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第七話
しおりを挟む巫女の護衛についてリックたちに尋ねると、月に一度だけメーリンガム王宮の中庭でそれが行われるという話を聞きました。
こちらの試験もかなりの難関らしく、しかも怪我人も出るほど過酷なので受けるにはそれなりの覚悟がいるとのことです。
怪我しても回復魔法が使えますし、何とかなるでしょう。
親切な彼らはギルドの事務所から試験を受けるために必要な書類を貰ってきてくださり、ちょうど三日後に行われる今月の試験を受けさせて貰えるように手配してもらえました。
知り合ったばかりなのにここまでしてもらえて恐縮です。世の中そんなに嫌なことばかり続かないということでしょうか……。
試験があるまでの三日間、私は宿をとって着替えを買ったり、剣や槍から暗器まであらゆる武器を買ったりしました。
貴重な人材である巫女の護衛になるための試験ということは、様々な状況に適応して戦える武力を持ち合わせなくてはならないと思いましたので、出来る限りの準備をしたのです。
そして、試験当日――。
「やはり、この格好が一番しっくりきますね……」
色々と着替えたりしてみたのですが、やはりネルシュタイン家が御用達している仕立て屋にオーダーメイドで作らせた、このメイド服が最も動きやすい格好みたいでした。
ちょっと場違い感があるかもしれませんが、私は普段通りのメイド服でメーリンガム王国の宮殿に向かいます。
出来るだけ準備は整えましたから、あとはそれを活かせるか……ですが。
「武器などは、こちらで用意したものを使ってもらいます。なので、持っておられるものは全て預からせてもらいますね」
「…………」
用意した武器が受付の女性に回収されました。
さっそく前途多難の予感がします。そういうことは書類に書いてくれればよろしいのに……。
「諸君、よく来てくれた。巫女様の護衛はこの国で最も危険を伴う仕事だ。そんな仕事に就きたいと思ってくれた諸君はすでに十分に勇者である。――だが、生半可な戦力は逆に巫女様を危険に晒すこととなる。諸君には巫女様の安全を守るにあたって、最低限の強さを示してもらいたい」
黒髪で顎髭を蓄えた筋骨隆々の中年の男性――巫女の護衛団の団長だというクラウドは、試験官としての激励を込めた挨拶をしました。
なるほど、護衛に求められるのは単純に強さのみなのですね……。
それなら、何とかなるかもしれません。
「おいおい、メイドちゃんも試験受けるのかよ。やめとけ、やめとけ、怪我しても知らねーぞ」
上半身裸の金髪の巨漢が私に話しかけてきました。
やはりこの姿は目立つみたいです。メイド服で試験を受けているのは私しか居ないですし。
参加人数は大体10人くらいみたいですね……。
「……ご忠告どうも。怪我をしないように気を付けます」
「へぇ、俺を見てもビビらないんだ。――ぐはっ……」
巨漢は私を蔑むような目をした直後に飛んできたナイフで背中を刺されて倒れてしまいます。
試験って本当に怪我人が出るんですね……。私はキャッチしたナイフを見ながらそう思いました。
私の方にもそれが飛んできたので咄嗟に掴んでしまったのです。
周りを見ると彼の他に4人もナイフで刺されて蹲っていました。どうやら、予告もなしに試験が開始されてたみたいです。
危険はいつ、やって来るかわからないということでしょうか……。
「よし、よく避けたな。残りの5人は第二試験だ。第二試験は私に一撃入れることだ。もちろん、その前にナイフが当たる前に、な……」
クラウドは全身から四方八方にわたってナイフを大量に投げつけてきました。
「うっ……」
「ぐっ……」
「に、逃げ場がないっ……」
「ダメっ……」
二次試験に残った受験者たちは、クラウドによる凶弾に倒れ――いつの間にか受験者は私だけになっています。
でも、そのおかげで――。
「一撃ってこれでも大丈夫ですか?」
「――っ!? ま、まさか、私の――」
私はクラウドの髭をナイフで切り落として質問をしました。
あまりにも伸び放題だったので、見ていられなかったのです。
「お、驚いた……。この私が気配すら気付かないとは…………」
愕然とした表情をするクラウド。知らぬ間に髭を剃られたことがショックだったのでしょう。
あと、差し出がましいかもしれませんが……。
「あれっ? ナイフに刺された怪我が……」
「完全に治ってる……?」
「どういうことだ……?」
そう、私はナイフで刺されていた受験者の方々を回復魔法で治したのです。
やはり、怪我をされている人を放置するのは気が引けるので……。
「そ、その上、いつの間に回復魔法を……」
クラウドはマジマジと私を見て、高らかに宣言しました。
「エミリア・ネルシュタイン、そなたを巫女の護衛として任ずる……」
ということで、割とあっさり私は巫女の護衛になりました。聖女に仕えるメイドから、今度は巫女ですか……。人生わからないものです。
しかし、近いうちに自分の身にあんなことが起きるなんて思いもよりませんでした――。
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