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終章/恋人以上家族未満
ハッピーエンド
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数日後のある昼下がり――……
「お前に出会えてよかった」
そう穏やかに話す直は、柔らかい草の上で穏やかに微笑んでいた。
ここは黒崎家のすぐ近くの草原。生い茂る木陰の下で俺と直は日向ぼっこをしている。温かくて風が心地よくてとてもいい気持ち。久しぶりの休暇はここでのんびり過ごしていた。
「いきなりどうしたんだよ。んな事言って」
「本当に前からそう思ってたんだよ。お前がいたからオレはここにいて、本当の両親の事も知れて、充実した毎日を送れてるんだって事」
「直……」
「お前がいなかったらオレは、きっとこんな穏やかになれる事も知らず、母親の事も知らず、悲惨で悲しい人生を送っていたんだろうと思うから」
これからは空白の20年分の親孝行をしたいと話す直。
母親の早苗さんとは親子関係だとわかった後も、どこか気を使ってしまう部分も見受けられるが、少しずつ少しずつ打ち解け、今でははっきりと「お母さん」と呼べるようになってきたらしい。
「お前自身がんばったからだろ。俺は別になんもしてないし…」
「そんな事ねぇだろ。お前はオレが惚れただけの事はある。お前の存在にどれだけ助けられたと思ってんだよ。今じゃお前なしの生活なんて絶対考えられないくらいお前の存在は大きいのに」
直は俺をぎゅっと抱きしめてくる。苦しいってのに本当に容赦なく強く抱きしめてくる。
「苦しいってば。加減しろって」
「足りないんだよお前が。お前が好きすぎるから、抱きしめるだけじゃなくて今すぐセックスしたくなる」
直の奴はオレをエロ目線で見てくる。最近本当に場所を選ばなくなってきたほど、すぐ俺にヤリたいアピールを前面に押し出してきやがる。さすがに野外は御免であるのに、煽りまくってくるから性質が悪い
「どんだけ盛ってんだよ。昨日めちゃくちゃしたくせによ。おかげでまだ腰痛いっての」
「何度シテもお前見てるとすぐムラムラくるんだからしゃあねぇだろ。お前の乱れる姿を仕事中でも妄想しちまうし」
直が俺の太ももに押し付けてくる。アレを。完璧でかくなっているようだ。
「っ…この万年エロ野郎が…っ!」
やめろと言っても、どうせ後でされるがままになっちまうんだろうな、俺は。
わがままなコイツに振り回されるのは嫌いじゃないし、何より甘えてくるこいつが可愛いと思ってしまうから、厄介な惚れた弱味だ…。
「夜…いっぱいシテいいから…今だけは我慢しろって」
「…本当か…?そう言うといっぱいするから。風呂でもベットでも」
「言わなくてもスルくせに。気絶するまで」
「じゃあ夜まで我慢する」
ちゅっと唇にキスを落として直は微笑む。
こいつ、本当によく笑うようになったよな。
「本当はいつでもどこでもお前といたいけど、仕事のせいで帰れない日もあれば長期間出張の時もある。だから……あと五年待ってほしいんだ」
「…五年…?」
俺が訝しげに直を見る。
「五年経ったら、後継者に矢崎グループ全てを任せるつもりなんだ。その後継者に友里香の旦那がいいとオレは目星をつけてる。それなりに実力もあるし、頭もいいし、会社全部を任せられる器があると判断した。だからオレはそのまま裏方に身を退き、黒崎 直として人生をやり直す」
「てことは……一般人になるってことか?」
「完全に、というわけじゃない。元社長という肩書きから、完全に矢崎家と関わらなくなる事はないし、たまに行われる定例会議や後継者の指導にあたることもある。だから、この矢崎家の元社長という肩書きはずっとついてくるんだろう。でも仕事をするのは本当にたまにだ。それを抜かせば、オレはここで黒崎直としてお前と静かに暮らしていける。母さんや直純ともたまに会って、家族として一緒に過ごしていく。それがオレのこれからの夢」
そう話す直は本当に穏やかな顔をしている。
「叶うよ、ううん。もうここにいる時点でそれは決まってる。だって、お前は俺といる時は矢崎直じゃない。黒崎直なんだから」
慈愛に微笑む甲斐。
ああ、本当にこいつは――……いつだってオレを包み込んでくれる。
オレを……幸せにしてくれる。
幸せを運んできてくれる奴なんだって。
「本当に……お前と出会えてよかった……」
どうしようもない人生だと思っていた。
ただの財閥社長としてツマラナイ人生を送るんだって思ってた。お前と出会う前は。
お前がオレを救ってくれたんだよ――……甲斐。
将来を悲観し、あれほど真っ赤に傷ついていた心は、今じゃ完全に癒え、まっさらなほど綺麗に修復されていた。
これからもそれは続く。お前といる限り、ずっと………
「甲斐」
「ん?」
「今度、お前の両親の墓参りもしような」
「……ああ、そうだな」
END
あとがき
ここまで読んでくださってありがとうございました!
7年以上前くらいに書いた長編BLの処女作だったんで、文章力や表現やストーリーが突っ込み所満載だし、稚拙すぎて今読むと恥ずかしいものですが、この作品のおかげで続編などが誕生したりしたものです。
さらに二人が完全無欠のハッピーエンド目指して頑張る様子を見たい方は、ユカイtheストーリー(リメイク転生)を続きもののような形でお読みください。
金持ち学園以上にギャグで突っ込み所満載で、悲恋な所もパワーアップしている甲斐の人生をテーマにしております。興味のある方はどうぞ。
このままハッピーエンドでいいやという方は何も見ないで閉じてください。
お付き合いありがとうございました。
「お前に出会えてよかった」
そう穏やかに話す直は、柔らかい草の上で穏やかに微笑んでいた。
ここは黒崎家のすぐ近くの草原。生い茂る木陰の下で俺と直は日向ぼっこをしている。温かくて風が心地よくてとてもいい気持ち。久しぶりの休暇はここでのんびり過ごしていた。
「いきなりどうしたんだよ。んな事言って」
「本当に前からそう思ってたんだよ。お前がいたからオレはここにいて、本当の両親の事も知れて、充実した毎日を送れてるんだって事」
「直……」
「お前がいなかったらオレは、きっとこんな穏やかになれる事も知らず、母親の事も知らず、悲惨で悲しい人生を送っていたんだろうと思うから」
これからは空白の20年分の親孝行をしたいと話す直。
母親の早苗さんとは親子関係だとわかった後も、どこか気を使ってしまう部分も見受けられるが、少しずつ少しずつ打ち解け、今でははっきりと「お母さん」と呼べるようになってきたらしい。
「お前自身がんばったからだろ。俺は別になんもしてないし…」
「そんな事ねぇだろ。お前はオレが惚れただけの事はある。お前の存在にどれだけ助けられたと思ってんだよ。今じゃお前なしの生活なんて絶対考えられないくらいお前の存在は大きいのに」
直は俺をぎゅっと抱きしめてくる。苦しいってのに本当に容赦なく強く抱きしめてくる。
「苦しいってば。加減しろって」
「足りないんだよお前が。お前が好きすぎるから、抱きしめるだけじゃなくて今すぐセックスしたくなる」
直の奴はオレをエロ目線で見てくる。最近本当に場所を選ばなくなってきたほど、すぐ俺にヤリたいアピールを前面に押し出してきやがる。さすがに野外は御免であるのに、煽りまくってくるから性質が悪い
「どんだけ盛ってんだよ。昨日めちゃくちゃしたくせによ。おかげでまだ腰痛いっての」
「何度シテもお前見てるとすぐムラムラくるんだからしゃあねぇだろ。お前の乱れる姿を仕事中でも妄想しちまうし」
直が俺の太ももに押し付けてくる。アレを。完璧でかくなっているようだ。
「っ…この万年エロ野郎が…っ!」
やめろと言っても、どうせ後でされるがままになっちまうんだろうな、俺は。
わがままなコイツに振り回されるのは嫌いじゃないし、何より甘えてくるこいつが可愛いと思ってしまうから、厄介な惚れた弱味だ…。
「夜…いっぱいシテいいから…今だけは我慢しろって」
「…本当か…?そう言うといっぱいするから。風呂でもベットでも」
「言わなくてもスルくせに。気絶するまで」
「じゃあ夜まで我慢する」
ちゅっと唇にキスを落として直は微笑む。
こいつ、本当によく笑うようになったよな。
「本当はいつでもどこでもお前といたいけど、仕事のせいで帰れない日もあれば長期間出張の時もある。だから……あと五年待ってほしいんだ」
「…五年…?」
俺が訝しげに直を見る。
「五年経ったら、後継者に矢崎グループ全てを任せるつもりなんだ。その後継者に友里香の旦那がいいとオレは目星をつけてる。それなりに実力もあるし、頭もいいし、会社全部を任せられる器があると判断した。だからオレはそのまま裏方に身を退き、黒崎 直として人生をやり直す」
「てことは……一般人になるってことか?」
「完全に、というわけじゃない。元社長という肩書きから、完全に矢崎家と関わらなくなる事はないし、たまに行われる定例会議や後継者の指導にあたることもある。だから、この矢崎家の元社長という肩書きはずっとついてくるんだろう。でも仕事をするのは本当にたまにだ。それを抜かせば、オレはここで黒崎直としてお前と静かに暮らしていける。母さんや直純ともたまに会って、家族として一緒に過ごしていく。それがオレのこれからの夢」
そう話す直は本当に穏やかな顔をしている。
「叶うよ、ううん。もうここにいる時点でそれは決まってる。だって、お前は俺といる時は矢崎直じゃない。黒崎直なんだから」
慈愛に微笑む甲斐。
ああ、本当にこいつは――……いつだってオレを包み込んでくれる。
オレを……幸せにしてくれる。
幸せを運んできてくれる奴なんだって。
「本当に……お前と出会えてよかった……」
どうしようもない人生だと思っていた。
ただの財閥社長としてツマラナイ人生を送るんだって思ってた。お前と出会う前は。
お前がオレを救ってくれたんだよ――……甲斐。
将来を悲観し、あれほど真っ赤に傷ついていた心は、今じゃ完全に癒え、まっさらなほど綺麗に修復されていた。
これからもそれは続く。お前といる限り、ずっと………
「甲斐」
「ん?」
「今度、お前の両親の墓参りもしような」
「……ああ、そうだな」
END
あとがき
ここまで読んでくださってありがとうございました!
7年以上前くらいに書いた長編BLの処女作だったんで、文章力や表現やストーリーが突っ込み所満載だし、稚拙すぎて今読むと恥ずかしいものですが、この作品のおかげで続編などが誕生したりしたものです。
さらに二人が完全無欠のハッピーエンド目指して頑張る様子を見たい方は、ユカイtheストーリー(リメイク転生)を続きもののような形でお読みください。
金持ち学園以上にギャグで突っ込み所満載で、悲恋な所もパワーアップしている甲斐の人生をテーマにしております。興味のある方はどうぞ。
このままハッピーエンドでいいやという方は何も見ないで閉じてください。
お付き合いありがとうございました。
応援ありがとうございます!
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