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63.バカ王子の婚約破棄
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「おい、そこの二人!殿下もレイモンドも調子にのるんじゃねえぜ。リリアは俺のものだ」
「ディアス!」
第三の男、ヴァユ国騎士団団長の短髪男ディアスがその三人の間に割り込もうとする。傍観していたパスカルは「チョロキュー三馬鹿勢ぞろいキター」と、盛り上がりもクソもないしらけ顔で呟く。もはやリリアが男をたぶらかす教祖のように見えるので、このディアスとやらもリリア親衛教会に入会するのに名乗りをあげたようだ。
「その天使リリアは俺が悩んでいる時にいつもそばにいて声を掛けてくれたんだ。あなたなら立派な騎士になれるわって励ましてくれたんだ。そんな慈愛の精神の塊の彼女は俺がもらい受ける!」
「何を勝手な事を言うんだディアス!」
「自分だけいい所を持っていこうというのですか。リリアはお前だけのものではありませんよ」
「ふん、リリアは昨日枕元で言ってくれたんだ。あなたの恋人にリリアがなってあげるとな。一番恋人として有利なのは俺だろう」
「うん、ディアス!みんな私の恋人だよっ。体ならいつでも貸してあげる。だからぁ、私のために争うのはやめてねっ。みんな仲良くしよ。仲良くすればケンカも起きないんだからっ」
リリアのきゅるるんと効果音がつきそうな上目遣いに三人は頬を赤らめて固まる。チョロキュー三馬鹿はあっさりとリリアのあざとさに陥落している模様だ。
「そ、そうだな。リリアを三人でわけあおう」
「分け合うのは心苦しいですがリリアの可愛さに免じてこれくらいにしておきます」
「ただ、将来リリアと結婚するのだけは恨みっこなしの勝負だからな」
「やだっ、結婚だなんてディアスったらぁ。でもぉ、結婚は恋する可愛い乙女の夢だから私、将来が楽しみだよっ、えへへ」
「っ、リリア、必ず私がリリアを落として見せるっ」
「いや、ぼくが殿下より先に女神さまのハートを射止めて見せる」
「殿下にも七三分けのがり勉にもリリアは渡さないぞ。この争奪戦は誰にも負けられんっ!」
三馬鹿の三つ巴決戦は誰も盛り上がりなく始まる。ヴァユの王族貴族ともあろう者が平民の女一人に夢中になっている光景に、ヴァユ国の招待客達は居た堪れないだろうと思うからだ。あんなのが未来を担う子息だなんて目も当てられない。バカな女一人を巡っての取り合い寸劇は茶番もいいところであった。
パスカルとメルキオールはあきれ果ててこの場から離れようと踵を返した。
「あーパスカル君!どこ行くの~?!ちょっと待ってよっ!」
「……バレてる」
構わず無視して向こうへ行こうとするも、たくさんの貴族達が周りで談笑しているために走って逃げる隙間がなかった。
「ねえ、私にその超カッコイイ人紹介してよっ!喫茶店にいたアカシャの皇太子様なんでしょ?私も仲良くなりたいなっ。未だにパスカル君の番だなんて信じられないけどっ」
やはりリリアに認識されてしまっている。この顔面にヴェールを付けているとはいっても、知っている人が見ればバレてしまうのが悲しい。それにメルの事に執着し始めている。
「リリア。相手はアカシャのメルキオール皇太子殿下だ。我々でもおいそれとは会話できない御方様なんだよ」
「えーそんなのおかしいよっ。仲良くなるのに身分とか関係ないよっ!私はどんな男の子でも仲良くなりたいな」
「リリア……キミは本当に優しいな。そういう身分を越えても全てを慈しむ心を持つなんて普通の女ではこうもいかないだろう」
そう仲良くなりたいと言いながらも、なぜ若い上級貴族の男ばかりと仲良くしているのかを問いたいものだ。ゲーム内でも女の友達が一人もいないために余計に男たらしに見えたのもそのせいだろう。そのせいか、元々そのチョロキュー三馬鹿の婚約者である彼女達が、向こうの方でリリアに向けて鋭い眼差しを向けているのに気づいた。
(そりゃそうなるわな……いろんなイケメン上位貴族に声をかけまくっているのだ。反感を買わないはずがない)
上品な貴族令嬢達に飽き飽きしていたチョロキュー共は、リリアの遠慮のない距離感と天然タラシな部分が可愛らしく見えて新鮮に映るのだろう。
「さすがは僕のリリアだ。どんな相手とも仲良くしようとする心。僕の婚約者としてぴったりだ」
「お前の婚約者ではない。俺の婚約者だ」
「二人ともやめないか。リリアの婚約者は私だぞ」
まだ婚約解消すらしていないのに、もう婚約者気分になっている三馬鹿。その三馬鹿がリリアを大絶賛する横で、そのリリアは持ち上げられてまんざらでもない様子である。三馬鹿の婚約者達の視線はさらに鋭くなり、不穏な空気が漂い始めた。
(彼女達に言いたいよ。こんな浮気バカ男共やめとけってな。全員リリアの御手付きの中古品だぞ)
気の毒そうに彼女達を見ていると、三馬鹿の一人のバカ王子レナードは大きく口を開いた。
「皆の者、いい機会だ。この場で宣言する!私は婚約者のキャロライン・ブルーノ・デュークと今を持って婚約破棄をする!!」
その瞬間、パスカルとメルキオールも含めて一同がざわめく。
(なるほど、これが前世でかの有名な悪役令嬢が婚約破棄をされるというものか。実際この目で見る事になろうとは)
「ディアス!」
第三の男、ヴァユ国騎士団団長の短髪男ディアスがその三人の間に割り込もうとする。傍観していたパスカルは「チョロキュー三馬鹿勢ぞろいキター」と、盛り上がりもクソもないしらけ顔で呟く。もはやリリアが男をたぶらかす教祖のように見えるので、このディアスとやらもリリア親衛教会に入会するのに名乗りをあげたようだ。
「その天使リリアは俺が悩んでいる時にいつもそばにいて声を掛けてくれたんだ。あなたなら立派な騎士になれるわって励ましてくれたんだ。そんな慈愛の精神の塊の彼女は俺がもらい受ける!」
「何を勝手な事を言うんだディアス!」
「自分だけいい所を持っていこうというのですか。リリアはお前だけのものではありませんよ」
「ふん、リリアは昨日枕元で言ってくれたんだ。あなたの恋人にリリアがなってあげるとな。一番恋人として有利なのは俺だろう」
「うん、ディアス!みんな私の恋人だよっ。体ならいつでも貸してあげる。だからぁ、私のために争うのはやめてねっ。みんな仲良くしよ。仲良くすればケンカも起きないんだからっ」
リリアのきゅるるんと効果音がつきそうな上目遣いに三人は頬を赤らめて固まる。チョロキュー三馬鹿はあっさりとリリアのあざとさに陥落している模様だ。
「そ、そうだな。リリアを三人でわけあおう」
「分け合うのは心苦しいですがリリアの可愛さに免じてこれくらいにしておきます」
「ただ、将来リリアと結婚するのだけは恨みっこなしの勝負だからな」
「やだっ、結婚だなんてディアスったらぁ。でもぉ、結婚は恋する可愛い乙女の夢だから私、将来が楽しみだよっ、えへへ」
「っ、リリア、必ず私がリリアを落として見せるっ」
「いや、ぼくが殿下より先に女神さまのハートを射止めて見せる」
「殿下にも七三分けのがり勉にもリリアは渡さないぞ。この争奪戦は誰にも負けられんっ!」
三馬鹿の三つ巴決戦は誰も盛り上がりなく始まる。ヴァユの王族貴族ともあろう者が平民の女一人に夢中になっている光景に、ヴァユ国の招待客達は居た堪れないだろうと思うからだ。あんなのが未来を担う子息だなんて目も当てられない。バカな女一人を巡っての取り合い寸劇は茶番もいいところであった。
パスカルとメルキオールはあきれ果ててこの場から離れようと踵を返した。
「あーパスカル君!どこ行くの~?!ちょっと待ってよっ!」
「……バレてる」
構わず無視して向こうへ行こうとするも、たくさんの貴族達が周りで談笑しているために走って逃げる隙間がなかった。
「ねえ、私にその超カッコイイ人紹介してよっ!喫茶店にいたアカシャの皇太子様なんでしょ?私も仲良くなりたいなっ。未だにパスカル君の番だなんて信じられないけどっ」
やはりリリアに認識されてしまっている。この顔面にヴェールを付けているとはいっても、知っている人が見ればバレてしまうのが悲しい。それにメルの事に執着し始めている。
「リリア。相手はアカシャのメルキオール皇太子殿下だ。我々でもおいそれとは会話できない御方様なんだよ」
「えーそんなのおかしいよっ。仲良くなるのに身分とか関係ないよっ!私はどんな男の子でも仲良くなりたいな」
「リリア……キミは本当に優しいな。そういう身分を越えても全てを慈しむ心を持つなんて普通の女ではこうもいかないだろう」
そう仲良くなりたいと言いながらも、なぜ若い上級貴族の男ばかりと仲良くしているのかを問いたいものだ。ゲーム内でも女の友達が一人もいないために余計に男たらしに見えたのもそのせいだろう。そのせいか、元々そのチョロキュー三馬鹿の婚約者である彼女達が、向こうの方でリリアに向けて鋭い眼差しを向けているのに気づいた。
(そりゃそうなるわな……いろんなイケメン上位貴族に声をかけまくっているのだ。反感を買わないはずがない)
上品な貴族令嬢達に飽き飽きしていたチョロキュー共は、リリアの遠慮のない距離感と天然タラシな部分が可愛らしく見えて新鮮に映るのだろう。
「さすがは僕のリリアだ。どんな相手とも仲良くしようとする心。僕の婚約者としてぴったりだ」
「お前の婚約者ではない。俺の婚約者だ」
「二人ともやめないか。リリアの婚約者は私だぞ」
まだ婚約解消すらしていないのに、もう婚約者気分になっている三馬鹿。その三馬鹿がリリアを大絶賛する横で、そのリリアは持ち上げられてまんざらでもない様子である。三馬鹿の婚約者達の視線はさらに鋭くなり、不穏な空気が漂い始めた。
(彼女達に言いたいよ。こんな浮気バカ男共やめとけってな。全員リリアの御手付きの中古品だぞ)
気の毒そうに彼女達を見ていると、三馬鹿の一人のバカ王子レナードは大きく口を開いた。
「皆の者、いい機会だ。この場で宣言する!私は婚約者のキャロライン・ブルーノ・デュークと今を持って婚約破棄をする!!」
その瞬間、パスカルとメルキオールも含めて一同がざわめく。
(なるほど、これが前世でかの有名な悪役令嬢が婚約破棄をされるというものか。実際この目で見る事になろうとは)
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