4 / 8
4話
しおりを挟む
アリアドネはセドリック卿の指導のもと、「薬師アリア」として近隣の村人たちの病や怪我の治療を手伝い始めた。彼女の的確な診断と効果の高い薬は、瞬く間に評判となった。
「アリア様のお薬で、長年苦しんでいた頭痛が治りました!」
「息子の高熱も、一晩で下がったんです!」
村人たちの感謝の声を聞くたびに、アリアドネは自分の価値を実感していく。
(私には確かに才能がある。それを認めてくれない人たちの方が間違っていたのね)
ある日、セドリック卿が重要な来客があると告げた。
「フェリクス・アスター公爵がいらっしゃいます。君にもお会いしたいとのことです」
アスター公爵といえば、若くして公爵位を継いだ有能な人物として知られている。正義感が強く、不正を嫌う性格で、貴族社会でも一目置かれていた。
「アリア嬢とお呼びすればよろしいでしょうか」
フェリクス公爵は礼儀正しく挨拶した。深い青色の瞳と栗色の髪を持つ、凛々しい青年だった。
「セドリック卿から、あなたの才能について伺いました。実は、最近王都で不審な動きがあり、薬草の専門家のご意見を伺いたく」
公爵が持参した資料を見て、アリアドネは眉をひそめた。
「これは……確かに不自然ですね。この薬草の組み合わせでは、本来の効果は期待できません。むしろ、長期間服用すると……」
「やはり。そうなると、これは意図的な……」
公爵とアリアドネの間に、理解が生まれた。エルムウッド家とヴァーミリオン侯爵家の最近の動きに、何らかの不正が隠されている可能性があった。
一方、王都ではリディアが贅沢三昧の限りを尽くしていた。レグルスもそれを咎めるどころか、むしろ助長している。
「リディア、また新しいドレスかい? 君は本当に美しいな」
「ありがとう、レグルス様。お姉様と違って、私は女性らしさを大切にしていますから」
しかし、ヴァーミリオン侯爵家の財政は徐々に傾き始めていた。
アリアドネは、リディアが社交界で自分について嘘の噂を流していることを知った。
「アリアドネ? ああ、あの嫉妬深い元令嬢ね。レグルス様にストーカー行為をしていたそうよ」
「本当に怖い人だったわ。薬草の知識? そんなものあるはずないじゃない」
(薬草の知識がないですって……面白いじゃない)
アリアドネは、リディアの嘘を逆手に取る計画を立てた。セドリック卿の協力を得て、極めて効果の高い鎮静作用のある香油を開発。それをアスター公爵を通じて、心労の絶えない王妃に献上することにした。
「この香油は……素晴らしい効果ですね。製作者にお会いしたいのですが」
王妃の言葉は、アリアドネの計画の第一歩だった。
(リディア、あなたが『アリアドネには薬草の知識なんてない』と言い張った以上、この香油の製作者が私だとは思いもしないでしょうね)
薬師アリアとして王宮への足掛かりを得たアリアドネ。彼女の反撃は、ゆっくりと、しかし確実に始まっていた。
「アリア様のお薬で、長年苦しんでいた頭痛が治りました!」
「息子の高熱も、一晩で下がったんです!」
村人たちの感謝の声を聞くたびに、アリアドネは自分の価値を実感していく。
(私には確かに才能がある。それを認めてくれない人たちの方が間違っていたのね)
ある日、セドリック卿が重要な来客があると告げた。
「フェリクス・アスター公爵がいらっしゃいます。君にもお会いしたいとのことです」
アスター公爵といえば、若くして公爵位を継いだ有能な人物として知られている。正義感が強く、不正を嫌う性格で、貴族社会でも一目置かれていた。
「アリア嬢とお呼びすればよろしいでしょうか」
フェリクス公爵は礼儀正しく挨拶した。深い青色の瞳と栗色の髪を持つ、凛々しい青年だった。
「セドリック卿から、あなたの才能について伺いました。実は、最近王都で不審な動きがあり、薬草の専門家のご意見を伺いたく」
公爵が持参した資料を見て、アリアドネは眉をひそめた。
「これは……確かに不自然ですね。この薬草の組み合わせでは、本来の効果は期待できません。むしろ、長期間服用すると……」
「やはり。そうなると、これは意図的な……」
公爵とアリアドネの間に、理解が生まれた。エルムウッド家とヴァーミリオン侯爵家の最近の動きに、何らかの不正が隠されている可能性があった。
一方、王都ではリディアが贅沢三昧の限りを尽くしていた。レグルスもそれを咎めるどころか、むしろ助長している。
「リディア、また新しいドレスかい? 君は本当に美しいな」
「ありがとう、レグルス様。お姉様と違って、私は女性らしさを大切にしていますから」
しかし、ヴァーミリオン侯爵家の財政は徐々に傾き始めていた。
アリアドネは、リディアが社交界で自分について嘘の噂を流していることを知った。
「アリアドネ? ああ、あの嫉妬深い元令嬢ね。レグルス様にストーカー行為をしていたそうよ」
「本当に怖い人だったわ。薬草の知識? そんなものあるはずないじゃない」
(薬草の知識がないですって……面白いじゃない)
アリアドネは、リディアの嘘を逆手に取る計画を立てた。セドリック卿の協力を得て、極めて効果の高い鎮静作用のある香油を開発。それをアスター公爵を通じて、心労の絶えない王妃に献上することにした。
「この香油は……素晴らしい効果ですね。製作者にお会いしたいのですが」
王妃の言葉は、アリアドネの計画の第一歩だった。
(リディア、あなたが『アリアドネには薬草の知識なんてない』と言い張った以上、この香油の製作者が私だとは思いもしないでしょうね)
薬師アリアとして王宮への足掛かりを得たアリアドネ。彼女の反撃は、ゆっくりと、しかし確実に始まっていた。
133
あなたにおすすめの小説
【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります
禅
恋愛
妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。
せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。
普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……
唯一の味方は学友のシーナのみ。
アリーシャは幸せをつかめるのか。
※小説家になろうにも投稿中
私ではありませんから
三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」
はじめて書いた婚約破棄もの。
カクヨムでも公開しています。
婚約者にざまぁしない話(ざまぁ有り)
しぎ
恋愛
「ガブリエーレ・グラオ!前に出てこい!」
卒業パーティーでの王子の突然の暴挙。
集められる三人の令嬢と婚約破棄。
「えぇ、喜んで婚約破棄いたしますわ。」
「ずっとこの日を待っていました。」
そして、最後に一人の令嬢は・・・
基本隔日更新予定です。
妹なんだから助けて? お断りします
たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
ルヴェを侮辱した義妹は宮廷を追放されました ― 王妃クシェは最高の名誉職です ―
鷹 綾
恋愛
モンフォール公爵家の嫡女アデルは、王宮で王妃クシェという名誉職を務めていた。
王妃の就寝の儀礼で寝間着を差し出す――ただそれだけの役目。
しかしそれは、王妃の私室に入ることを許された宮廷で最も名誉ある地位の一つだった。
かつてアデルは王太子の婚約者だったが、側室の娘である義妹カミーユが甘い言葉で王太子を誘惑。
婚約は奪われ、アデルは宮廷で静かにクシェの役目を続けることになる。
だがある日、義妹は新たに与えられた王妃の朝の儀礼――ルヴェを聞いて嘲笑した。
「王妃の着替え係?そんなのメイドの仕事でしょう」
その一言で宮廷は凍りつく。
ルヴェとクシェは、王や王妃の私室に入ることを許された最高の名誉職。
それを侮辱することは、王妃そのものを侮辱することと同じだった。
結果――
義妹は婚約破棄。
王太子は儀礼軽視を理由に廃太子。
そして義妹は宮廷から追放される。
すべてを失った義妹は、やがて姉の地位を奪おうと画策するが――。
一方、王妃の最側近として静かに宮廷に立つアデル。
クシェという「王妃に最も近い名誉職」が、やがて王国の運命を動かしていく。
これは、宮廷儀礼を知らなかった者が転落し、
その意味を理解していた者が静かに勝つ物語。
こんな婚約者は貴女にあげる
如月圭
恋愛
アルカは十八才のローゼン伯爵家の長女として、この世に生を受ける。婚約者のステファン様は自分には興味がないらしい。妹のアメリアには、興味があるようだ。双子のはずなのにどうしてこんなに差があるのか、誰か教えて欲しい……。
初めての投稿なので温かい目で見てくださると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる