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68.クラキ先生とメル
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「だからね、その元嫁がキミに危害を加えるんじゃないかってハラハラしてて、なんとか守ってあげたかったけど事件が起きて守れなくて、ずっとその悔しい想いや後悔を引きずってたんだ。それでこの世界でメルキオールとして転生して、運命の番のパスカルと番った事によって全てを思い出せたってわけ」
この世界がナントカってゲームだという事はかろうじて知っていた。別の看護師がそのゲームの事についてよく話題にしていたので、なんとなく聞いていたがその話題がこの世で役に立つとは思わなかった。
「そうだったんだね。でも、また先生と巡り会えてうれしい。それに先生がメルだったなんて」
やっぱり、運命の番だけあって、前世から深い繋がりがある者同士だった。
「ユウキ」
「は、はいっ」
いきなり前世の名前で呼ばれてドキッとする。
「ねえ、キミは前世の時はオレの事どう思っていたの?クラキとオレどっちが好き?」
「え、どっちがって……先生は先生だったし、メルはちゃんと好きになった人だし……。どっちがいいかはその好きの感情が違うから……。メルは恋愛として大好きだけど、先生は高嶺の花としての憧れの好き、かなあ。友達だと思ってたし」
「ふぅん。憧れの友達かー。まあ、どちらもオレだからいいんだけど、クラキとしても好きになってほしかったなぁ」
頬を膨らませながら少し不満そうなメルは、大人びたクラキ先生とは違って子供っぽい。この子供っぽくて可愛らしい所は前世でも本性だったのかもしれない。
「だって先生は憧れだったけどきっとモテただろうし、俺みたいな平凡の友達になってくれただけで嬉しかったから……。当時は既婚者だったんじゃないの?」
「ユウキと出会った時は離婚してフリーだったんだけどなぁ。だからこれでも勇気を出してモーションかけて、連絡先をゲットしたんだよ?」
「そ、そうだったの。恋愛として見てくれてたなんて思わなかったよ」
「振り向いてほしくて必死でね、淡い恋心抱いてたんだ。食事にでも誘おうと連絡しようとした矢先にキミが襲撃されて最悪だったよ」
離婚後に仲良さそうな自分達を見て嫉妬し、エイズ患者の注射針で刺して人生終了させようとするなんてとんだサイコパスだ。しかも他所の男に浮気しながらなので自分勝手にもほどがある。リリアが大嫌いになるのも当たり前だ。
「ねえ、今度から二人の時だけ、前世の名前で呼んでほしいな。メルキオールはどちらかといえば公向けの真面目皇族キャラだから素の自分とは違うんだ」
「確かに。今思い出せばメルキオールってキャラはゲームでは真面目な皇族キャラだったかも。常に仕事モードのメルっていうか、素の時もクソ真面目だったはず。でも前からゲームと違ってなんか緩い感じだなって思ってた。クラキ先生の人格が宿ってたんだね」
「まだ記憶なかった時からそうだったから、多分そうだろうね」
クラキの人格がメルキオールの真面目さを緩和させてたんだろう。常に皇族キャラでいなきゃいけないなんて堅苦しくて前世の自分からすれば無理な話だ。
「まあとにかく。オレの事はたまに前世の名前で呼んでね」
「う、うん。く、クラキ先生」
「下の名前でだよっ」
「きょ、キョウタさん……?」
「さんはいらないけど」
「だって、先生は年上だし」
「年上とか関係ないじゃん」
「でもなんか先生は先生って感じだもん。メルとは違うんだよ」
「むぅ……じゃあしばらくはそれでいいや。名前のさん付け呼びは案外悪くないし。あとあのリリアは元妻に似てるから要注意しておかないとね。とりあえずはヴァユ王に口酸っぱく脅して言っておいたから、しばらくはあの女から何かしてくる事はないよ。ヴァユに帰ったと思うし」
「ヴァユ王を脅したの?」
「あの親もとんだバカだったからね。ちょっとしっかりしろって尻を叩いた感じ。それで少しはまともになってくれたらいいけどさ。それにもしゲームの強制力が働いたとしても、絶対にあんなバカ女に落とされはしないから、オレを信じて」
「メル……うん。信じてる」
一方その頃、ヴァユ国の王城では大荒れしていた。メルキオールからきつい脅しと忠告を受け、国が滅びる未来が脳裏によぎったヴァユ王は、即刻災いの元凶の一人であるレナードの王太子の身分をはく奪し、リリアに対しても表向きは税金の横領罪として国外追放処分とした。
この世界がナントカってゲームだという事はかろうじて知っていた。別の看護師がそのゲームの事についてよく話題にしていたので、なんとなく聞いていたがその話題がこの世で役に立つとは思わなかった。
「そうだったんだね。でも、また先生と巡り会えてうれしい。それに先生がメルだったなんて」
やっぱり、運命の番だけあって、前世から深い繋がりがある者同士だった。
「ユウキ」
「は、はいっ」
いきなり前世の名前で呼ばれてドキッとする。
「ねえ、キミは前世の時はオレの事どう思っていたの?クラキとオレどっちが好き?」
「え、どっちがって……先生は先生だったし、メルはちゃんと好きになった人だし……。どっちがいいかはその好きの感情が違うから……。メルは恋愛として大好きだけど、先生は高嶺の花としての憧れの好き、かなあ。友達だと思ってたし」
「ふぅん。憧れの友達かー。まあ、どちらもオレだからいいんだけど、クラキとしても好きになってほしかったなぁ」
頬を膨らませながら少し不満そうなメルは、大人びたクラキ先生とは違って子供っぽい。この子供っぽくて可愛らしい所は前世でも本性だったのかもしれない。
「だって先生は憧れだったけどきっとモテただろうし、俺みたいな平凡の友達になってくれただけで嬉しかったから……。当時は既婚者だったんじゃないの?」
「ユウキと出会った時は離婚してフリーだったんだけどなぁ。だからこれでも勇気を出してモーションかけて、連絡先をゲットしたんだよ?」
「そ、そうだったの。恋愛として見てくれてたなんて思わなかったよ」
「振り向いてほしくて必死でね、淡い恋心抱いてたんだ。食事にでも誘おうと連絡しようとした矢先にキミが襲撃されて最悪だったよ」
離婚後に仲良さそうな自分達を見て嫉妬し、エイズ患者の注射針で刺して人生終了させようとするなんてとんだサイコパスだ。しかも他所の男に浮気しながらなので自分勝手にもほどがある。リリアが大嫌いになるのも当たり前だ。
「ねえ、今度から二人の時だけ、前世の名前で呼んでほしいな。メルキオールはどちらかといえば公向けの真面目皇族キャラだから素の自分とは違うんだ」
「確かに。今思い出せばメルキオールってキャラはゲームでは真面目な皇族キャラだったかも。常に仕事モードのメルっていうか、素の時もクソ真面目だったはず。でも前からゲームと違ってなんか緩い感じだなって思ってた。クラキ先生の人格が宿ってたんだね」
「まだ記憶なかった時からそうだったから、多分そうだろうね」
クラキの人格がメルキオールの真面目さを緩和させてたんだろう。常に皇族キャラでいなきゃいけないなんて堅苦しくて前世の自分からすれば無理な話だ。
「まあとにかく。オレの事はたまに前世の名前で呼んでね」
「う、うん。く、クラキ先生」
「下の名前でだよっ」
「きょ、キョウタさん……?」
「さんはいらないけど」
「だって、先生は年上だし」
「年上とか関係ないじゃん」
「でもなんか先生は先生って感じだもん。メルとは違うんだよ」
「むぅ……じゃあしばらくはそれでいいや。名前のさん付け呼びは案外悪くないし。あとあのリリアは元妻に似てるから要注意しておかないとね。とりあえずはヴァユ王に口酸っぱく脅して言っておいたから、しばらくはあの女から何かしてくる事はないよ。ヴァユに帰ったと思うし」
「ヴァユ王を脅したの?」
「あの親もとんだバカだったからね。ちょっとしっかりしろって尻を叩いた感じ。それで少しはまともになってくれたらいいけどさ。それにもしゲームの強制力が働いたとしても、絶対にあんなバカ女に落とされはしないから、オレを信じて」
「メル……うん。信じてる」
一方その頃、ヴァユ国の王城では大荒れしていた。メルキオールからきつい脅しと忠告を受け、国が滅びる未来が脳裏によぎったヴァユ王は、即刻災いの元凶の一人であるレナードの王太子の身分をはく奪し、リリアに対しても表向きは税金の横領罪として国外追放処分とした。
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