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7話
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王宮主催の夜会。豪華絢爛な大広間には、王国の有力貴族たちが勢揃いしていた。アリアドネは、セドリック卿にエスコートされ、「薬師アリア」としてではなく、エルムウッド伯爵令嬢アリアドネとして、凛とした姿で会場に現れた。
深い紫色のドレスに身を包んだ彼女は、かつての地味な令嬢の面影はどこにもなかった。知性と自信に満ちた美しさが、会場の視線を一身に集める。
「あれは……エルムウッド家の……」
「まさか、病気療養に行ったはずでは……」
ざわめく会場。レグルスとリディアは、アリアドネの登場に狼狽した。エルムウッド伯爵は顔面蒼白になっている。
「あ、姉様……なぜここに……」
リディアの震え声に、アリアドネは冷ややかに微笑んだ。
「なぜって……私はエルムウッド伯爵家の長女ですもの。王宮の夜会に出席するのは当然のことでしょう?」
その時、フェリクス公爵が国王陛下の前で口火を切った。
「陛下、重要な報告がございます。ヴァーミリオン侯爵家とエルムウッド家の間で、不正な財産移動が行われている疑いがあります」
会場が静まり返る。フェリクス公爵は冷静に証拠を提示していく。
「レグルス・ヴァーミリオン侯爵子息による公金の不正使用、違法賭博への関与。そして、エルムウッド伯爵による持参金の不当な操作」
続いて、アリアドネが前に進み出た。
「そして、これらの不正の背後には、さらに卑劣な策略がありました」
アリアドネはリディアの日記の内容を、一部読み上げ始めた。
「『姉を陥れる計画、順調に進行中』『レグルス様は私の涙にとても弱い』『姉の悪口を吹き込んだ』……これは、リディア・エルムウッドの日記からの抜粋です」
会場にどよめきが起こる。リディアは青ざめて立ち尽くしていた。
「さらに、『母の形見の宝飾品、もう少しで私のものになる』という記述もあります。亡き母の遺品を騙し取ろうとしていたのです」
「嘘よ! そんな日記なんて……」
「これが嘘だとおっしゃるのですか?」
アリアドネは日記の現物を掲げた。リディアの筆跡は明らかに本物だった。
「婚約破棄の裏にあった卑劣な策略、共謀による財産の不正移動、そして……」
アリアドネは、エルムウッド伯爵に向き直った。
「父上は、娘の言い分も聞かずに私を追放しました。家族の情よりも、目先の利益を優先したのです」
次々と提示される動かぬ証拠に、レグルスとリディアは互いに罪をなすりつけ合い始めた。
「これは全部リディアが……私は騙されただけで……」
「何ですって!? あなたが私に『アリアドネを追い出したい』と言ったのよ!」
醜態を晒す二人に、会場はざわめいた。エルムウッド伯爵は己の愚かさと娘たちの罪の深さに打ちのめされ、その場で崩れ落ちる。
「私は……私は何ということを……」
国王陛下は激怒し、重々しく宣言した。
「レグルス・ヴァーミリオン、リディア・エルムウッド、エルムウッド伯爵。直ちに身柄を拘束せよ。両家の徹底調査を命じる!」
アリアドネは、崩れ落ちていく者たちを見下ろしながら、静かに言った。
「これが、私を『価値のない女』と見なした代償です」
深い紫色のドレスに身を包んだ彼女は、かつての地味な令嬢の面影はどこにもなかった。知性と自信に満ちた美しさが、会場の視線を一身に集める。
「あれは……エルムウッド家の……」
「まさか、病気療養に行ったはずでは……」
ざわめく会場。レグルスとリディアは、アリアドネの登場に狼狽した。エルムウッド伯爵は顔面蒼白になっている。
「あ、姉様……なぜここに……」
リディアの震え声に、アリアドネは冷ややかに微笑んだ。
「なぜって……私はエルムウッド伯爵家の長女ですもの。王宮の夜会に出席するのは当然のことでしょう?」
その時、フェリクス公爵が国王陛下の前で口火を切った。
「陛下、重要な報告がございます。ヴァーミリオン侯爵家とエルムウッド家の間で、不正な財産移動が行われている疑いがあります」
会場が静まり返る。フェリクス公爵は冷静に証拠を提示していく。
「レグルス・ヴァーミリオン侯爵子息による公金の不正使用、違法賭博への関与。そして、エルムウッド伯爵による持参金の不当な操作」
続いて、アリアドネが前に進み出た。
「そして、これらの不正の背後には、さらに卑劣な策略がありました」
アリアドネはリディアの日記の内容を、一部読み上げ始めた。
「『姉を陥れる計画、順調に進行中』『レグルス様は私の涙にとても弱い』『姉の悪口を吹き込んだ』……これは、リディア・エルムウッドの日記からの抜粋です」
会場にどよめきが起こる。リディアは青ざめて立ち尽くしていた。
「さらに、『母の形見の宝飾品、もう少しで私のものになる』という記述もあります。亡き母の遺品を騙し取ろうとしていたのです」
「嘘よ! そんな日記なんて……」
「これが嘘だとおっしゃるのですか?」
アリアドネは日記の現物を掲げた。リディアの筆跡は明らかに本物だった。
「婚約破棄の裏にあった卑劣な策略、共謀による財産の不正移動、そして……」
アリアドネは、エルムウッド伯爵に向き直った。
「父上は、娘の言い分も聞かずに私を追放しました。家族の情よりも、目先の利益を優先したのです」
次々と提示される動かぬ証拠に、レグルスとリディアは互いに罪をなすりつけ合い始めた。
「これは全部リディアが……私は騙されただけで……」
「何ですって!? あなたが私に『アリアドネを追い出したい』と言ったのよ!」
醜態を晒す二人に、会場はざわめいた。エルムウッド伯爵は己の愚かさと娘たちの罪の深さに打ちのめされ、その場で崩れ落ちる。
「私は……私は何ということを……」
国王陛下は激怒し、重々しく宣言した。
「レグルス・ヴァーミリオン、リディア・エルムウッド、エルムウッド伯爵。直ちに身柄を拘束せよ。両家の徹底調査を命じる!」
アリアドネは、崩れ落ちていく者たちを見下ろしながら、静かに言った。
「これが、私を『価値のない女』と見なした代償です」
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