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46.回復
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「これからは遠慮なくいくから。唇にする方がよかった?」
頬を赤くさせるパスカルはぶんぶんと顔を振っている。
「ふふ、パスカルは恥ずかしがり屋だね。これで恥ずかしがってたら、今後キスもエッチもできないよ?」
それを想像したのか、パスカルの顔はますます真っ赤に染まった。それに可愛らしいなと思いながら、一先ず元気そうなパスカルに安心。また後で来ると伝えて部屋に戻る。エミリーと他の医者が待機していた。
「パスカル君はもう大丈夫です。昨日が峠だったのが嘘のように回復に向かってます。血圧脈拍体温と正常値。オメガセロトニンの数値も一気に増え、オメガ肺炎の症状も少しずつ薄れて完治に向かうでしょう。全ては運命の番と番った効果と言っても過言ではありません」
「運命の番、か。病気を完治させるほどの効果があるんだな」
「はい。だから運命の番と番った時、不遇なレアオメガは幸せになれると言われているのです」
「……それならちゃんとそうしてやらないとな」
パスカルを幸せにする事。オメガやレアオメガがもっと生きやすい法設備や環境を整える政策を考える。それが今後のメルキオールの使命のように思えた。
パスカルと番になった時、膨大な記憶が脳裏によぎったが、あれはやっぱり………
それからすぐ、パスカルはシェルターを出る事ができた。そのままレアオメガ専用の一般病院に移送されてしばらくそこで生活。
オメガ肺炎も早いスピードで完治に向かい、体力も少しずつ元に戻ってきている。あれだけ吐いていた血も吐かなくなり、咳も収まってきている。今では自力で歩けるようにもなって、いろんなリハビリ活動を積極的に行うようになった。
はやく退院したい。メルと一緒に生きていくために。幸せになるために。
「はい、あーん」
「め、メル……自分で食べられるから」
「だーめ」
ミルクのリゾットをスプーンですくって一方的に差し出してくるメルはニコニコだ。その笑顔の裏には強引さと腹黒さが垣間見える気がする。
「で、でも恥ずかしいから。看護師さんもたまに見に来るのに」
「見せつければいいよ。むしろ見せつけたいな。イチャイチャぶり」
「あんまり目立つ真似するとメルの正体がばれちゃうじゃないか」
「オレはバレても全然かまわないけど」
「や、よくないでしょ」
ホームレスの格好だとさすがに清潔区域の病院には入れないので、今は平民のような格好をしている。平民の格好とはいえ、メルの皇太子としてのオーラと美しい容姿も相まって目立つので、若い看護師達からは注目の的らしい。今日もメルの姿を見かけた看護師達が頬を染めて見惚れていた。
「ほら、今日も観念してオレに介助されて。こんなイケメンに食事食べさせてもらえるんだから贅沢だと思わないと」
「自分で言わないでよっ」
たしかにその通りだが、その一緒にいる自分はぱっとしない平凡顔なので、なんでこんな平凡にこんなイケメンが。って目で見られる今日この頃だ。
「パスカルはそう思わないの?」
「そりゃ……メルはイケメンだけど……同性だし」
「つれないなぁ。パスカルにこそカッコイイって思われたいのに」
「俺、元々イケメン嫌いだったからね。僻みだけど」
「でもパスカルは可愛いよ」
「それ、今関係なくない?あと可愛いとか嬉しくない」
メルの方が時々可愛いと思うのに……なんて言っても倍に言われ返されるのでやめておく。
最初は手を動かす事すらままならなくて介助をしてもらったが、今はちゃんと自分で食事もできるしトイレや入浴も自分一人でやれる。トイレや入浴介助の際はとても恥ずかしかったが、今は自分で動ける分余計に恥ずかしく感じる。
「ね、美味しい?」
「う、うん……オイシイデス」
根負けして、仕方なくメルの愛情たっぷりなお世話を受ける羽目になっている。バカップルもいい所だ。
そもそも、一国の皇太子様になんて事をさせているんだろうと思う。国の重鎮が見たら大顰蹙を買いそうだ。だから遠慮すると伝えているのだが、メルは自分がやりたいと言って利かないのだ。大事なパートナーだからと。
「ねえ、俺、もう大丈夫だから……」
「何言ってるの。オメガ肺炎が完治間近と言っても、気を抜いたらすぐ体調を崩すのがレアオメガなんだから。治るまでは何もしなくていいよ。全部オレがするから」
「うう……」
「一度死にかけて心配させたんだからね。もうあんな思いするの嫌なんだから」
頬を赤くさせるパスカルはぶんぶんと顔を振っている。
「ふふ、パスカルは恥ずかしがり屋だね。これで恥ずかしがってたら、今後キスもエッチもできないよ?」
それを想像したのか、パスカルの顔はますます真っ赤に染まった。それに可愛らしいなと思いながら、一先ず元気そうなパスカルに安心。また後で来ると伝えて部屋に戻る。エミリーと他の医者が待機していた。
「パスカル君はもう大丈夫です。昨日が峠だったのが嘘のように回復に向かってます。血圧脈拍体温と正常値。オメガセロトニンの数値も一気に増え、オメガ肺炎の症状も少しずつ薄れて完治に向かうでしょう。全ては運命の番と番った効果と言っても過言ではありません」
「運命の番、か。病気を完治させるほどの効果があるんだな」
「はい。だから運命の番と番った時、不遇なレアオメガは幸せになれると言われているのです」
「……それならちゃんとそうしてやらないとな」
パスカルを幸せにする事。オメガやレアオメガがもっと生きやすい法設備や環境を整える政策を考える。それが今後のメルキオールの使命のように思えた。
パスカルと番になった時、膨大な記憶が脳裏によぎったが、あれはやっぱり………
それからすぐ、パスカルはシェルターを出る事ができた。そのままレアオメガ専用の一般病院に移送されてしばらくそこで生活。
オメガ肺炎も早いスピードで完治に向かい、体力も少しずつ元に戻ってきている。あれだけ吐いていた血も吐かなくなり、咳も収まってきている。今では自力で歩けるようにもなって、いろんなリハビリ活動を積極的に行うようになった。
はやく退院したい。メルと一緒に生きていくために。幸せになるために。
「はい、あーん」
「め、メル……自分で食べられるから」
「だーめ」
ミルクのリゾットをスプーンですくって一方的に差し出してくるメルはニコニコだ。その笑顔の裏には強引さと腹黒さが垣間見える気がする。
「で、でも恥ずかしいから。看護師さんもたまに見に来るのに」
「見せつければいいよ。むしろ見せつけたいな。イチャイチャぶり」
「あんまり目立つ真似するとメルの正体がばれちゃうじゃないか」
「オレはバレても全然かまわないけど」
「や、よくないでしょ」
ホームレスの格好だとさすがに清潔区域の病院には入れないので、今は平民のような格好をしている。平民の格好とはいえ、メルの皇太子としてのオーラと美しい容姿も相まって目立つので、若い看護師達からは注目の的らしい。今日もメルの姿を見かけた看護師達が頬を染めて見惚れていた。
「ほら、今日も観念してオレに介助されて。こんなイケメンに食事食べさせてもらえるんだから贅沢だと思わないと」
「自分で言わないでよっ」
たしかにその通りだが、その一緒にいる自分はぱっとしない平凡顔なので、なんでこんな平凡にこんなイケメンが。って目で見られる今日この頃だ。
「パスカルはそう思わないの?」
「そりゃ……メルはイケメンだけど……同性だし」
「つれないなぁ。パスカルにこそカッコイイって思われたいのに」
「俺、元々イケメン嫌いだったからね。僻みだけど」
「でもパスカルは可愛いよ」
「それ、今関係なくない?あと可愛いとか嬉しくない」
メルの方が時々可愛いと思うのに……なんて言っても倍に言われ返されるのでやめておく。
最初は手を動かす事すらままならなくて介助をしてもらったが、今はちゃんと自分で食事もできるしトイレや入浴も自分一人でやれる。トイレや入浴介助の際はとても恥ずかしかったが、今は自分で動ける分余計に恥ずかしく感じる。
「ね、美味しい?」
「う、うん……オイシイデス」
根負けして、仕方なくメルの愛情たっぷりなお世話を受ける羽目になっている。バカップルもいい所だ。
そもそも、一国の皇太子様になんて事をさせているんだろうと思う。国の重鎮が見たら大顰蹙を買いそうだ。だから遠慮すると伝えているのだが、メルは自分がやりたいと言って利かないのだ。大事なパートナーだからと。
「ねえ、俺、もう大丈夫だから……」
「何言ってるの。オメガ肺炎が完治間近と言っても、気を抜いたらすぐ体調を崩すのがレアオメガなんだから。治るまでは何もしなくていいよ。全部オレがするから」
「うう……」
「一度死にかけて心配させたんだからね。もうあんな思いするの嫌なんだから」
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