目惚れをしたようだ。 うっとりと相手について語るモニカ。 でもちょっと待って、それって私の旦那様じゃない……? ざまぁというか、微ざまぁくらいかもしれないです

処理中です...