ヤンデレ不死鳥の恩返し

リナ

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七話

★裸の付き合い

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 ***


「なんでこうなるんだよ…」

 一人頭を抱えてると横にいたグレイがふふっと笑った。すでにバスタオルを体に巻き準備万端である。そう、俺達は今旅館内にある大浴場に来ていた。すでに時間は深夜二時を過ぎていたが、針達を捕まえた謝礼としてそれ以降の時間も貸し切りで使っていいと吾郎に貸し出されたのだ。ドロドロに汚れた俺達にとっては願ってもない申し出だったが四人で入るとなると話が変わってくる。

「あの二人はわかるけど俺は一緒に入る意味ねえだろ??」

 フィンとソルはすでに中に放り込まれている。あとは俺だけなのだが、部屋にも温泉はついてるのだ。俺だけあっちでいいだろ。そう目で訴えれば腰に手を当てて仁王立ちしていたグレイが首を振った。

「ダメよ!ライだけ一人なんて寂しいじゃないノ!」
「いや全然寂しくねえから!!」

 むしろ身の危険しかないんで、帰らせてください。

「大丈夫大丈夫、ちゃんとあたしが守ってあげるカラ。だから一緒に裸の付き合いしまショ?ネ~?」
「嫌だっ!うぐっ!この馬鹿力~~!!」

 グレイに羽交い絞めにされて連れていかれる。腕力最強のグレイに捕まれたら逃げ場なんてない。裸にむかれて大浴場の中に連れていかれる。

 ガララッ

「!」

 中は広々とした作りで天井も高かった。中に温泉が三つ、サウナもある。しかも外には豪華な露天風呂もあり四季の風景を楽しめる作りになっていた。これだけで客がとれそうなぐらい綺麗で立派な大浴場である。
 (にしても、静かだな…)
 てっきり二人きりにさせられて喧嘩してるかと思ったが、フィンは外のリクライニングチェアで黄昏てるし、ソルは洗い場で座ったまま唸っていた。やけに静かで逆に怖くなる。

「あら!大変!化粧水忘れちゃった!!」
「化粧水?別によくね?なんかいっぱい持ってるじゃん」
「ダメよ!!全部そろってないと意味ないノ!乾燥は美容の大敵!!ちょっと取ってくるからライは先に入ってて!」
「え、あ、…」

 あっという間にグレイは姿を消した。置いてかれた俺は今更逃げるわけにもいかず重い足取りのまま洗い場に移動した。一番端にソルがいる。ずっと手元を見ていて何か困っているっぽい。
 (ったく…)

「ソル、大丈夫か」

 声をかけるとソルはチラリとこちらを向いてからまた手元に視線を落とした。

「んあ?ライか…シャンプーがどっちかわかんなくてよ」
「ふーん、あんた目悪かったのか」

 シャンプーを手渡してやれば、ソルはさんきゅーと言って迷うことなくそれを頭につけた。わしゃわしゃと洗っていく。

「クッソ悪いぜ。コンタクトつけてギリギリ人間の視力になる。チッ、せっかくのライの裸が見えねえじゃねえか。洗ったらつけ直すか」
「見えなくていいだろ。目潰すぞ」
「おお怖い怖い。で、お守り②はどこ行った?」
「お守り②…グレイの事か?忘れ物取りに行ったけど」
「はっ!ご立派なお守りじゃねえの。オレと二人きりにさせて大事な従業員が嚙まれてもしらねえぜ~?」 

 笑いながらブルブルと頭を振って水を吹き飛ばす。まるで犬だななんて考えながら正面に視線を戻すと、自分の酷い姿が目に入る。噛み痕に青痣にキスマに…目のやり場に困るなんてもんじゃない。普通に事件を疑われる。
 (ん…?)
 数ある傷の中で、水竜様に噛まれた部分だけ綺麗に治っていた。あんなに出血していたのに…生気を入れた時に治してくれたのだろうか。自分の腕を眺めてると何やら視線を感じた。

「…なんだよ(見えてねえんだろうけど)」
「くくっ、色々思い出してた」
「思い出すって…そうだ!さっきの事、俺は許してねえからな」

 さっき、つまり針にレイプされかけた時(カメラを投げてきた事)なのだが。問題はそのタイミングだ。

「なんでもっと早く乱入しねえんだよ!無駄に苦しんだじゃねえか!」
「んな怒んなよ。オレはリアル喧嘩は専門外なんだ。お守り①と②みてえに華麗に助けに入るなんて芸当期待されても困るぜ」
「それはわかるけど…。てか、いつから見てたんだよ?どこまで知ってるんだ?」
「ん?そんなの最初からに決まってんだろ。なんせ、森で別れてからずーっとライのストーカーしてたからなあ」
「あっ…悪趣味だぞ…」
「本番前には止めてやったからいいじゃねえか。無理矢理系っつーの?普段から見てっからさあ~。ツボだったというか、今日は捗りそ――イデェッッ!」

 脛を思いっきり蹴った。過去一痛がってる姿に少し溜飲を下げながら睨み付けた。

「何が本番前だ。ダチをズリネタに使うんじゃねえ、不愉快だ」
「くうー…マジ怒りじゃん…ゴメンって…」

 ごめんと謝った後上目遣いで見てくる。尻尾があればしゅんって床に落ちていただろう。俺が怒りを収めず無言を貫いていると、ソルは俯いて…それから小さく呟いた。

「ライ…」
「…」
「ライ、なあ…、オレさぁ…地下に、組み立てたんだ…」
「……何を?」
「パソコン。てめえ用の」
「俺の…あ、もしかして今週届いた重い荷物って」

 冒頭の、置き配で届いたクソ重い荷物の事を思い出す(フィンが運び込もうとして喧嘩になりかけたやつ)。

「あれ俺のだったのか。いや、早く言えよ。わかってたら運ぶの手伝ったのに」
「秘密にして、驚かそうと…思ったんだよ…」
「?」
「ライと…一緒に…ゲームしたかったから、よぉ…」

 同居後ソルに無視されるようになって忘れていたがそんな約束をしたんだった。無視している間も俺との約束を守るために内緒で組み立ててくれたとはいじらしい所もあるものだ。

「ライは…、初めて、一緒にゲームしてえと思った…リア友だからさ…」

 俺と一緒に遊びたい。ゲームしたい。それだけの欲を映す瞳を見てると、怒りの気持ちがどんどん鎮められていくのがわかる。
 (ほんと、コイツは…)
 歪んだ良心も、友情を越えた劣情も、それがどんな形であれ「可愛い奴だ」と思えてしまう俺も同罪なのだろう。友情に性欲を持ち込まないのなら普通に良い奴なのに。…いや、良い奴ではないな。クズなりに良い奴と訂正しよう。深い深いため息の後、ソルの方を見た。

「ったく、そんな貴重なリア友をいたぶって楽しむんじゃねえよ。友情にクズを持ち込んだらただのクズ野郎だぞ。パソコンについては感謝するけど、それとこれは別だからな、わかったか」
「わりわり。ほんと、ちゃんと反省すっからさ!次はイラマの前に止める!…いや、イラマは見たいよなあ…うーん、やっぱ止めるのはイラマの後でい――ぐふッ!!」
「全然反省してねえだろ、殴るぞ」
「殴ってから言うんじゃねえよっ!暴力ゴリラが!!」
「そっちがふざけたこと言ってるからだろ」

「アラ、なんだか楽しそうネエ」

 グレイが笑いながらソルとは反対側に腰かけてきた。

「二人は仲良しに戻れたみたいでよかったワ~」
「片方が血流す程殴られてるのが仲良しと言えるかわかんねえけど。で、忘れ物はあったのか?」
「ええ、バッチリヨ~ついでにスポンジも持ってきちゃったワ。ライも使う?」
「いや俺はもう洗ったからいい」
「そう~」

 グレイはバスタオルを脱いで、すらりと長い手足と引き締まった体を露にする。いつもワンピースや体のラインが柔らかくなる服を身に付けてるから気付かなかったが、こうしてみるとなかなか良い体である。
 (…ついてるな)
 今更だがちゃんとグレイにも男の象徴がついていた。しかも結構立派なものが。妙な感動を覚えた。あまり見るのも失礼だし髪を手早く洗ってリンスを塗りつけた。さっさと流して立ち上がろうとすると手首を掴まれる。

「ライ、まだ後ろ流れてないワヨ?」
「え、マジ?」
「ジッとしてて、流してあげる」

 シャワーをうなじの少し上にあてられる。手櫛で髪をすきながらぬるつきを流されていく。

 つー…

 その合間に指先が首に触れてゾクりとしたが、相手がグレイなのでそこまで警戒せず任せていると横で頬杖をついていたソルが口を尖らせる。

「んだよ…借りてきた猫みたいじゃねえの」
「え?」
「ふふ、日頃の行いの違いヨ。あんたも少しは改めたラ~?」
「っけ!」

 ソルは面白くないという顔で温泉の方…ではなく脱衣所に向かった。本当にコンタクトをつけ直す気なのかアイツ。苦笑いでその背中を見送っていると「はーい終わり」と髪を撫でつけられる。振り返ってみるとグレイがにこりと微笑んできた。

「ライって濡れてるとちょっと幼く見えるワネ」
「そうか?」

 俺の濡れた前髪をかき分けながら笑いかけてくる。なんとなくグレイがいつもと違う雰囲気で、その違和感は何なのか探ろうとしたら

「ライ」

 フィンが真顔でこちらを見ていた。外から戻ってきたらしい。まだちょっと顔色が悪いし、ピリピリしているように見えた。

「ライ、洗い終わったのなら一緒に温泉に入ろう」
「…ああ、行くか」

 立ち上がってフィンの横に並ぶ。三つある内のどれに入ろうかと逡巡する。

 ぺたぺた

 すると迷ってる俺達の横をソルが横切っていく。一番大きくて広い温泉に入るようだ。一瞬銀色の瞳とぶつかって「こっち来い」と挑発するように細められた。どうやら視力が回復したらしいが、わざわざ噛まれに行くほど俺も馬鹿じゃない。馬鹿じゃないのだが。

「…はあ」
「ライ?」
「せっかくだし、皆で入るか」

 毒を食らわば皿まで。ビビッて逃げるのも情けないし、ここまで来たら徹底的に“裸の付き合い”をさせてやろうじゃないか。俺の覚悟と台詞に戸惑っていたフィンだったがしばらくして口を開いた。

「…ライが言うなら」

 渋々といった感じでソルと同じ温泉に入った。俺が四つ角の部分に腰かけてその左右にソルとフィンが腰かけてる感じである。どちらも腕を伸ばせば肩を掴めるほどの距離だ。

 サアアア…

 三人とも黙っているのでグレイのシャワーの音だけがやけに響く。俺は外の風景をぼんやり眺めていたが左右はそうとはいかない。睨みあってるのが見なくてもわかった。殺気なのか何なのかはわからないが肌が痛いの何の。
 (マジで真っ赤の温泉に浸かる事になるかもな…)
 なんて他人事のように思ってると、フィンがおもむろに口を開いた。

「ライ、先程の話の続きだが…私が気絶してる間に何が起きていたのだ?」
「…ああ、そういや…まだだったな」

 ソルとグレイもいる場で話すのは気まずかったが、夕方にやられた尋問の事もあって
 (あれを繰り返す方が嫌だわ…)
 なるべく早く懺悔しておこうと手短く端的に伝えた。どうせソルには全てを見られているのだし陸郎と吾郎がいないだけさっきよりはマシだ。

「…私が…気絶した後…そんな事に…」

 最後まで聞き終えたフィンは顔を青ざめて

 ブククク…

 温泉に顔を突っ込んで動かなくなった。

「うわっ!ちょっフィン!!?死ぬ!死ぬって!」

 溺死しようとするフィンを慌てて救出する。ソルが腹を抱えて笑っていたので脛を蹴りつけた。

「何やってんだよ。あんた水嫌いなのに溺死なんて地獄だろ」
「ゲホッ、ら、ライ…ゲホッ、私の不注意で、そんな事に……申し訳、ない…今すぐ死んで、詫びらせてくれ…」
「馬鹿言うな、庇った意味なくなるだろが」
「ああ、本当に…ライが身を挺して庇う価値なんてないんだ…こんな役立たずの私なんて……」
「あのなあ…」

「ふふ、あんたはこんな少ない水じゃ死ねないデショー?」

 頭上からからかうような声が降ってくる。グレイはすらりと長い手足を滑らせながら、俺達の向かい側に腰かけた。ちゃぷちゃぷと肩にお湯をかけながら再度口を開く。

「これでわかったカシラ?誰だって失敗するし弱点もある。それは人間・幻獣関係なく皆に言えることヨ」
「弱点…」
「そ。フィン、あんたは強くて賢いワ。でもね今回みたいに弱点に囲まれる事はあるノ。あんたにとっての弱点は水…そして竜。だから、この滝ツアーはあんたを追い込むのにはおあつらえ向きだったってワケ」
「まさかフィンを追い込む事まで計画に入れていたのか??」
「ええ、大方あたしの計画通りヨ。…ともあれ迷惑ボーイズは想定外。完全にあたしのミスね。巻き込んじゃったライには本当に申し訳ないと思ってるワ」
「いや俺は…結果的に無事だったしいいよ。それよりなんでフィンが竜と相性が悪いんだ?」

 水は言わずもがなとして、竜の祠で会った水竜様はやけにフィンの事を嫌っていた。湖に沈めて苦しめたとも言っていたし俺の主観だけの話ではないはず。

「不死鳥は幻獣の中でもかなり古代種に近いのヨ。空を飛び、炎を自在に操り、不死の命を持つ。その在り方は…現代の竜と言ってもいいぐらい古い形を維持してる」
「現代の竜…」
「そう。だからまるで竜同士のように縄張り意識が強く働くノ。排除すべき憎き存在として感知され、あたしやソルみたいに羽虫のように無視される事はない。飛んでる時に突然気絶したのも竜の祠の上でも通って水竜様の気にあてられたんでショーネ」
「そういう事だったのか…」

 フィンにとっては恐怖を抱く対象なのに竜側は同族を相手するように感知して問答無用で敵意を向けてくると。何か因縁があるわけでもないのに殺されそうになるなんて災難すぎる。

「脱線しちゃったわネ。とにかく、フィン、あんたは今回水竜様の妨害と水に覆われた環境によってポンコツになった。でも…そんな事情は迷惑ボーイズや現実に起きる事象は配慮してくれないワ。あんたが寝ている間、ライがうまくやらなければ、ソルが乱入しなかったら…最悪な事になっていたのヨ。それでもあんたはまだ一人でいいと言い張るノ?」

 鋭すぎる正論にフィンは黙り込んだ。しばらくして顔を上げる。ソルの方をみて、軽く頭を下げた。

「…狼男、ライを守ってくれた事…感謝する。森の時も言い過ぎた」
「けっ!別にてめえの為にやった訳じゃねえし。ケダモノのオレに頭を下げるなんて屈辱だろ?さっさと顔上げろよ、役立たずの化物野郎が」

 散々言われていたソルは一度頭を下げられた程度では許す気にならないらしい。ほとんどの場合ソルの自業自得ではあるのだが(フィンが怒る時は)たまに全く悪くないのに責められていた時もあった。そういう面ではソルはずっとフィンを恨んでいたのだろう。

「ソル」

 グレイが諭すような目つきでソルを呼ぶ。

「森で姿を消した後、あんたは結局戻ってきた。あたし達の元に戻ってきたのは、一緒にいたかったからじゃないノ?」
「……」
「それならある程度の歩み寄りは必要ヨ。歩み寄りに必要な知識は今回与えてあげたデショ。ここから先はあんたにしかできない事ヨ」

 諭すように見つめれば、今度はソルが押し黙った。シーンと沈黙に包まれる。その静けさをくすくすとグレイの笑い声が破った。

「ふふ、とりあえず今日の所はお互いゴメンナサイってして終わりにしまショ?今までの事全てに対して謝るつもりで、せーの?」

 グレイに促され、フィンとソルが見合う。それから呟いた。

「…申し訳なかった」
「…わりい」
「うんうん、よろしい!これで仲直りネ!ついでに化物とケダモノは禁止ワードにしまショ。言ったら一週間ライに触れないって事で♪」
「「!!」」

 ガーンと今日一のショックを受ける二人。そのあまりにも悲しげな顔に吹き出しそうになった。

「グレイ!百歩譲って禁止ワードは受け入れるが…、その言い方では…このケダ…駄犬がいい子にしていたら触れてもいいという事になるぞ??ライは私の恋人だ!誰にも触らせるつもりはない!」

 フィンが切羽詰まった様子で訴える。グレイは肩をすくめながら言った。

「二人は友人なんだし接触禁止ってのもおかしい話デショ?」
「し、しかし…!」
「あんたが心配するのはわかるけどライは何もできない赤ちゃんじゃないノ。狼化して襲ったならまだしも人間状態でのいざこざは本人に任せなさい。さっきも自分でちゃんとやり返してたワヨ?」

 この通り、とソルの殴られた頬と足を指さした。口を切って血が出てるし足も痣になってる。俺が手加減無しで殴ったのは一目瞭然だ。フィンもそれはわかっていた。わかった上で受け入れられないのだろう。

「しかし…私は…」
「はいはい、あんたがライの事だ~いすきなのはわかってるワ!だからあたし、良いこと考えたノ!」
「「良いこと?」」

 ギクリと体が揺れる。嫌な予感だ。今日で一番やばい予感がしたが正面にいるグレイと目が合い金縛りのように動けなくなる。

「ルールを作れば良いのよ。○○したらダメとか。ここまでなら良いって。それを守らなかったらフィンの手で制裁を下せばいいし、逆にその範囲ならライに任せるノ。ソルだけじゃなく全ての人間に使えるルールを作っておけば、これから色んな人が現れても無駄な衝突を避けられるデショ?」
「ふむ、ルールか…」
「ピンと来てないカシラ。そうねえ、例えばー…」

 グレイが体を起こしたと思えば、流れるような仕草で俺の顎を掴んで上を向かせる。

 ちゅ

 唇に柔らかい感触。しっとりと保湿された唇はもっと触れていたいと思えるほど心地よかった。吐息と共に唇が離れていく。

「…バードキスは良し、ディープはダメ、とか…ネ?」

 そう言って舌で唇をなぞるように舐められた。ハッと我に返る。フィンとソルも度肝を抜かれていたが一拍遅れて絶叫した。

「グレイっ?!!」
「てめええ!??」

「あは、今のは挨拶ジャナイ。そんなにマジにならないノ」

 何が挨拶だ。ひっくり返りそうなほど高められた俺の心臓を返してくれ。どぎまぎしつつグレイを見れば悪戯っぽくウィンクされた。濡れた前髪は後ろに撫でつけられいつも隠されてる両目がよく見えるようになっている。さっきからずっと雰囲気が違うと思えば目のせいか。

「グレイ!キスはダメだ…!全部禁止だ!」

 俺の体に腕を回してフィンが全力で拒否する。そのあまりにもな取り乱しっぷりに少し笑ってしまった。

「あら、キス全般NG?キスが挨拶に含まれる相手が現れたらどうするノ?ライがすごく無作法な奴になっちゃうワヨ?」
「し、しかし……唇は…っ」
「じゃあ唇以外ならOKって事にしまショ」
「なにっ?!」
「なーるほどなぁ、じゃあこれはどうだ?」

 手をついて前屈みになったソルが首に腕を回してきた。ぐいっと力を強めて引き寄せられたと思えばぴちゃりと耳元で音がする。

 ぺろっちゅるっ

「ひっ!」

 耳に吸いつかれ舌を入れられた。突然の刺激に肌が粟立つ。反対側にいたフィンの体温が一度ぐらい上がった気がする。驚くぐらい低い声でフィンが「お前殺されたいのか」と言った。

「けっ、ルール内だろが。唇だけ避けて舐めりゃいいんだろ」
「んンっ、ちょ、奥っ、舐めるな!くすぐったいっ」

 ソルの顎を掴んで引き剥がす。やばい。色々な面でここにいるのは危険だ。慌てて腰を上がればフィンとソル両方から腕が伸びてきて引き戻された。少しだけ距離を縮めた二人の間に座らされればまな板の鯉もいい所で。

「なんっ…はなせ!ヘンタイ共!」
「まあまあまあ、もうちょっとルール作りに付き合えよ、なあ?」
「ライ、こうなればとことんわからせてやろう。奴が私達を出し抜こうなんて思わなくなるように徹底的にな」
「いやいや!俺がここにいなくても決められるだろ!てか俺本人に拒否権はねえのか?!」
「「ない」」

 コイツら、こういう時だけ仲良く声揃えやがって、ぶん殴ってやろうか。
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