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第十一話
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「昨日、君の妹のエレナと会ったよ。君のことで話があるって。どうやったのか、僕の護衛を通じて手紙を送ってきてね」
「えっ……?」
ヨシュア様と婚約解消をしてから、一週間ほど経ったある日……私はアルフォンス殿下と食事をしていました。
彼は妹のエレナと会ったという話をします。
それも、本当にどうやったのか分からない方法でアルフォンス殿下と連絡を取って。
「最初は気持ち悪い演技がかった甘えたような口調で君の悪口を言っていた。真面目すぎるとか、冗談が通じないとか、世間知らずだとか、ね」
エレナは私の悪口をアルフォンス殿下に吹き込むために殿下に接触したみたいです。
やはり王子様と結婚したいと口にしたのは、アルフォンス殿下をも奪おうとして……。
私は殿下の話の続きを聞くことが怖くなってきました。
「僕は“そんなことは知っている。だから好きなのだ”と答えたよ。もちろん、それ以外にも魅力は沢山あるけどね」
「アルフォンス殿下……」
「そう答えると彼女は不敵に笑った。王子の婚約者になると嫉妬や羨望から、嫌がらせをされたりするかもしれないし、精神的な重圧に君が耐えられないかもしれないと忠告して……自分を婚約者にすれば、誰もが納得できるように振る舞ってみせると言ってのけた」
あの子、なんてコトをアルフォンス殿下に……。
しかし、ヨシュア様のときと違い……そんなにはっきりと私に取って代わろうとするのですね。
アルフォンス殿下のことは信じていますが、あの子のほうが私よりもきれいですし……。
「こんなことまで君に言うつもりは無かったんだけど、僕は君の家族についてある程度調べているんだ。もちろんエレナのことも……」
「――っ!? で、ではエレナが普段から……」
「ああ、普段から本性を隠して男の気を引こうとしていることも知っている」
なんということでしょう。アルフォンス殿下がエレナの秘密を既に知っていたなんて……。
確かによく考えてみれば、王族が婚約者にと考えている人間の身辺調査をしないはずがありませんでした。
「まぁ、そんなことを知らなくても君の代わりなんて誰も居ないから、エレナの言葉などに耳を傾ける気はなかったんだけど……。僕は何を犠牲にしてもアリシアだけは守るつもりだから――」
「エレナが大変失礼なことを。なんとお詫びを申し上げれば良いか」
アルフォンス殿下の言葉に私は妹の非礼を詫びます。
あの子はなんと失礼なことを……。殿下を怒らせでもしたら、どうするつもりだったのでしょうか。
「アリシア、安心してくれ。僕は君の妹に憤りなど感じていない。調べる途中で彼女のもう一つの理由を知ってしまっていたから」
「もう一つの秘密?」
「……ああ。だからこそ、僕の言葉を聞いた彼女は嬉しそうに笑った。そして“合格”と呟き……、“姉を不幸にしたら許さない”と言葉を残して去って行ったんだ」
「――っ!?」
◆ ◆ ◆
「エレナ! あなたは――今まで、私に隠れて何をしていたのですか!? あなた、ずっと私のこと――」
「あら、アルフォンス様ったら。余計なことまで話してしまわれたみたいですわね。何ともお喋りな方です。――ですが、アリシア姉様の質問には答えるつもりはありませんの」
アルフォンス殿下から聞かされた事実は、彼女が可愛げのある女を演じつつ、私に近付こうとする問題を抱えている男性をずっと追い払っていたということ。
私の知らないところでも縁談に発展しないように握りつぶすようなことをしていたらしいのです。
「――勝手にわたくしがしたことです。アリシア姉様が気にすることではありませんわ」
「気にするに決まっています!」
「ですが、わたくしが姉様に構うのはこれが最後です。明日から隣国に留学に行ってきますから」
「り、隣国に留学……? な、なぜ、そのようなことを急に……?」
唐突に留学などと口にする私は驚いてしまいました。
この家から出ていくなんて、そんなことは聞いていません。
「ふふ、当たり前のことを聞かないでくださいまし。……隣国の王子様と結婚するためですよ。それくらいの殿方でなくては、わたくしと釣り合いませんから。姉様もヨシュア様などではなく、ご自分と釣り合う男性と一緒になれて良かったですわね――」
そう言って、あの子は爽やかに笑いました。
そして、父には話を通していたらしく、翌日には本当に隣国に旅立ってしまいます。
何ということでしょうか。私は妹について何一つ知らなかったのです。そう、あの子の本性を――。
◇ ◇ ◇
あとがき
感想で早くもエレナの目的とか当てられちゃったので、もう少し引っ張るつもりでしたが、早めにネタバラシしました。
このあとは、寧ろここからが自分的には本編というかエレナ視点での【真相編】を何話かお送りしようと思います。
「えっ……?」
ヨシュア様と婚約解消をしてから、一週間ほど経ったある日……私はアルフォンス殿下と食事をしていました。
彼は妹のエレナと会ったという話をします。
それも、本当にどうやったのか分からない方法でアルフォンス殿下と連絡を取って。
「最初は気持ち悪い演技がかった甘えたような口調で君の悪口を言っていた。真面目すぎるとか、冗談が通じないとか、世間知らずだとか、ね」
エレナは私の悪口をアルフォンス殿下に吹き込むために殿下に接触したみたいです。
やはり王子様と結婚したいと口にしたのは、アルフォンス殿下をも奪おうとして……。
私は殿下の話の続きを聞くことが怖くなってきました。
「僕は“そんなことは知っている。だから好きなのだ”と答えたよ。もちろん、それ以外にも魅力は沢山あるけどね」
「アルフォンス殿下……」
「そう答えると彼女は不敵に笑った。王子の婚約者になると嫉妬や羨望から、嫌がらせをされたりするかもしれないし、精神的な重圧に君が耐えられないかもしれないと忠告して……自分を婚約者にすれば、誰もが納得できるように振る舞ってみせると言ってのけた」
あの子、なんてコトをアルフォンス殿下に……。
しかし、ヨシュア様のときと違い……そんなにはっきりと私に取って代わろうとするのですね。
アルフォンス殿下のことは信じていますが、あの子のほうが私よりもきれいですし……。
「こんなことまで君に言うつもりは無かったんだけど、僕は君の家族についてある程度調べているんだ。もちろんエレナのことも……」
「――っ!? で、ではエレナが普段から……」
「ああ、普段から本性を隠して男の気を引こうとしていることも知っている」
なんということでしょう。アルフォンス殿下がエレナの秘密を既に知っていたなんて……。
確かによく考えてみれば、王族が婚約者にと考えている人間の身辺調査をしないはずがありませんでした。
「まぁ、そんなことを知らなくても君の代わりなんて誰も居ないから、エレナの言葉などに耳を傾ける気はなかったんだけど……。僕は何を犠牲にしてもアリシアだけは守るつもりだから――」
「エレナが大変失礼なことを。なんとお詫びを申し上げれば良いか」
アルフォンス殿下の言葉に私は妹の非礼を詫びます。
あの子はなんと失礼なことを……。殿下を怒らせでもしたら、どうするつもりだったのでしょうか。
「アリシア、安心してくれ。僕は君の妹に憤りなど感じていない。調べる途中で彼女のもう一つの理由を知ってしまっていたから」
「もう一つの秘密?」
「……ああ。だからこそ、僕の言葉を聞いた彼女は嬉しそうに笑った。そして“合格”と呟き……、“姉を不幸にしたら許さない”と言葉を残して去って行ったんだ」
「――っ!?」
◆ ◆ ◆
「エレナ! あなたは――今まで、私に隠れて何をしていたのですか!? あなた、ずっと私のこと――」
「あら、アルフォンス様ったら。余計なことまで話してしまわれたみたいですわね。何ともお喋りな方です。――ですが、アリシア姉様の質問には答えるつもりはありませんの」
アルフォンス殿下から聞かされた事実は、彼女が可愛げのある女を演じつつ、私に近付こうとする問題を抱えている男性をずっと追い払っていたということ。
私の知らないところでも縁談に発展しないように握りつぶすようなことをしていたらしいのです。
「――勝手にわたくしがしたことです。アリシア姉様が気にすることではありませんわ」
「気にするに決まっています!」
「ですが、わたくしが姉様に構うのはこれが最後です。明日から隣国に留学に行ってきますから」
「り、隣国に留学……? な、なぜ、そのようなことを急に……?」
唐突に留学などと口にする私は驚いてしまいました。
この家から出ていくなんて、そんなことは聞いていません。
「ふふ、当たり前のことを聞かないでくださいまし。……隣国の王子様と結婚するためですよ。それくらいの殿方でなくては、わたくしと釣り合いませんから。姉様もヨシュア様などではなく、ご自分と釣り合う男性と一緒になれて良かったですわね――」
そう言って、あの子は爽やかに笑いました。
そして、父には話を通していたらしく、翌日には本当に隣国に旅立ってしまいます。
何ということでしょうか。私は妹について何一つ知らなかったのです。そう、あの子の本性を――。
◇ ◇ ◇
あとがき
感想で早くもエレナの目的とか当てられちゃったので、もう少し引っ張るつもりでしたが、早めにネタバラシしました。
このあとは、寧ろここからが自分的には本編というかエレナ視点での【真相編】を何話かお送りしようと思います。
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