上 下
177 / 424
第6章 さぁ、ファッションショータイムだ!

サキュバスの過去 その16 ~決意~

しおりを挟む
「いっそ、旅にでも出ようかな?」
「はぁ? アンタにそれができるんかいな!」

 オカンはウチの考えに驚愕の声を上げる……まぁそう言うやろうな。

「ただでさえ男見たら放心状態になるのに、旅に出たらそれこそあかんやろ!」
「……」

 確かにそれは事実やけど……なんか、言われると、いくらオカンでも腹立ってくるわ。
 ……よし、決めた。

「ウチ……恐怖症を克服するためにも、旅に出る!」
「はぁ!? アンタほんまに言うとるんかいな!?」
「ウチはもう決めた! 旅に出る!! こんなところにとどまっても腐っていくだけや!!」
「アンタ、ウチの言うたこと聞いとらんのか? アンタは男が……」

 オカンはウチを止めようと腕を掴む……どうしても旅に出て欲しくないようやった。
 ウチとオカンが攻防戦を繰り広げる中、間に第三者が入り込んだ……オトンや。

「ただいまー……って、お前ら何しとんねん!」

 帰宅して開口一番、オトンはウチらにツッコミを入れてきた。

「オトン! 聞いてくれや! ウチ、旅に出たいんや!」
「た、旅ぃ!?」

 「旅」という言葉を聞いた瞬間、オトンは驚愕の声を上げた。

「アンタ! ラピスを止めてくれや! この子に旅なんてアホみたいなことできるわけないやんか! きっと男に弄ばれて終わりやで!」
「そ、そんな言い方はないやろ! オカン!」
「ウチはラピスを心配してるんやで!」

 オトンを置き去りにし、ウチとオカンは言い争いを始めた。
 なんやねん、オカンはウチをアホやと言いよって……ウチはどうしても腹が立った。
 するとオトンは……。

「あっはっはっは!!」

 ……大爆笑した。

「オトン! 笑いごととちゃうわ!」
「いやぁすまんすまん、いやまぁ……流石は俺の娘や! 突拍子の無い事思いつくなぁ」

 オトンは涙を流して笑っている。
 そないおかしなことかいな?

「アンタ! 笑いごととちゃうわ! はようラピスを……」
「なんや? 止める必要ないやんか?」

 ……え? 今、オトン、なんて言ったんや?

「ええやん! 旅! 流石にここにずーっとおっても何もおきんし、変わらない、なら外に出てパーッと色んなこと経験した方がええと俺は思うで」
「……オトン」

 オトンは、ウチの考えに共感してくれた。

「アンタ! 本気かいな!?」
「俺は本気やで、ラピスならきっと大丈夫やて、それともなんや? ラピスの事信用してへんのか?」
「あんなぁ、ウチもラピスの事は信じとる、せやけど……」
「ならええやんか、ラピスはそんな弱い女とちゃうねん、お前みたいに強い女や、そない簡単に男に弄ばれる奴とちゃうわ」
「……」

 オトンの説得に、オカンは……顔を赤くして、黙り込んだ。
 ウチは、オカンに向かって、再度説得をした。

「なぁオカン、ウチ、弱い自分に打ち勝ちたいんや……せやから、旅に出させてほしいんや……ええやろ?」

 ウチはオカンの手を掴み、説得を試みる……するとオカンは、まっすぐウチを見て、手を握り返した。

「……わかった、認めたる」
「ほ、ほんまか!?」
「せやけど……次帰ってきた時……弱いままやったら、勘当するから、そのつもりでな」
「か、勘当……」

 そりゃ壮大すぎやろ……。

「おいおい、勘当ってそりゃないやろ」
「この子はそないせぇへんと強くならへん、稽古の時もそうやって成長したんや」
「せ、せやけど……」

 ……なるほど、これは、オカンの……最後の稽古、というわけやな。

「……わかった、ウチ、強くなって戻ってくる」
「……約束やで」
「……うん!」

 ……恋に失敗し、己の弱さを知ったウチは、今この場で、旅に出ることを決めた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

魔物のお嫁さん

BL / 完結 24h.ポイント:875pt お気に入り:752

悪役令息になんかなりません!僕は兄様と幸せになります!

BL / 連載中 24h.ポイント:4,494pt お気に入り:10,286

この結婚、ケリつけさせて頂きます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,149pt お気に入り:2,909

ほっといて下さい 従魔とチートライフ楽しみたい!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,109pt お気に入り:22,202

浮気の認識の違いが結婚式当日に判明しました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,426pt お気に入り:1,219

サラリーマン符術士~試験課の慌ただしい日々~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:12

処理中です...