私より妹がお好きですって? どうぞご自由に。

法華

文字の大きさ
5 / 8

5話

しおりを挟む
 王妃の信頼を得たアリアドネは、セドリック卿の推薦という形で王都へ赴き、王宮薬局への出入りを許された。薬師アリアとしての評判は王宮内でも高まっている。

「アリア様のお薬は本当に効果的ですわ」
「どんな些細な不調でも、的確に処方してくださるの」

 王宮内の侍女たちや貴族の夫人たちからの信頼を得るたびに、アリアドネは有益な情報を収集していった。
 フェリクス公爵は、アリアドネの聡明さと強い意志に感銘を受け、陰ながら彼女の活動を支援することを約束した。

「君の知識と判断力は素晴らしい。私にできることがあれば、何でも言ってくれ」

 フェリクス公爵の真摯な態度に、アリアドネは心を動かされた。彼は他の男性とは違い、自分の才能を正当に評価してくれる。

(この方は、レグルス様とは全く違う……)

 ある日、王宮でリディアと鉢合わせした。リディアは薬師アリアの正体に気づいていないようだったが、その美貌と評判に嫉妬の炎を燃やしていた。

「薬師アリア? 最近よく耳にする名前ね。でも、どうせ大したことないのでしょう?」
「リディア様、そんなことはございませんわ。アリア様のお薬は本当に……」
「うるさい! 私はヴァーミリオン侯爵家の夫人になる身よ。そんな怪しげな薬師などより、私の方がずっと価値があるはず!」

 リディアの嫉妬深い性格が露わになっていく。そして、その焦りから、彼女は愚かな行動に出た。
 アリアドネが調合した薬に微量の有害物質を混入させようと画策したのだ。しかし、アリアドネの鋭い観察眼と深い薬草の知識によって、その企みは即座に見破られた。

「これは……誰かが意図的に混入させましたね」

 フェリクス公爵に報告すると、彼の顔は厳しくなった。

「王宮内での薬物への不正な干渉は重罪です。厳重に調査させましょう」

 調査の結果、リディアの指紋がついた小瓶が発見された。彼女の浅はかな計画は完全に露呈し、逆に彼女の悪意と愚かさが周囲に知れ渡ることになった。

「ヴァーミリオン侯爵家の婚約者が、薬物への妨害工作を……」
「なんて恐ろしい女性なのでしょう」

 一方、レグルスはヴァーミリオン侯爵家の財政悪化をリディアの浪費のせいにして責任転嫁しようとしていた。

「リディア、君の買い物が過ぎるのではないか? もう少し控えめに……」
「何ですって!? あなたが『美しい君には何でも似合う』と言ったから買ったのよ!」

 二人の関係に亀裂が生じ始める。エルムウッド伯爵も、リディアの持参金問題でヴァーミリオン侯爵家からさらなる要求を突きつけられ、苦境に立たされていた。

(自滅していくのね……私が何もしなくても、彼らの愚かさが自分たちを滅ぼしていく)

 アリアドネは冷静に状況を観察しながら、次の手を準備していた。決戦の時は、もうすぐそこまで来ている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります

恋愛
 妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。  せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。  普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……  唯一の味方は学友のシーナのみ。  アリーシャは幸せをつかめるのか。 ※小説家になろうにも投稿中

私ではありませんから

三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」 はじめて書いた婚約破棄もの。 カクヨムでも公開しています。

婚約者にざまぁしない話(ざまぁ有り)

しぎ
恋愛
「ガブリエーレ・グラオ!前に出てこい!」 卒業パーティーでの王子の突然の暴挙。 集められる三人の令嬢と婚約破棄。 「えぇ、喜んで婚約破棄いたしますわ。」 「ずっとこの日を待っていました。」 そして、最後に一人の令嬢は・・・ 基本隔日更新予定です。

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

ある朝、結婚式用に仕立ててもらったドレスが裂かれていました。~婚約破棄され家出したために命拾いしました~

四季
恋愛
ある朝、結婚式用に仕立ててもらったドレスが裂かれていました。

ルヴェを侮辱した義妹は宮廷を追放されました ― 王妃クシェは最高の名誉職です ―

鷹 綾
恋愛
モンフォール公爵家の嫡女アデルは、王宮で王妃クシェという名誉職を務めていた。 王妃の就寝の儀礼で寝間着を差し出す――ただそれだけの役目。 しかしそれは、王妃の私室に入ることを許された宮廷で最も名誉ある地位の一つだった。 かつてアデルは王太子の婚約者だったが、側室の娘である義妹カミーユが甘い言葉で王太子を誘惑。 婚約は奪われ、アデルは宮廷で静かにクシェの役目を続けることになる。 だがある日、義妹は新たに与えられた王妃の朝の儀礼――ルヴェを聞いて嘲笑した。 「王妃の着替え係?そんなのメイドの仕事でしょう」 その一言で宮廷は凍りつく。 ルヴェとクシェは、王や王妃の私室に入ることを許された最高の名誉職。 それを侮辱することは、王妃そのものを侮辱することと同じだった。 結果―― 義妹は婚約破棄。 王太子は儀礼軽視を理由に廃太子。 そして義妹は宮廷から追放される。 すべてを失った義妹は、やがて姉の地位を奪おうと画策するが――。 一方、王妃の最側近として静かに宮廷に立つアデル。 クシェという「王妃に最も近い名誉職」が、やがて王国の運命を動かしていく。 これは、宮廷儀礼を知らなかった者が転落し、 その意味を理解していた者が静かに勝つ物語。

こんな婚約者は貴女にあげる

如月圭
恋愛
アルカは十八才のローゼン伯爵家の長女として、この世に生を受ける。婚約者のステファン様は自分には興味がないらしい。妹のアメリアには、興味があるようだ。双子のはずなのにどうしてこんなに差があるのか、誰か教えて欲しい……。 初めての投稿なので温かい目で見てくださると幸いです。

処理中です...