ヤンデレ不死鳥の恩返し

リナ

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十話

迷子の両親を探せ

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「は~こっちもすごい人だね~」
「神社内にはパトロール拠点や迷子センターも置かれてるからな」
「ふふ、中央広場で盆踊りが始まっちゃったらもうカオスよ、カオス~」
「ひえ~」
「その前に抜け出さねえと…」

 参拝を終えた俺達は人混みを搔き分けながらなんとかして鳥居の下に戻った。ここで解散かと思えば、

「うえ~ん、パパ~ママ~」

 少し離れた位置で五歳ぐらいの子供(男の子)が泣いていた。迷子センターで引きとられたのだろうが、両親が一向に現れず不安になったのだろう。俺が同情するように見ているとふと子供と視線がぶつかった。

「うわあ~ん!!」
「え、おい、ちょっ…」

 足に抱きつかれたと思えば、その状態で大泣きされる。俺が怖いのなら離れればいいのに、子供は大粒の涙を流しつつも何故か俺から離れようとしない。

「お、おい…」
「あ~ライが子供泣かしてる~~」
「くくってめえが睨みつけっからビビったんじゃねえの?」
「ち、ちが!そんな事してねえよ!」

「はいはいデカいのが大きい声出すとますます怖がっちゃうから静かにしてなサーイ」

 騒がしい俺達を窘めながらグレイが膝をついた。子供と目線を合わせ、ゆっくりと話しかけていく。こういう時女性らしい姿をしてると警戒心が薄まっていいなと思った。

「うんうんなるほどネ~話してくれてありがと~」

 子供と対話を終えたグレイが立ち上がり、俺達に向き直る。

「どうやらこの子のお父さんとライの浴衣が同じ柄で勘違いしちゃったみたい」
「ええ…!」

 俺はおろおろしながら足元の子供を見た。子供は俺の顔を見てまた泣きそうになってるが、その小さな手はしっかりと浴衣の裾を掴んでおり、少し引っ張った程度では離れてくれそうにない。

「このままじゃライが戻れないし、ご両親を探してあげましょ。神社内ではぐれちゃったみたいだからきっとまだ近くにいるはずヨ。…パパとママを探してくるからちょっと待っててくれるカシラ?」

 最後の問いかけは子供に向けて言っていた。子供は涙目のまま「うん」と頷き、迷子センターの方へ歩いていく。何度も振り返りながらうるうると見つめてくるものだから胸が痛い。
 (早く見つけてやらねえと…)

「神社内はセンターの人が探してくれてると思うから、あたし達は外側の森部分を見ていくワヨ。時間もない事だし、時計回りと反時計回りで二手に分かれまショ。グーとパーを出して」

 グレイの合図でそれぞれ手を出す。何回目かでやっと2と3で分かれた。その組み合わせはまさかの「グレイと俺」と「他三人」。すぐに三人側から不満の声が上がる。

「ええ~~~俺、ライとがよかったぁ~~」
「それはオレの台詞だっつの!!てめえらクッソめんどい二人と組まされるとか地獄じゃねえか!!おいグレイ変われえッ!!」
「もう決まったんだから文句言いっこなしヨ~時間ないんだからさっさと行く~」
「店長さん~~」
「グレイ~~」

 二人に縋りつかれてグレイは鬱陶しそうにしてる。あまりに食い下がってくるものだからグレイはため息交じりに言うのだった。

「あたしより強くて頼れるって自信を持って言えるのなら、ライとの二人枠を譲ってあげてもいいケド?」
「「…」」
「異論あるカシラ?」
「「いえ、ありません」」

 グレイのチートさは重々承知しているようで大人しく頷く二人。そのまま二人は渋々と言った感じで森へと入っていく。それをフィンが追いかける形で進み、ふと足を止めて、振り向いた。

「ライ、グレイ…念のため情報共有しておくが、昨日、宴会会場で一人消えてる。パトロール班で情報が回っていた」
「マジか…神隠しか?」
「わからない。だが、昨日あった事が今日ないとは考えにくい」
「…迷子の両親も神隠しかもしれねえ、か…」

 鳴海の話では、俺達が居合わせた悲鳴を最後に神隠しは起きてないとの事だったが…また始まったのだろうか。

 “あそこには寂しがりの神様がいるって知ってる?”

 “生贄が足りなくなると自分で神隠しを起こして人間を攫っちゃう困った神様がいるらしい”

 屋台で声をかけてきたお面の男の台詞を思い出し、顔をしかめた。

「グレイとならよほどの事がない限り大丈夫だと思うが…そちらも、くれぐれも気をつけてくれ」

 そう言ってフィンも森の中に入っていく。俺達もすぐに逆側の森に入った。提灯の灯りがあっても森の中は薄暗く、腰の高さまである草むらのせいで見晴らしも悪い。
 (ここで昨日も人が消えてるのか…)
 お面の男は“不思議な鈴の音に警戒しろ”と言っていたが、神社内は常に鈴の音が鳴り響いてるし、どの音が“不思議な鈴の音”なのか俺にはさっぱりだった。周囲を見回しながら必死に警戒していると

「大丈夫ヨ」
「…!」
「今のところ変な気配はしないし、不審者がいても眠らせちゃうから、ライはご両親を探す事に専念してて」

 グレイが安心させるように言った。いつものように煙草を咥えながらゆったりと歩く姿は落ち着いたもので…俺は強張る体を解すようにふうと息を吐く。

「あんたが横にいるとすげえ安心感あるな」
「ふふ、おしとやかなレディでいたいのだけど、三人にタンカ切っちゃってるしちょっとは格好良くしないとネ」
「はは」
「それにしても…うまくいかないものネ。せっかくあんた達をデートさせてあげようと思ったのに、なんでこんな事になっちゃったのカシラ」
「え?」
「ほら、お祭りデート、誘えてなさそうだったからお節介焼こうとしたノ。でも結局皆でわちゃわちゃしちゃったし、最後はこの通りつじつま合わせに巻き込んじゃって…不甲斐ないワ」
「いや…こっちこそ、…気遣ってくれて、ありがとな」

 なんとなくそうかとは思っていたが、グレイが俺達の事を思って連れ出してくれたのだとわかると純粋に嬉しかった。

「グレイには色々迷惑かけてばっかだな…」
「ふふ、そんな事ないワヨ。ちゃっかり自分の欲求も叶えてるカラ」
「欲求?」

 歩きながら横を見ると、グレイが前髪の隙間からこちらを見ていた。その懐かしむような視線に俺はすぐに察した。

「俺の浴衣姿…初恋の人に、似てるか?」
「…ええ、すごく」

 グレイは少し寂し気に笑った。見てるこっちまで切なくなってくる笑い方だった。
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