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アリアドネはセドリック卿の指導のもと、「薬師アリア」として近隣の村人たちの病や怪我の治療を手伝い始めた。彼女の的確な診断と効果の高い薬は、瞬く間に評判となった。
「アリア様のお薬で、長年苦しんでいた頭痛が治りました!」
「息子の高熱も、一晩で下がったんです!」
村人たちの感謝の声を聞くたびに、アリアドネは自分の価値を実感していく。
(私には確かに才能がある。それを認めてくれない人たちの方が間違っていたのね)
ある日、セドリック卿が重要な来客があると告げた。
「フェリクス・アスター公爵がいらっしゃいます。君にもお会いしたいとのことです」
アスター公爵といえば、若くして公爵位を継いだ有能な人物として知られている。正義感が強く、不正を嫌う性格で、貴族社会でも一目置かれていた。
「アリア嬢とお呼びすればよろしいでしょうか」
フェリクス公爵は礼儀正しく挨拶した。深い青色の瞳と栗色の髪を持つ、凛々しい青年だった。
「セドリック卿から、あなたの才能について伺いました。実は、最近王都で不審な動きがあり、薬草の専門家のご意見を伺いたく」
公爵が持参した資料を見て、アリアドネは眉をひそめた。
「これは……確かに不自然ですね。この薬草の組み合わせでは、本来の効果は期待できません。むしろ、長期間服用すると……」
「やはり。そうなると、これは意図的な……」
公爵とアリアドネの間に、理解が生まれた。エルムウッド家とヴァーミリオン侯爵家の最近の動きに、何らかの不正が隠されている可能性があった。
一方、王都ではリディアが贅沢三昧の限りを尽くしていた。レグルスもそれを咎めるどころか、むしろ助長している。
「リディア、また新しいドレスかい? 君は本当に美しいな」
「ありがとう、レグルス様。お姉様と違って、私は女性らしさを大切にしていますから」
しかし、ヴァーミリオン侯爵家の財政は徐々に傾き始めていた。
アリアドネは、リディアが社交界で自分について嘘の噂を流していることを知った。
「アリアドネ? ああ、あの嫉妬深い元令嬢ね。レグルス様にストーカー行為をしていたそうよ」
「本当に怖い人だったわ。薬草の知識? そんなものあるはずないじゃない」
(薬草の知識がないですって……面白いじゃない)
アリアドネは、リディアの嘘を逆手に取る計画を立てた。セドリック卿の協力を得て、極めて効果の高い鎮静作用のある香油を開発。それをアスター公爵を通じて、心労の絶えない王妃に献上することにした。
「この香油は……素晴らしい効果ですね。製作者にお会いしたいのですが」
王妃の言葉は、アリアドネの計画の第一歩だった。
(リディア、あなたが『アリアドネには薬草の知識なんてない』と言い張った以上、この香油の製作者が私だとは思いもしないでしょうね)
薬師アリアとして王宮への足掛かりを得たアリアドネ。彼女の反撃は、ゆっくりと、しかし確実に始まっていた。
「アリア様のお薬で、長年苦しんでいた頭痛が治りました!」
「息子の高熱も、一晩で下がったんです!」
村人たちの感謝の声を聞くたびに、アリアドネは自分の価値を実感していく。
(私には確かに才能がある。それを認めてくれない人たちの方が間違っていたのね)
ある日、セドリック卿が重要な来客があると告げた。
「フェリクス・アスター公爵がいらっしゃいます。君にもお会いしたいとのことです」
アスター公爵といえば、若くして公爵位を継いだ有能な人物として知られている。正義感が強く、不正を嫌う性格で、貴族社会でも一目置かれていた。
「アリア嬢とお呼びすればよろしいでしょうか」
フェリクス公爵は礼儀正しく挨拶した。深い青色の瞳と栗色の髪を持つ、凛々しい青年だった。
「セドリック卿から、あなたの才能について伺いました。実は、最近王都で不審な動きがあり、薬草の専門家のご意見を伺いたく」
公爵が持参した資料を見て、アリアドネは眉をひそめた。
「これは……確かに不自然ですね。この薬草の組み合わせでは、本来の効果は期待できません。むしろ、長期間服用すると……」
「やはり。そうなると、これは意図的な……」
公爵とアリアドネの間に、理解が生まれた。エルムウッド家とヴァーミリオン侯爵家の最近の動きに、何らかの不正が隠されている可能性があった。
一方、王都ではリディアが贅沢三昧の限りを尽くしていた。レグルスもそれを咎めるどころか、むしろ助長している。
「リディア、また新しいドレスかい? 君は本当に美しいな」
「ありがとう、レグルス様。お姉様と違って、私は女性らしさを大切にしていますから」
しかし、ヴァーミリオン侯爵家の財政は徐々に傾き始めていた。
アリアドネは、リディアが社交界で自分について嘘の噂を流していることを知った。
「アリアドネ? ああ、あの嫉妬深い元令嬢ね。レグルス様にストーカー行為をしていたそうよ」
「本当に怖い人だったわ。薬草の知識? そんなものあるはずないじゃない」
(薬草の知識がないですって……面白いじゃない)
アリアドネは、リディアの嘘を逆手に取る計画を立てた。セドリック卿の協力を得て、極めて効果の高い鎮静作用のある香油を開発。それをアスター公爵を通じて、心労の絶えない王妃に献上することにした。
「この香油は……素晴らしい効果ですね。製作者にお会いしたいのですが」
王妃の言葉は、アリアドネの計画の第一歩だった。
(リディア、あなたが『アリアドネには薬草の知識なんてない』と言い張った以上、この香油の製作者が私だとは思いもしないでしょうね)
薬師アリアとして王宮への足掛かりを得たアリアドネ。彼女の反撃は、ゆっくりと、しかし確実に始まっていた。
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